テレマガ版グレンダイザーからダイナミックプロ名義に隠れた岡崎優の功績を語る–『UFOロボグレンダイザー 完全版』

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『UFOロボグレンダイザー 完全版』(永井豪とダイナミックプロ)

先日、海外のゲーム情報ポータルサイトを覗いていたら衝撃的なニュースが目に飛び込んできた。フランスのゲームパブリッシャーであるMicroids(ミクロイド)が『UFOロボ グレンダイザー』をテーマにしたゲームを開発中だというのである。発売日は2023年を予定しプラットフォームはPlayStation®5、PlayStation®4、Xbox Series X|S、Xbox One、Nintendo Switch、PC……つまるところ、現役の最新プラットフォーム全て、ということである。海外での『UFOロボ グレンダイザー』人気については知ってはいたが、ここまでなのかと改めて感心した。

目次

世界的な人気を獲得しているグレンダイザーとは何なのか?

『UFOロボ グレンダイザー』とは、今更語るまでもない漫画家・永井豪の『マジンガーZ』『グレートマジンガー』に続くマジンガーシリーズ3作目。マジンガーシリーズは、人間がロボットに乗り込んで悪と戦うという「ロボットもの」というジャンルを生み出した歴史的なシリーズである。グレンダイザーでは前作、前々作と同様の世界を継承しながらも、前作までの主人公たちをあえて脇役に添え、それまでのシリーズからは独立した内容となっている。

過去シリーズ同様フジテレビと東映動画社(現・東映アニメーション)主導の企画であり、コミカライズとTVアニメ放送が並行して行われた。この時期の永井豪は、超多忙。本作のコミカライズも「テレビマガジン」「たのしい幼稚園」「おともだち」「ディズニーランド」(全て講談社)、『テレビランド』(徳間書店)、『冒険王』(秋田書店)と6誌で展開している。

もちろん、永井豪一人でこの連載を全て対応することができなかったので、永井豪がアシスタントを社員として雇い、対等な作家として仕事を与えながら作品を発表するチャンスも与える組織「永井豪とダイナミックプロ」名義で各誌に作品は発表された。作画担当者が異なっているので、掲載誌ごとに少しずつ独自色が出ているのが特徴だ。

マジンガーZが登場してからすでに3年経っており、マジンガーシリーズは少し陰りが見え始めていた。そのため『UFOロボ グレンダイザー』の人気はそれまでのマジンガーシリーズ2作に比較すると、少し落ちていたというのが一般的な評価として定着している。

それでも今の基準で見ると十分な視聴率なのだが、人気の下落は本来マジンガーシリーズの3作目として企画されていた『ゴッドマジンガー』が頓挫していることからも窺い知れる。永井豪は、同時期に全く別企画として進んでいた劇場用アニメ『宇宙円盤大戦争』の企画をベースにマジンガーシリーズとして再構築し本作を練り上げた。前作、前々作の主人公たちの扱いが薄くなり、本作だけ見ても話が通じるのはある意味、当然だったというわけだ。

この企画頓挫を永井豪が逆手に取ったことが、本作が世界的な人気を獲得できた理由の一つと考えられる。従来の主人公像を捨て去ることができたため、“熱血漢”や“寡黙な戦争のプロ”といった戦う男ではない、“滅ぼされた星の美形の王子”が誕生した。敵も地球征服を狙う秘密結社から、“宇宙征服をもくろむ侵略者”にスケールアップし、より絶望的な戦いであることの強調に成功したのである。

主人公は、故郷を失った悲しみに耐えつつ地球へ亡命したデューク・フリード。再び目の前に現れた故郷を滅ぼした悪の宇宙人たちに復讐を誓いつつ、第2の故郷・地球を守るというロマンチックな展開に世界中の子どもたちが熱狂した。実は、宇宙からの侵略者と戦うロボットものというのは本作の企画が日本初。以後、『超電磁ロボ コン・バトラーV』から『超時空要塞マクロス』までひとつのジャンルとして確立した。このフォーマットを採用したロボット作品は、いずれも世界的なヒット作となっているのが興味深い。

今回紹介したいのは、そんな『UFOロボグレンダイザー』のコミカライズ版から、『テレビマガジン』で連載されていたヴァージョン。特に1976年の6月号から1977年3月号にかけてメイン作画を担当していた岡崎優先生である!

それまでダイナミックプロ作品にない世界観にこそ異色作家の筆が合致

前述の通り、永井豪先生はこの時期多忙であった。本作のコミカライズの途中で今度はTVアニメ『鋼鉄ジーグ』の企画とコミカライズを手掛けており、とてもグレンダイザーの漫画連載まで手が回らなくなっていたのである。そこで、テレビマガジン版の連載をダイナミックプロの岡崎優にバトンタッチした。岡崎優は、ダイナミックプロからの独立後、その経歴を生かしサンライズ制作のアニメのコミカライズや芸能人(特にアイドル)の伝記マンガで活躍した漫画家だ。90年代はレディコミで執筆していたこともある。

つまり、“ごん太で、迫力のある絵柄”が求められるダイナミックプロ出身の作家のなかでは珍しい、“柔らかく繊細な線”が描ける作家なのである。

グレンダイザーは、デュークの妹であり第2のヒロインでもあるマリアが登場し主要キャラクターが出そろった頃から従来のマジンガーシリーズとは異なる雰囲気となる。敵・ベガ星連合内の内情も描かれ、敵も荒唐無稽な作戦を立案するのではなく、作戦も何もない決死の特攻のようなハードな作戦を繰り返すようになっていく。このシリアスな展開に、スペースオペラ小説の挿絵のような岡崎のタッチがぴったりとマッチしたのだ。

岡崎は、初期こそ永井豪のタッチに似せようとしているのだが、徐々にらしさが目立つようになる。特に女性の描き方ははっきりと異なる。『ハレンチ学園』などお色気漫画も多い永井豪が描く女性キャラは、「お尻の小さな女の子♪」の歌詞で知られるキューティーハニーのような、健康的で力強いもの。だが、この絵柄は主人公が出自から苦難を抱えているグレンダイザーの作風とはあまり相性がよくなかったように感じる。岡崎は、その筆で見事に母星を失い兄と生き別れた妹というヒロインを表現した。柔和な表情にキラキラとした瞳。何より、永井豪よりも自然なボディラインは、今見てもドキドキするくらい美しい。

また、注目して欲しいのはベガ星連合軍の主要キャラクターの面々。元のデザインはいかにも悪いことを行うドラキュラのようないでたちなのだが、岡崎は彼らの表情に細緻なシワを描いた。特にガンダル司令官の後半の書き込みは一見の価値がある。こうしたシワや誇張された影により、グレンダイザーに追い詰められていくベガ星連合軍の決死の覚悟や、忠誠心、葛藤といった感情が読み取れるようになり、漫画としての厚みが増しているのである。

永井豪は一時期週刊連載を5本抱えていたという伝説もあるくらい多忙な人であった。その解決策として仲間と立ち上げた「永井豪とダイナミックプロ」という革新的な組織のおかげで、こうして同じIPでありながら、コミカライズごとにまるで違う味わいを何度も楽しめることを、改めて感謝したい。

永井豪とダイナミックプロよ、永遠なれ!

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この記事を書いた人

フリーの編集者。雑誌・Webを問わずさまざまな媒体にて編集・執筆を行っている。執筆の得意ジャンルはエンタメと歴史のため、無意識に長期連載になりがちな漫画にばかりはまってしまう。最近の悩みは、集めている漫画がほぼほぼ完結を諦めたような作品ばかりになってきたこと。

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