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温泉好きには堪らない“温泉ネコ”の全国温泉巡礼!?『旅する温泉漫画 かけ湯くん』

かけ湯くん
『旅する温泉漫画 かけ湯くん』(松本英子/河出書房新社)

旅行雑誌『旅の手帖』(交通新聞社)で連載されている“温泉旅漫画”を、待望の単行本コミック化した『旅する温泉漫画 かけ湯くん』。温泉好き(超マニア)なネコが全国各地の温泉を巡る、温泉愛好家にはたまらない作品だったりします。

隠れ温泉愛好家も納得な温泉儀式!?

一時期のブームは去った感もある温泉ですが、世の中には“隠れ温泉愛好家”が数多く潜伏していることをご存知でしょうか(笑)。何を隠そう自分もその一人なのですが、温泉に入浴する際、必ず行う儀式的なものがあります。

・かけ湯をする

(湯の感触と相性を肌で感じたい)

・身体がふやけるまで内湯に浸かる

(湯の心地よさに心身を奪われ、身体が欲する温泉成分を堪能したい)

・禁止されていない限り、とりあえず湯を口に含む

(思わず吐き出したくなっても我慢。マズイ薬ほど効能大!?)

・内湯でほてった身体を、露天風呂で景色に見とれながら癒す

(内湯は源泉かけ流しでも、冷めやすい露天風呂は加熱循環の施設も少なくない)

そんな自分が「そう、そうなんだよ!」と、思わず手を打ちたくなる漫画が『かけ湯くん』なのです。

主人公である、温泉が大好きなネコ“かけ湯くん”は、温泉で浴場に入り、湯に浸かり、湯を口に含む度に、何かしら感想(ウンチクともいう)を口にします。誰に話しかけるでもなく、ほぼ独り言をブツブツ……。他人事とは思えません(苦笑)。

各地の名湯・秘湯を網羅した温泉ガイド

温泉を満喫するためには、より人が訪れにくい秘湯へ、人が少ない時間帯に訪れることもポイント。“かけ湯くん”も同様で、温泉では自分の世界に浸りきります。逆に、他のお客さん(たいてい地元の方)と一緒になり、世間話に花が咲くことも。もちろん、話題の結論は「いい温泉でしょう?」。このメリハリ感が温泉巡りの楽しみなことも、物語からは伝わってきます。

この「いろいろわかってるな」感も、温泉好きを唸らせるわけで。作者自身も相当な温泉好きらしく、温泉の奥深さや魅力を、これでもかというほど語り尽くしてくれます。

コミック版に登場する温泉地は、玉川温泉(秋田県)、銀山温泉(山形県)、作並温泉(宮城県)、草津温泉(群馬県)、野沢温泉(長野県)、稲子湯温泉(長野県)、三朝温泉(鳥取県)、温泉津温泉(島根県)、鉄輪温泉(大分県)、日奈久温泉(熊本県)など。温泉好きなら一度は訪れたい名湯・秘湯ばかりで、旅館、日帰り温泉や共同浴場、山中の無人露天風呂まで多種多様な湯を訪れます。

『旅の手帖』連載作品らしく、入湯施設名や温泉基本情報などの記載に抜かりはなく、温泉ガイドブックとしても実用的な構成になっています。

緻密な絵柄と優しい手書き文字も魅力

マニアックな温泉情報だけでなく、名産品、郷土料理、温泉へのアクセスや町歩きで目にした情緒あふれる光景、地元の人とのふれあいなども作品の魅力に。

旅漫画としても上質な味わいを醸し出す作風は、旅好きな、とりわけ一人旅が好きな方には嬉しいはず。

“かけ湯くん”も基本は一人旅ですが、作者による情報誌『散歩の達人』(交通新聞社)連載イラストエッセイから派生した、“あがり湯くん”(やはりネコ)との二人旅も描かれます。気心知れた相手との突っ込み&突っ込まれ合う二人旅は、作品の適度なアクセントになるかと。

作者が描くキャラクターは良くも悪くも個性的で、人間が主人公の他作品では、その不気味さが読み手を選ぶ印象も拭えません。が、本作品はネコが主人公なので、幅広い層に受け入れられそうです。絵柄に癖がある猫なので、猫好きな人にもお勧めとは言えませんが……。書店によっては、ペット本コーナーに置かれているようなので要注意。

注意といえば、コマの大きさも。雑誌『旅の手帖』(A4変型判)に掲載された作品なので、コミック判サイズに縮小されると、手書き文字が小さすぎて読みづらく感じるかもしれません……。

作者の作品は、イラストレーターらしい緻密な絵柄と、ほのぼのとした味わいの手書き文字が魅力でもあるわけで。そこがスポイルされることを避けたい方は、電子書籍版も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

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