描き方次第で広がる!面白いのにタメにもなる、神様と宗教を身近に描いた斜め上を行く良作——『聖☆おにいさん』

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聖☆おにいさん
『聖☆おにいさん』中村光/講談社

※ややネタバレあり

目次

宗教に免疫がなくても、笑ってユニークに学べてしまう不思議

キリスト教において神の子とされるイエス・キリスト、仏教において仏の悟りを開いたブッダ、大胆にもこの2人を主人公としたのが、中村光氏によるギャグ漫画『聖☆おにいさん』である。大半が無宗教であり、比較的宗教に寛容である日本だからこそ誕生した、宗教を主軸とした稀有な作品といえよう。

ストーリーは、世紀末を無事乗り越えた2人が、休暇と称し東京都立川市にある安アパートでルームシェアをしながら外界の生活を満喫するというもの。

ブログを更新し、女子高生に「ジョニー・デップに似てる」と言われて喜ぶイエス、漫画を描き、節約を目指し家計を工面するブッダなど、両者とも実に人間的に描かれている。髪型は本来の姿そのままであるにも関わらず、Tシャツにジーンズといった現世ファッションに身を包んでいる点がまた良い。現世の者は2人の正体を知らないが、知らずのうちに崇められてしまったり、食に困った際には動物たちが自らを捧げに来たりと、その尊さは健在だ。

シュールな日常生活の中にも聖典や仏典を基にしたネタが多く組み込まれ、崇高であるにも関わらず、何故だかクスッと笑えてしまう。

宗教に興味や関心のない人も、より2人の世界に近付きたいがために、少しでも勉強してみようと思うに違いない。学校で学ぶ程度の知識でも十分に楽しめるが、深い見識があればよりディープにしみじみと味わえる。いずれにせよ、こんなにも肩の力を抜いて、信仰とは離れた宗教と関われるのは本作だけかもしれない。

著:中村光
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世界平和さえ感じさせるほっこり優しい世界観が魅力

人間の罪を背負って殺害され、後に復活し救世主となったイエスと、煩悩を抜け、永遠の真理を会得したブッダではそもそもの考えが異なり、相容れない部分もある。苦難を乗り越えた点は共通するが、生い立ちはまるで異なり、聖人に至るまでの歩みも違う。

しかしながら、本作の2人は互いのことをよく知っていて、環境や考えの違いによって喧嘩することもなく、受け容れ合い、各々に起こる過去に起因する出来事を楽しんでいる。さながら親友だ。

アナンダやラーフラはじめブッダの弟子や、ペトロ、アンデレらイエスの弟子、四大天使なども度々現世に登場するが、彼らもまた互いの師匠を受け容れ、理解している。さらには、互いの家族が交流するシーンまであるのだ。

フィクションとはいえ、実に平和で温かな世界観!

現代でも、多彩な宗教・宗教観を受容し、互いに寛容になることができれば、世界はもっと豊かに、より面白くなるのに、と思わずにはいられない。

彼らのように、各宗教の神なる存在が友達であるとの表記がどこかにありさえすれば、世界の宗教問題は片付いてしまう……のかもしれない。

本作には、2人の家族や弟子たちだけでなく、空海や天草四郎ら歴史的人物やゼウスやロキら神話の神、日本の神が登場することもある。シーンは少ないものの、エピソードはしっかりとしていて勉強になる。声を出して笑えるうえ、キリスト教や仏教だけでなくさまざまな宗教について思わず学べてしまうのだから、最高の教材とも言えるのかもしれない。

宗教だって描き方次第で身近で楽しいものになる

『聖☆おにいさん』は、笑って、図らずも学べる、神がかった作品だ。『月刊モーニングtwo』にて連載中で、既刊20巻。

1度でも読めば、ありふれた日常の中に彼らが浮かぶようになる。筆者の場合、アメリカで教材としてイエスの受難を描いた『パッション』という映画を見た時、頭の中のイエスも一緒に悲鳴を上げた。

映画の主人公はイエスであり、本作ののんきなイエスもまた、イエスなのだ。異なるのは描き方のみ。彼らは時に、宗教に対する厳しい目を緩めさせ、身近なものに感じさせてくれる。

まずは何も考えずに読んでただ笑って、興味が出たら宗教について学んでみるのもいいかもしれない。より器の大きな人になれることだろう。

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出演:森山未來, 出演:星野源, 脚本:根津理香, 監督:高雄統子
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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