『名探偵コナン』――2024年映画『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』公開前に総復習! 魅力的なキャラが織りなす謎解き&ラブコメに大注目

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『名探偵コナン』(青山剛昌/小学館)

※ややネタバレあり

目次

見た目は子供、頭脳は大人! 高校生探偵が小学生の姿で難事件を解決

人間は、誰でも等しく年をとる。

赤ん坊から子供へ、少年・少女期を経て大人(青年)になり、中年期を迎えた後は高齢者となる――。時とともに年齢を重ねていく、それは当たり前でごく自然なことだ。

しかし、ある日突然、その「当たり前」が逆行し、大人が子供へ、身体が小さくなってしまったら――。頭脳は元のまま、身体だけが変化してしまう、そんな目に遭ってしまった名探偵を軸に、さまざまな事件や人間関係を描く長寿シリーズの推理マンガ(作者の青山剛昌氏いわく“殺人ラブコメ”)が、『名探偵コナン』である。

幾多の難事件を天才的な推理力で解決に導き、「日本警察の救世主」「平成のホームズ」(今なら「令和のホームズ」?)とマスコミにもてはやされる高校生探偵・工藤新一。彼は幼なじみの同級生・毛利蘭と遊園地に出かけた際、黒ずくめの男たちの怪しげな取引現場を目撃。取引現場に夢中になっていた新一は、背後から近づいてきたもう一人の黒ずくめの男・コードネーム「ジン」に気づかず、襲撃を受けてしまう。目撃者である新一の口を封じるため、謎の毒薬を飲ませて立ち去るジン。尋常ではない苦しみに、命を落としたかと思えた新一だったが……目が覚めたら、身体が縮んでしまっていた!

隣人の発明家・阿笠博士に助けを求めた新一は、工藤新一が生きていることが奴ら(黒ずくめの組織)にバレたら、また命を狙われ周りの人間にも危害が及ぶと進言される。新一は「江戸川コナン」と咄嗟に思いついた偽名を名乗り、正体を隠して父親が探偵事務所を開いている蘭の家に転がり込んだ。

しかし、蘭の父・毛利小五郎は元警視庁捜査一課の刑事ながら、推理はからっきしのダメ探偵。見かねたコナンは、小五郎に時計型麻酔銃で麻酔針を打ちこんで眠らせ、変声機で小五郎の声を使って代わりに推理。巧妙に仕組まれたトリックや真犯人を暴き、次々と難事件を解決していく。こうして“迷探偵”を名探偵に仕立て上げ、周囲の目を欺くために小学校にまで通いながら、コナンは少しずつ組織の核心へと近づいていくのだった。

魅力的なキャラクターともに描かれるさまざまな事件

もはや、あらすじを語る必要のない国民的漫画。「週刊少年サンデー」(小学館)にて、1994年に連載を開始した同作は、2024年1月で連載30周年を迎える。約30年の間で、当然ながら作画も少しずつ変化しており、たまに昔の巻数を読み返すと、キャラクターの変遷がわかって面白い。劇場版では、ここぞという重要シーンで作者自身が原画を描くことも多く、秀麗な“青山原画”として毎年ファンの注目も集めている。

脇を固めるキャラクターたちも、皆個性派ぞろいで魅力的だ。新一と同じ高校生探偵で、剣道に秀でた服部平次、奇術を自在に操るコナンの好敵手・怪盗キッド、元黒ずくめの組織の一員で例の毒薬を開発した張本人だが、コナン同様身体が小さくなってしまった科学者・灰原哀、喫茶店のアルバイト&組織の一員「バーボン」&正体である公安警察の捜査官と、3つの顔を持つ安室透……。彼らがコナンと敵対したり、協力して事件を捜査したり、30年間も続くと主要キャラクターの人数も半端ではない。

余談だが、巻が進むにつれ、黒ずくめの組織壊滅のために動いている、各国の精鋭捜査官たちの存在が次々と明らかに。2023年11月末時点で、アメリカのFBI&CIA、日本公安警察、イギリスのMI6が捜査中だと判明。ここまできたら、インターポール(ICPO)からも誰か登場してほしいとつい願ってしまう。

通常は1つの事件を3~4話くらいかけて描くことがほとんどのため、軽快なテンポで読みやすい。連載初期の方こそ、ジェットコースターの走行中に乗客が首の無い遺体となったり(1巻)、山荘で被害者が全身をバラバラにされたり(5巻)、トラウマものの事件もあった同作だが、徐々にソフトな描写が増えていくので、スプラッタシーンが苦手な人も安心して読める。事件の内容も、殺人、暗号解読、誘拐、日常のささいな謎解きなどバラエティ豊かで、ミステリー好きの心をくすぐる。

ただし、ストーリーの核心に迫る重要事件――多くは黒の組織が絡む場合、かなりの長編ボリュームになり、予想を裏切るどんでん返しが待ち受けていることも。そのメリハリもまた、読者を長年飽きさせない工夫なのかもしれない。

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命は等しく尊いもの……ほろ苦い真実に浮かぶ一筋の光

人が起こすからこそ、事件は必ずしも謎を解いたらスッキリ解決、というわけにはいかない。「殺意はコーヒーの香り」事件(60巻)しかり、「ウェディング・イブ」事件(75巻)しかり、関係者が隠したがっていた哀しい真実や、知りたくなかった事実を浮かび上がらせてしまうこともある。

中には、自らの罪に耐え切れず、自死を選ぼうとする犯人も……。しかし、コナンは、犯人を追い詰めてみすみす追い詰める探偵は、殺人犯と変わらないと、彼らのサインを見逃さず阻止しようと努める。平次の母・静香が、刀を振り回す犯人に向かって「命に人のも自分のもあらへん! 奪ったらアカン大事な物や!! それを絶つアホはみんな人殺しと同じやねんで!!」とカッコよく啖呵を切った一幕も、そんなコナンの思想にどこか通じているように思えた(28巻)。

同じ28巻では、不老不死の人魚伝説が伝わる美國島で起きた連続殺人事件の捜査中、平次と和葉が崖からあわや転落しかけ、命の危機に。その間、コナンは小五郎を眠らせて推理ショーを行い、島民たちの前で真相を明らかにするが、事件の裏には人魚伝説で盛り上がる島ゆえに起きた、哀しい動機があった。なんとか危機を脱し、推理ショーのラストで合流した平次は「命には限りがあるから大事なんや…限りがあるからがんばれるんやで…」と、非常に重みのある言葉を告げるのだった。

例え殺人犯でも、自分の命でも、それは等しく大切なもの。どんなやむにやまれぬ理由があろうと、限りある命は決して奪ってはいけない……。そんな揺るがぬ信念があるからこそ、どんなに切なく哀しい真実を突き止めようとも、コナンたちは謎を解き続けるのかもしれない。

その割に、たまに「そんな理由で犯行を?」と仰天するトンデモ動機を語る犯人が登場するのもまたご愛敬である。

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2024年4月公開映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』にも期待大! 北海道・函館を舞台に平次と怪盗キッドが激突!?

1996年から、読売テレビ・日本テレビ系列にてテレビアニメの放送が始まり、1997年以降、劇場版が制作されてきた『名探偵コナン』。今年は、劇場版26弾『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』が興行収入138億円を超え、シリーズ歴代No.1ヒット作となったことも話題となった。そして、早くも2024年4月12日、劇場版27弾『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の公開が決定。北海道・函館を舞台に、怪盗キッド、平次、平次の幼なじみ・遠山和葉らが登場することが明かされた。

“殺人ラブコメ”と作者が銘打つだけあって、コナンワールドには新一×蘭、蘭の親友・園子×空手の達人・京極真、高木刑事×佐藤刑事、白鳥刑事×コナンの担任教師・小林先生など、多数のカップルが成立している(その多くは、殺人などの事件をきっかけに誕生しているのもさすが)。そんな中で、両想いにも関わらず遅々として進展せず、読者をやきもきさせているのが、平次&和葉のコンビ。劇場版27弾は、この2人の仲の進展具合も気になるところだ。

コナン(新一)の「大親友」を自称する平次は、コナンが大阪に来るたびに大喜びし、助けを求められれば東京へ駆けつけることもしばしば。コナンの正体が周囲にバレないよう、何かと協力を惜しまない頼もしい味方なのだが、なぜか時折、妙に対抗意識を燃やすことがある。「ホームズの黙示録」事件の最中(7172巻)、英国・ロンドンを象徴する名所ビッグベンの前で、図らずも蘭に想いを告げた新一(この時は解毒剤の効果で元の姿に戻っていた)。それを知った平次は、和葉に告白する時は自分も景色のキレイな土地や絶景スポットでと、“場所”に妙なこだわりを持つようになったのである。

これまでも何度かチャンスはあったものの、その度に警察や、平次に想いを寄せる大岡紅葉らの妨害で失敗してきた平次の告白。平次はまったく気付いていなかったが、和葉の方から告白しかけたこともあった(75巻)。「100万ドルの夜景」と称される函館も、ティザービジュアルに描かれている星形の観光地・五稜郭も、どちらもロマンチックな告白スポットとして申し分ないように思えるが、今度こそうまくいくのだろうか。

個人的には、初登場時から強く平次を想っていた一途な和葉のこと、そこまで場所にこだわらないような気もするが……。何しろ、幼少時(保育園で出会った当日)から蘭への一目惚れを自覚していた新一と異なり、平次は「コナンと平次 恋の暗号」(83巻)でようやく自分の想いに気づいたらしく、色恋方面にはひどく疎めの印象。周囲にはバレバレなのに本人たちだけが一歩踏み出せない、平次&和葉のもどかしい「両片想い」は実に微笑ましく、告白を応援したい半面、もう少し今の状況を見守っていたい気もする。

もう一人のキーパーソン「怪盗キッド」は、もともと同作者の別作品『まじっく快斗』(小学館)の主人公。その正体は、新一と同じ高校2年生の黒羽快斗で、なぜか顔も声も新一に瓜二つ。マジックだけではなく、年齢・性別を問わずに誰でも化ける変装術と声帯模写を得意とする、コナン界の名探偵たちとまた違うタイプの天才だ。原作でも劇場版でもすっかりおなじみのキャラクターとなった怪盗キッドが、事件とコナン、平次&和葉をどのようにかき回すのか、来年の公開まで興味は尽きない。

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劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』特報【2024年4月12日(金)公開】

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この記事を書いた人

情報配信会社や冠婚葬祭会社勤務を経て、編集プロダクション「アドバンスワークス」所属。TV雑誌記事やSEO記事の編集、執筆を担当。都心情報サイト&親子を結ぶ介護サイト準備中。好きなものは猫、ミステリー。

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