『COSMOS』――宇宙人専門保険会社というアイデアがアトラクティブ! 嘘を判別できる高校生と宇宙人の保険調査員が織りなすドラマに深み

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『COSMOS』(田村隆平/小学館)
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嘘が見抜ける能力を持つ主人公と宇宙人の遭遇が巻き起こすのは?

『べるぜバブ』(集英社)などで知られる田村隆平が手がける本作の冒頭は、わずかな確率の不幸にかける「博打」があり、それは「保険」だと表現することで幕開け。保険に関するストーリーなのかと思い読み始めると、主人公は「人が嘘をつくと臭いでわかる」能力を持った高校生・水森楓であり、なにげなさそうな日常生活の描写が続いていく。……と思いきや、音信不通となっている同級生・相澤の自宅を訪ねたところで事態は一変していく。

相澤宅の前に取り立て屋風の人相悪めな人たちが立っており、その後ちょっとした出来事があった後、男たちは消え、ひとりの女子高生が現れる。相澤に金を貸しているという彼女とともに部屋の中に入ると、そこには相澤の姿をしたミイラならぬ“抜け殻”が。そして女子高生・穂村燐が言うには、相澤は「地球外生命体」であり、彼女は宇宙人専門の保険調査員なのだという。そして、それらが嘘ではないことを、水森楓は自身の能力ゆえに理解する。

まさに主人公の設定をきれいに活かしつつ、読者にも想像の上をいく展開で楽しませてくれる。単行本第1巻の帯で『BLEACH』(集英社)などで知られる久保帯人が絶賛していたが、冒頭のフリで思いっきり引きつけられ、そこから怒濤の引きで第1話のクライマックスまで一気に突っ走る。たしかに読んでいて爽快で、続きが素直に気になる。

著:田村隆平
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事態解決やアクション痛快さに彩られたキャラエピソードが◎

水森楓は嘘を見抜く能力を見込まれ、穂村燐に保険調査員(オプ)にスカウトされる。穂村燐らの説明によると、地球にはかなりの数の異星人が来ており、宇宙人専門の銀河金融保険公社「COSMOS」は世界中に支部があるという。この設定は現在の日本が置かれているインバウンド的な状況に近く、対象が宇宙人になっただけだと思うと、規格外ではあるが飲み込みやすい設定だ。こうした会話中も水森楓は穂村燐の言葉に嘘の臭いを感じないのだが、何度も念押しされると、何もないのだろうがいろいろな意味で正直気になるところではある。

その後、実際に仕事に立ち会いながら見学していく中で、大立ち回りあり、嘘を臭いで見破るなど、一見すると宇宙警察的な勧善懲悪なストーリーが展開していくのかと思いきや、エピソードは思いのほかヒューマン(相手が宇宙人なので合っているかは謎だが)な描写もある。続くエピソードでは水森楓が嘘を見抜く能力があるからこそ抱いてきた思いについても触れられており、ドラマ的な読み応えも抜かりない。

嘘を見抜く能力や能力を使って事件を解決、さらに保険調査員を中心にした物語などはほかにもあるが、本作はそこに宇宙人を絡めているところが異色で斬新。能力持ちの地球人と宇宙人による保険調査員バディものというのは、何ともエキセントリックながら王道でもあり、さらに宇宙人たちの金銭の話という視点は想像がつかない。まだまだ既刊は1巻のみだが、この先どのような味付けを施したエピソードで楽しませてくれるのか期待が高まるばかりだ。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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