『住みにごり』−−−どこかにいる歪な家族の日常を覗き見る。人間味にあふれた奇怪なホームドラマ漫画

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『住みにごり』(たかたけし/小学館)


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不穏な空気が流れる歪な家族、果たして彼らは異常なのか

令和5年版の警察白書によると、殺人事件における被疑者と被害者の関係で最も多いのは44.7%の割合で親族とされている。理想の家族に見える人々でさえ、本当の関係は分からない。他人とのトラブルに比べ、家族・親族間での問題は誰かに相談しづらいこともあり、なかなか表面化しない。しかし、「見えない」だけで問題は確実に発生している。

“毒親”、“親ガチャ”、“子供部屋おじさん”など家族に関する新しい言葉も生まれ、家族間に潜むさまざまな問題が浮き彫りになってきた。世間には取り繕った家族が溢れ、実際に入り込んでみない限りその実態は分からない。家族関係に何の問題もなく、満足している人はどれほどいるのだろうか。

そんな日本のどこかにいるであろう歪な家族の日常を描いた良作がある。『住みにごり』は、とある4人家族のリアルを写す新たなるホームドラマ漫画。家族の数だけ形があり、幸せの認識も異なる。この家族からは不穏な空気を感じるが、この家族が特別なのか、ありふれた家族の在り方なのかは分からない。あなたなら異常か正常か、どう感じるだろう。

仕事を辞めた西田末吉は、29歳の夏に実家に帰省した。

末吉には酒乱の父親、脳出血で倒れて以降介護を必要とする母親、15年以上無職の兄・フミヤ、頻繁に実家を訪れる姉・長月(なつき)がいる。そのまま実家に帰りたい末吉は、両親に退職した事実をなかなか伝えられないまま日々を過ごしてゆく。ある日幼馴染の森田純夏と偶然再会し、その後付き合うことに。純夏の登場により、歪な家族はより歪んでしまう。西田家に待ち受けるものとは――。

著:たかたけし
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独特な作画と奇妙なストーリーが生み出す不気味な空気感

濃く太い線で描かれた特徴的な作画や効果的なオノマトペ、仄暗い影、適度な余白が独特な世界観を作り上げている。昔ながらの家、汚れた部屋、薄暗い道などありきたりな風景からも嫌な空気を感じ、形容し難い居心地の悪さに包まれる。他では味わえない不気味さがたまらない。

人物の描き分けも大変興味深く、瓜ふたつの父親とフミヤの姿に妙なリアリティがあり、実家のご近所さんの物語のような身近さを感じさせる。質感まで丁寧に描き込まれた背景も素晴らしく、実際とは違っても何故だか懐かしさが浮かぶ。おかしな家族なはずなのに、きっとどこかにいると確信できる。

冒頭の場面こそ衝撃的であるが、どこか不穏な空気を纏う家族の日常を淡々と描いた物語。ひと口にニートと言っても、その在り方は多彩だ。引きこもって両親に暴力を振るう者もいれば、自由に外出して働かないだけの者もいる。ニート問題は、親の教育云々というものではない。子供に怯え従う親がいる一方、子供が周囲に危害を加える未来を案じ殺害してしまう親もいる。本作の父親とフミヤはどちらも主張が強く、決定的なことは起きていない。家族の誰もがどこか異様で、不思議なバランスで成り立っているように思える。誰かの限界を超えない限り、崩れることはない脆くも固い砂の城。この家族のバランスはいつまで保たれるだろう。

劇的な展開があるわけではないが、日々は進み不穏な空気が流れ続ける本作。エロティックな場面が多いのもやけに現実味があって生々しい。不意に浮かぶ過去のワンシーンにも明かされていない事実が隠れていると思うので、今後の展開がまだまだ楽しみだ。普段はなかなか触れることのできない他人の家族。本作を読んで、覗き見気分を味わおう。おかしいのは特定の家族なのか、そもそも家族はおかしなものなのか。家族の正常性について考えてみて。

人間の恐ろしさを感じさせる、味わい深く豊かなホームドラマ

『住みにごり』は、たかたけし氏による、ある4人家族の実態を描き出した不気味なホームドラマ漫画である。小学館による月2回発刊の青年漫画雑誌「ビッグコミックスペリオール」にて2021年より連載中、未完、既刊4巻。最新刊となる第5巻は2023年12月27日に発売された。

純夏の登場により展開が変化してきた第3巻以降。

歪な家族は純夏の策略でついに崩壊してしまうのか。人間関係の狭い地方では実際に起きていることなのかもしれない。ホームドラマだけでなく拗れた恋愛模様、身勝手な復讐劇など日常に潜むホラーを体験できる本作。無二の世界観に没入してピリついた緊張感まで堪能してもらいたい。人間ならではの恐ろしさやエゴイスティックな様を垣間見ることができるだろう。

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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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