『エヴァ』庵野秀明は「10歳」 妻・安野モヨコが“オタクの教祖”の素を綴る『監督不行届』

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監督不行届
『監督不行届』(安野モヨコ/祥伝社)
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「お前か!!」彼の名前は“カントクくん”「日本のおたく四天王」のひとりである……

「あたしに“おたくの嫁”がつとまるだろうか」。漫画家“ロンパース”が結婚した相手は、アニメや映画を作ることが仕事の“カントクくん”。菓子ばかり食べて『鉄人28号』の食玩を散らかし、結婚式では「『仮面ライダー』のスーツを着る」と言い、気付けば『ミラーマン』ごっこで遊んでいる……。彼は、「日本のおたく四天王」のひとりと呼ばれる男だ。

一生をかけてロンパースにおたく教育を施し、「死ぬ頃には立派なおたくの嫁に」すると宣言するカントクくん。かくして、ロンパースのけわしい「オタよめ道」が始まった……。

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「この男に安易に手を出すべきではなかった」の恨み節で注目! 妻が綴る“実態”とは

「この男に安易に手を出すべきではなかった」。“恨み節”から始まった本編で映されるその人となりに、苦笑いを誘うような奇人変人ぶりを見た人もいれば、自分を追い込み苦悩する繊細な内面を感じた人もいることだろう。2021年春にNHKで放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀』が大きな話題を呼んだ、『エヴァンゲリオン』シリーズで知られる庵野秀明である。

『アオイホノオ』に実名で登場させた同窓の漫画家・島本和彦や、若かりし頃に師事していた宮崎駿などなど……。関わってきた人びとが、折に触れて明らかにしている庵野の“実態”は、かねてより一部のファンには知られていたものだが、同ドキュメンタリー以降より注目される機会が増えたように感じる。2021年夏にAmazonプライム・ビデオで独占配信された、お笑い芸人・松本人志とのまさかの対談に驚いたのは、きっと筆者だけではないはずだ。

『監督不行届』はそんな庵野のプライベートでの“実態”について、妻にして『働きマン』(講談社)や『ハッピー・マニア』(祥伝社)で知られる漫画家・安野モヨコが綴るコミックエッセイである。言うまでもないが、“ロンパース”が安野、“カントクくん”が庵野を基にしたキャラだ。

「自分のパブリックイメージもずいぶん変わったと思います」今後も目が離せない“オタクの教祖”を知るために

「この人死んじゃうんじゃないかなって思った」。『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、知り合った当初の庵野の荒んだ生活ぶりについて、このように語っていた安野。結婚して間もない時期の彼らを捉える本作は、まさに安野が言うところの生活力のない庵野の姿も浮き彫りにしていく。……のだが、そんなエピソードを含めて、庵野いわく「嫁さんが夫婦の実話をベースに、よりおもしろおかしくアレンジしてる感じ」なのが本作だそうだ。

大筋としては「“カントクくん”こと庵野のオタクぶりに振り回される“ロンパース”こと安野の日常」とでも表現すべきものなのだが、よくよく考えると安野もまた漫画家というオタク側のひとりというバランスが面白い。とあるエピソードでカントクくんがボディケアに目覚め、そのあまりのハマりぶりを「このままフツーの男になってしまう!!」と危惧するロンパースのセリフは微笑ましい。

「自分のパブリックイメージもずいぶん変わったと思います」とは、本作の単行本に収められたインタビューでの庵野の言葉である。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をもって『エヴァンゲリオン』こそ一段落したものの、「ウルトラマン」と「仮面ライダー」の『シン』実写映画の公開を控え、今後も目が離せない庵野。引き続きパブリックイメージが変わっていくであろう“オタクの教祖”の素顔が垣間見えてくる、一読の価値ありの生活録だ。

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この記事を書いた人

アニメやマンガが得意な(つもりの)フリーライター。
大阪日本橋(ポンバシ)ネタやオカルトネタ等も守備範囲。
好きなマンガジャンルはサスペンス、人間ドラマ、歴史・戦争モノなどなど。
新作やメディアミックスの話題作を中心に追いかけてます。

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