『ロジカとラッカセイ』――生き物の本質を鋭く描いた壮大なストーリーでありつつ、ほのぼの優しい気持ちになる日常系漫画

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『ロジカとラッカセイ』(紀ノ目/新潮社)
目次

優しい日常の裏にある真実の世界、人類の消えた地球での生活とは

ほんわかとした優しい世界観、可愛らしい絵柄に愛くるしいキャラクター、シンプルながら深遠なるストーリー……。子供にも読ませたい、絵本としても楽しめそうな素晴らしい漫画をご紹介したい。

『ロジカとラッカセイ』は、遥か未来、人類滅亡後の地球で暮らす生き物たちの日常を描いた作品である。舞台は人類の消えた地球のため、独特な姿形をした生き物たちが登場する。どのキャラクターも愛らしく、特に違和感なく物語の世界へ訪れることができる。

物語の序盤には、モノローグやセリフによる時代や背景に関する説明はない。読み進めながら思案することになるが、私たちにとっては見慣れたものが“謎の物体”として登場したり、旧文明について記された書物に登場したりと、徐々にその世界が姿を表してくるのも面白い。ページを捲ればたちまち不思議な世界へダイブ。他作品では味わえないユーモラスな没入感をお試しあれ。

舞台は、とある事情により人類の消えた未来の地球。

人間の子供・ラッカセイは、親代わりのロジカと日々楽しく暮らしている。研究好きなアイザック、良きお兄さん役のしーさん、魔法使いのアベルなどたくさんの仲間に囲まれ、生活に不満はない。さて、未来の地球にある暮らしとは、ラッカセイの幸せな日常の裏にある世界の真実とは。

著:紀ノ目
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愛くるしい生き物たちの日々の物語、そこに人間の本質が隠されている

まず注目したいのは、どこかで見たような、でも見たことのない奇妙で可愛いキャラクターたち。それぞれに個性があり、性格も異なり、違った事情を抱えている。見た目は違えども、その生活は人間と大差ない。

そんな彼らが暮らすのは、文明の利器もない自然豊かな世界。奥行きを感じさせる自然の描写も美しく、未来の世界でありながらノスタルジックな雰囲気が漂う。人間の消えた地球の緑は青々とし、澄んだ空には満点の星が輝いている。

テンポを生むコマ割りやほのぼのとしながら動きのある日常は読む者を飽きさせず、不思議な世界の住人気分が味わえる。日常を描いた物語ではあるが、各話に人間ないし生き物の本質が見事に描かれていて大変奥深い。

淡々と紡がれる物語は、ちょっぴり恐くてぽっと心が温まる。第6話や9話、14話では温もりと愛が世界を優しくすることを実感できるし、第11話や16話では生きるものに秘められた歪んだ狂気を見せつけられる。

かつて、アメリカの動物行動学者がネズミを使って行った「Universe(ユニバース)25」なる有名な実験があった。十分な生活環境(ユートピア)に4組(8匹)のネズミを住まわせ、その行く末を観察するもの。最初は爆発的に数を増やしていくが、ユートピアに住んでいるにも関わらず、次第にネズミの間で格差が生まれ、人間でいうニートのようなネズミが現れる。この実験は25回行われたが、結果として25回とも、ネズミは絶滅してしまった。

意志ある生き物は皆異なる。全て同じでない限り、全くの平等などありえない。新たな生き物が暮らす本作の地球にも弱肉強食はあり、格差や狂気もある。本作で描かれる狂気では、そんな生き物の本質を見せつけられているようで空恐ろしくなる。とはいえ、ジカ族のロジカのようにどこまでも優しさに満ちたものも描かれているので、小難しく考える必要はない。

ほんわか優しい雰囲気でありながら、「人間とは」「生きるとは」が詰まっているので、子供と読めば良い教育にもなると思う。

3巻完結と読みやすく、読後感は爽やかで清々しい。日々たくさんの漫画が生まれ、過激な作品も増えた今だからこそ読んでもらいたい1冊。心がふっと軽くなり、時にキュッと切なくなる。想像以上に味わい深く、壮大で素敵である。導入や各話の並びも考えられていて、構成まで素晴らしい。「毎日疲れたな」と思っている人は、きっと毎日が「なんだか素敵」と思えるはずだ。

ほのぼの日常系、その実壮大な気軽に読めるWEB漫画

『ロジカとラッカセイ』は、紀ノ目氏による、未来の地球を生きる未知なる生き物・ロジカと人間のラッカセイの変わりない日々を描いた日常系漫画である。新潮社によるWEBマンガサイト「くらげバンチ」にて2018〜19年まで連載、完結済み、全3巻。単行本もあり、各電子書籍サイトでも購読できる。

ほっこりするだけでない、よくできた作品。スプラッター好きの筆者ではあるが、優しさに溢れる話もダークな話もあって大変楽しめた。キャラクターの愛らしさは唯一無二で、他作品にはない満足感が味わえる。表情も豊かに描かれているが、人間ではないので嫌悪感や不快感はない。各話気軽にすっと読めるので、全ての人におすすめしたい。思いのほか壮大なストーリーなので、読まず嫌いせずに手に取ってみて。

著:紀ノ目
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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