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“ネットありき”の今のマンガに渦巻く「編集不要論」――しかし、それでも。『マンガに、編集って必要ですか?』

『マンガに、編集って必要ですか?』青木U平 (著)/新潮社

“マンガの裏方の裏方”――その仕事とは、思いとは

「マンガ編集者」とはいかなる仕事なのか。

かの『週刊少年ジャンプ』ですら電子版やウェブサイト、スマートフォンアプリに進出するなど、マンガも“ネットありき”の時代となった昨今。

その生みの親にして裏方たるマンガ家の、そのまたさらに裏方を務めるマンガ編集者の仕事の様子やその生の声も、編集者自身が実名で運営するTwitterなどを通して、気軽に知ることができるようになった。

しかし、その仕事ぶりや作品への貢献ぶりは、そして胸に秘めたる考えや思いは、Twitterで呟かれる、表に出てくるものだけに留まらないのは純然たる事実だろう。

そんな“マンガの裏方の裏方”の舞台裏に想いを馳せる一助となりそうなマンガに、『マンガに、編集って必要ですか?』がある。

「話はそれるんですけど」――それって必要ですか?

『マンガに、編集って必要ですか?』は、板尾創路を主演に迎えTVドラマ化された『フリンジマン』の作者・青木U平による、“漫画家と編集者の「打ち合わせ」コメディ”を謳う作品だ。

主人公の佐木小次郎は「キャリア8年目の中堅漫画家」という肩書きこそいかにもに聞こえるが、その実は目ぼしいヒット作もなく、出版不況下も相まってマンガ家としては芳しくない立場にある。

物語はそんな彼が、その歴1年目の新人女性編集者である坂本涼と、とある喫茶店で打ち合わせに臨んでいる場面から始まる。

打ち合わせとは言うものの、20代の女性らしいきらびやかさを全開に「話はそれるんですけど」と雑談に寄り道する坂本を、成果を急ぎ時間を惜しむ佐木はあまりよく思っていない。

しかし、「とんでもない担当」として真顔と苦笑いでいなしていた彼女に対する佐木の認識は、長い付き合いの編集者や新入りのアシスタント、友人の売れっ子マンガ家、元バンドギャルの妻らとの会話、そして何より本人のふとした言葉や表情を通じて、少しづつ変わっていく。

「編集不要論」――ハートと数字のはざまで

第1巻で印象的なのは、Webでの人気をきっかけに業界に飛び込んだ「次世代の新人漫画家」である、新入りのアシスタント・沖田が口にする「ぶっちゃけ、編集っていらなくないスか?」という言葉だろう。

それに応じる第一声が「難しいな…」の佐木は思考放棄と断じられるが、その後も「理屈で割り切れるほど浅い関係じゃあない……」と抽象的な――“エモい”ことを返すに留まる。

その口ぶりには「いや、そんなことはない」の思いが滲むが、曲がりなりにも、それなりのキャリアを持つ佐木をしても、「編集不要論」に反論する思いの具体的な言語化は難しいのだろう。

この問答は、そのままマンガ読者にも、ひいては現実の、今のマンガを取り巻く状況にも画一的な答えの出ない問いかけとなる。マンガに編集は、編集者はなぜ必要なのだろう。

その後、第1巻の最終話で「新しいマンガをつくろう―――この若い編集と」と前向きな心境にたどり着いた佐木のもとに、坂本に関する予想だにしなかった一報が届き、物語は急展開を見せていく。

『マンガに、編集って必要ですか?』は全3巻の作品だが、最終巻にあたる第3巻には“漫画家と編集者の「打ち合わせ」コメディ”ではなく“等身大の漫画家物語”という文句が掲げられている。

表面的なところに留まらない、マンガ編集者としての坂本が掘り下げられていく第2巻を経てその結末まで読み終えれば、きっとその意図するところに感じるものがあるはずだ。

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