水の都市・ベネツィアをモチーフに綴られる空・海・風のヒーリングコミック『ARIA』『AQUA』

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『AQUA』天野こずえ (著)/マッグガーデン

人気ラーメン店を訪れると、必ず「何だよ、全然うまくないじゃん」などと口にする人がいる。でもね、一口に“ラーメン”といっても、スープだけでも醤油・味噌・塩・豚骨などなど、麺との組み合わせを考えると千差万別。醤油ラーメン派の人が豚骨ラーメンを食べて「ウマくない」と評しても、それは単なる“好き嫌い”に過ぎない。

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『ARIA』が寄り添い続ける想いは十数年を経ても色褪せない

そうしたラーメンとコミックには、前々からある種の共通点を感じていたりもする。あの作品が面白い、“***がお勧めの……”などの指針がもっともアテにならない書籍=コミックなのでは? と。

見方を変えれば、誰もが想い(=作風)を共有しやすく、ライフスタイルや求めるものが変わっても寄り添い続けてくれるからこそ、皆から愛される。そんなコミックの代表例が、連載終了から十数年を経ても色褪せない『ARIA』(当初のタイトルは『AQUA』)じゃないかと思うわけで。単行本は最初の2巻が『AQUA』で、『ARIA』1巻が事実上の3巻にあたるため、読まれる際はご注意を。

著:天野こずえ
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“癒し”を前面に打ち出したコミック新時代の幕開け

『ARIA』『AQUA』の魅力が“癒し”にあることは、キャッチコピーの「未来系ヒーリングコミック」からも明らか。90年代までラブコメとして一括りにされていた地味な要素を、敢えて前面に押し出した作風。それは2000年代の幕開けとともに多様化していく、コミック新時代の先駆けだったのかもしれない(連載開始は2001年)。

天真爛漫な超天然系ヒロイン・水無灯里をはじめ、劇中の登場人物はすべて“いい人”ばかり。誰も傷つかず、傷つけず、劇的な展開や話題もなく、淡々と進む物語。灯里はもちろん、藍華、アリス、アリシア、晃、アテナといった主要女性キャラに恋愛要素が皆無な点も、従来の常識を覆すもの。余分な要素が入り込まない分、老若男女あらゆる読者層の心に、素直に溶け込める。そんな空気に包まれていると、折々に物語を動かす妖精ケット・シーの存在なども、不思議と違和感なく受け入れられるようになる。それもまた、『ARIA』マジック、天野こずえマジックなどといわれる所以?

“素敵色”に染まれる幸せを……恥ずかしいセリフ、禁止!

こうした魅力をさらに引き立ててくれる演出が、物語の舞台となる未来都市、ネオ・ベネツィアの光景。イタリアの水上観光都市・ベネツィアがモチーフだけに、水路とゴンドラが生み出す様は、全てのカットをポストカードにしたくなるほど美しい。単純に水の光景=青色ではなく、水と光が生み出す“青”と“蒼”の違いまで感じさせる作画やコマ割りには、ページをめくる手が思わず止まってしまうことも……

で、結局のところ『ARIA』『AQUA』の魅力って何なの? と問われれば、それはもう“素敵さ”しかないわけで。“素敵”は誰の心にも通じるワードだけれど、それを具現化できている作品は意外なほど少ないもの。『ARIA』に勝る素敵さはない! と断言しちゃっても、たぶん怒られない…と、思う。

灯里なら、きっと「どこまでも、ひたすら、ただただ“素敵色”に染まれる幸せって、本当に暖かいんだもの」とか言ってくれそう(作品内の定番でもある)。藍華の「恥ずかしいセリフ、禁止!」ツッコミを受けても、これだけは譲れないんだからねっ。あらあら。

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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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