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『殺さない彼と死なない彼女』が突き付ける「生きることの切実さ」

『殺さない彼と死なない彼女』世紀末 (著)/KADOKAWA

3つのエピソードで構成された「いまもっとも泣ける」4コマ漫画

「世紀末」というちょっと風変わりなネーミングの作家がTwitterにアップし、「いまもっとも泣ける」と話題になった4コマ漫画を一冊にまとめた『殺さない彼と死なない彼女』。

「全人類から愛されたい」と願う、あざと可愛い女子高生“きゃぴ子”と、友人・地味子のやりとりを描いた『きゃぴ子』。恋に無関心な“八千代くん”と彼のことが大好きな“君が代ちゃん”の関係を描く『君が代ちゃん』。そして本書のタイトルにもなっている、「死ぬ!」が口癖で、“死ぬ理由と生きる意味”を探す“死なない彼女”と、「殺す!」と言いながら“死なない彼女”の言動を楽しんでいる“殺さない彼”の「友だち以上、恋人未満」の日常を綴った『殺さない彼と死なない彼女』。

そんな3つのエピソードによって構成された本作は、ゆるふわなタッチの絵柄とは裏腹に、「生きることの切実さ」を痛いほど読み手に突き付ける、驚きに満ちた1冊だ。心の奥底にはいつも不安や孤独を抱えながらも、ことあるごとに思わせぶりなセリフを口にして、周囲の気を引かずにはいられない……。そんなメンドクサイ登場人物たちの一挙一動が愛おしく、クスクス笑いながらも、胸をギュッと締め付けられる。

「殺さない彼と死なない彼女」に待ち受ける、衝撃の展開にむせび泣く…

「殺さない彼と死なない彼女」の“殺さない彼”こと、小坂れいは、教室の窓際の後ろの方の席を陣取りながらも、基本的には誰とも群れず、退屈を持て余している男子高校生。

一方“死なない彼女”こと、鹿野ななは、日常的にリストカットを繰り返す、メンヘラ系の女子高校生。ある日、教室のゴミ箱に捨てられたハチの死骸をわざわざ拾い、校庭の隅に埋める鹿野の姿を目にした小坂は、「命を大切にするのに死にたがりの彼女」に興味を惹かれ、互いに毒を吐きつつも、気づけば四六時中一緒にいるようになる。

まるで「チッチとサリー」のような身長差の凸凹カップルが交わす言葉の大半は、「死んでやる!」「殺すぞ!」の活用形ばかりだが、ぶっきらぼうに振る舞いながらも、実は誰よりロマンチックで哲学的な示唆に富んだ小坂が、世界の片隅で必死に愛を叫んでいたことを、皮肉にもある日突然、彼らに残酷な悲劇が襲い掛かることによって、むせび泣くほど強烈に思い知らされるのだ。

世界観を見事に具現化した実写映画も見逃せない

ちなみにこの「殺さない彼と死なない彼女」は、『ももいろそらを』『ぼんとリンちゃん』などで知られる小林啓一監督・脚本により、間宮祥太朗(殺さない彼)と桜井日奈子(死なない彼女)のダブル主演で実写化もされている。

実を言うと筆者は映画から先に観たのだが、光あふれる美しい映像と、役者たちの繊細な演技が織りなす見事な群像劇に仕上がっていて、2019年のみならず、我が人生のベスト10に入るほど心を掴まれた。人生を斜めに見ずにはいられなかったあの頃に、もしこの作品と出会えていたらもう少しマシな人生を送れていたかもしれない……とも思いつつ、映画を観たあとコミックを速攻買い求め、この世界にどっぷりと浸ったのだった。

この「殺さない彼と死なない彼女」というタイトルの本当の意味を知ったとき、また最初のページに戻って何度でも読み返したくなるに違いない。

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