『LOVE MY LIFE』から考える、自分らしい恋愛のカタチとは?

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『LOVE MY LIFE』やまじえびね/祥伝社
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レズビアンであることをパパに告白したら、衝撃の展開が待ち受けていた……!

やまじえびねの2001年刊行の漫画『LOVE MY LIFE』は、18歳の専門学校生・泉谷いちこの「愛と家族を巡る冒険」を実にポップに綴りながらも、「自分らしい恋愛とは何か」を読み手に考えさせる、まさに「ダイバーシティ(多様性)の先駆け」とも言うべきコミックだ。

ある日、3つ歳上の大学生の城島エリーとクラブで出逢ったいちこは、一目で彼女に興味を惹かれ、気づけば暗がりで熱いキスを交わしていた。そして、弁護士を目指して法律を学んでいる彼女と愛し合うようになり、初めて自らがレズビアンであることを自覚する。だが、7年前にママが亡くなって以来、大学の助教授と翻訳家として二足の草鞋で働きながら男手一つで育ててくれたパパに、本当のことを打ち明けるべきかどうか頭を悩ませていた。

いまだ「同性愛は病気だ」と信じるエリーの父親と比べれば、海外の過激なパンク作家やゲイのライターの本を意欲的に翻訳しているいちこのパパの方が理解はありそうだけど、いざ自分の娘がそうだと知っても果たしてすんなりと受け入れてくれるものだろうか……。そんな自問自答を繰り返しつつも、思い切ってパパにエリーを紹介してみたところ、予想だにしない展開がいちこを待ち受けていた。というのも、娘の恋人が女性であることを知ったパパはさすがに少し驚きながらも、「やっぱりいちこはパパとママの子だと思った」「(なぜなら)パパもゲイだから」「(そして)ママもレズビアンだった」という、驚きの事実を口にしたからだ……

もはやそれだけでも十分すぎるくらいのインパクトがあるのだが、その後もパパの年下の現恋人を紹介されたり、ずっと「ママの親友だ」と聞かされていた女性が実はママの愛人だっだことを知らされた上に、さらにエリーと旅行に出かけた先で思わぬ形で再会したり、とある事情からゲイの友人と恋人のふりをしてみたり……と、自我を確立したはずのいちこを混乱させる「異なる価値観」との出会いが芋づる式に登場する。あまりにもの怒涛の展開に、読み手もいちこと一緒になって「自分ならどう反応するだろうか……」と、思考を巡らせずにはいられない。

「人が人を愛することの意味」や「自分らしく生きることの意味」を漫画で問いかける

「LGBTQ」や「多様性」という言葉が盛んに用いられるようになった2010年代の作品ならいざ知らず、さらに遡ること10年以上前の2001年にこのコミックが刊行されたことを考えると、いかにこの作品が時代を先取りしていたかということにただただ驚かされる。「自由な生き方を認めて欲しい」と願いながらも、いざ相手にも自由な生き方を突き付けられると、それを受け入れることをためらってしまういちこの身勝手だけど素直な戸惑いが、手に取るように伝わってくるからだ。

自分の本心に背いて生きることはできないけれど、「子どもが欲しい」という理由で互いの合意のもとでパパとママは結婚をして、いちこを授かった。二人は両親として自分のことを精一杯愛してはくれたけど、自分は「心から愛し合う二人」の子どもではなかったのか……これは決してセクシャルマイノリティの問題のみならず、親の都合で結婚させられた二人の間に生まれた子どもや、不妊に悩む夫婦のもとで養子として育った子ども、離婚した両親の新たなパートナーと暮らすことになる子どもが、自分が愛されているのか悩んだりすることときっと変わらない。

「LOVE MY LIFE」は、一見センセーショナルな描き方をしつつも、さまざまなシチュエーションに置き換えて考えることで、「人が人を愛することの意味」や「自分らしく生きることの意味」について、他者を通じて「自分探し」をするいちこと一緒に学べる稀有な作品だ。ちなみに本作は吉井怜と今宿麻美、そして作家の石田衣良というキャストで実写化もされている。気になる人は、ぜひコミックと合わせてチェックしてみてはいかがだろうか。

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この記事を書いた人

インタビュアー・ライター。主にエンタメ分野を中心に、著名人のインタビューやコラムを多数手がける。多感な時期に1990年代のサブカルチャーにドップリ浸り、いまだその余韻を引きずっている。

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