今、読むべき「戦争漫画」おすすめ 10選【2023年】 戦争とは?平和とは?読んで考えるきっかけをもらおう

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「戦争漫画」とは、軍事行動や戦闘を直接描いている漫画、もしくは戦争によって起こる人間の営みの変化を扱った漫画作品です。

戦争とは軍事力を用いて様々な政治目的を達成しようとする行為(行為説)、または用いた結果生じる国家間の対立状態である(状態説)。

「戦争」-Wikipedia

「戦争」はマンガや映画、ゲームの世界では大人気のテーマです。第3次世界大戦によって荒廃した未来社会での冒険活劇はみんな大好きですが、それはあくまで「起こりえないこと」が前提。民主主義と人権意識が世界を覆った現在、大国が一方的に軍事侵攻をしかけるなんてありえない、と。今ほど「戦争」をリアルに恐怖し、生活への影響を実感し続ける時代はこれまでなかったのではないでしょうか。

今回「戦争漫画」として選んだ作品はいずれも戦後世代の作家たちによるもの。戦争を直接経験していない作家が漫画としての面白さを成立させながら、いかに読者に戦争を追体験させるか?それぞれの工夫が迫力をもって訴えかけてきます。

目次

この世界の片隅に

丹念な描写を重ねることで当時の人々の生活と記憶をすくいあげる

『この世界の片隅に』(こうの史代/双葉社)

戦争をテーマに扱った作品として必ず取り上げられる『この世界の片隅に』。当時、一般市民がどのように生活を営み、それが戦争によってどのように変化していったかを描いています。広島の呉(くれ)を舞台に自然の美しさと命のきらめき、人々の創意工夫に満ちた生活をいきいきと描き、ずっと眺めていたくなるような不思議な没入感に満ちた一作です。

のんきで明るい主人公の「すず」が一生懸命に生き、大切なものを奪われてなお希望を取り戻すまでの物語です。ラスト、すずの心象風景が映し出された呉の街の美しさは圧巻。必読です。

※完結済み

『この世界の片隅に』を試し読みする

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─

直視できない辛さと痛みを想像させる表現

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(武田一義、平塚柾緒/白泉社)

太平洋戦争末期、南方の島々で筆舌に尽くしがたい絶望に置かれた兵士たちの状況が写実的な「普通の絵」で描かれた場合、私たちはその悲惨さを直視できないでしょう。『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』のデフォルメされた可愛らしい3頭身の人物と柔らかな描線をもってして、彼らの悲惨を何とか指の間から見ることができます。弾薬も食料もなく生きながら蠅にたかられ抗戦する彼らには「玉砕」すら希望に。部下に苦しみからの解放としての自死を命じ、自らもその準備をする大佐のモノローグがただただ恐ろしい。

「幼き頃より 覚悟ある武人の死は美しいものだと思っていた だが今 間近に来て知る 死というものは 実に汚らしく おぞましく 無残な悪臭を放つ―」

第23話「11月24日(前編)」(第2巻収録)

※完結済み

ペリリュー -楽園のゲルニカ-』を試し読みする

戦争は女の顔をしていない

人間としての尊厳を取り戻すために戦う女性たちの姿が神々しい

『戦争は女の顔をしていない』(原作・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、監修・速水螺旋人、作画・小梅けいと/KADOKAWA)

戦争は女の顔をしていない』は500人以上の従軍女性に聞き取りを行った証言集である原著を、小梅けいと先生がコミカライズしたルポルタージュ作品です。旧ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が様々な職種で参加しました。軍医、看護師はもちろん、狙撃兵、飛行士、高射砲兵といった直接武器を持つ兵士としても戦っていたのです(!)。戦場での兵士は機械として振舞う事を要求され、徹底して「顔」を奪われます。それは人格や個性、あやふやな心を意味しますが、極限状態に置かれてなお、人間としての尊厳を守ろうとする女性たちの姿に涙が出ます。1話ごとエピソードが完結するオムニバス形式の本作。どのお話も凄まじい体験ですが、繊細な線で描かれる美しい絵によるものか、不思議と読後感は爽やか。主人公達のモノローグに希望を拾うことできます。

「幸せって何か」と訊かれるんですか? 私はこう答えるの

殺された人ばっかりが横たわっている中に生きている人が見つかること・・・・

第4話「衛生指導員マリヤ・ペトローヴナ・スミルノワと看護婦アンナ・イワーノヴナ・ベリャイの話」(1巻収録)

※完結済み

『戦争は女の顔をしていない』を試し読みする

沈黙の艦隊

一隻の潜水艦が人類の意識を変え、核廃絶と平和への道を開く

日米で秘密裏に開発した最新鋭原子力潜水艦「シーバット」は試験航海において突如逃亡。艦長である海江田四郎は独立戦闘国家「やまと」を宣言する――あまりにも有名なあらすじなので本作を読んだことが無くてもこのくだりは知っているという方も多いでしょう。潜水艦が「国」として独立するという奇抜なアイデアに知的好奇心を刺激された船出は、最終的に人類社会を変える冒険に発展します。『沈黙の艦隊』の特徴は卓越した構成で描かれる潜水艦バトルですが、それは一面にすぎません。いま世界が抱える進行形の問題ー「どうすれば戦争を無くせるか?」という永遠とも思えるテーマを群像劇に落とし込み、その解決の道筋をも提示したところに海よりも深い面白さがあります。未読の方は作品の深淵なる世界にただちに急速潜航していただきたい。読了後に世界を見渡した時、再びこの作品が自分の中で始まるでしょう。

※完結済み

『沈黙の艦隊』を試し読みする

日本三國

局面を打開する発想と言葉に驚きと興奮がやまない

『日本三國』(松木いっか/小学館)

今からおよそ100年後、核戦争と震災、暴力革命によって解体された日本は「大和」「武凰」「聖夷」の三国に分かれ再び戦国時代に。文明は明治時代初期のレベルまで落ち、朽ちたビル群のなか人々はアスファルトの道路を馬で駆けます。本作の見どころは、ある事件がきっかけとなり「日本統一」を目指す三角青輝の言葉巧みな弁舌です。のちに奇才軍師と呼ばれる頭脳明晰主人公が言葉と「立ち回り」で武勲を立てていく様は『アルキメデスの大戦』の櫂直を彷彿とさせます。作中の軍師たちが戦国武将や孔子を引き合いに練り上げる戦術もまた面白い。繰り返される戦乱は人の愚かさの証左ですが、数百年の時を超えて継承される人の英知は素晴らしく、それもまた人間なのです。

日本三國』は現在連載休止中ですが、今秋より新編「平家追討編」が「マンガワン」および「裏サンデー」にて全話集中配信予定。今のうちに是非全巻チェックを!

『日本三國』を試し読みする

アルキメデスの大戦

どうしたら戦争を防ぐことができたか?壮大なシミュレーション

『アルキメデスの大戦』(三田紀房/講談社)

アルキメデスの大戦』の舞台は太平洋戦争前の日本。数学の天才、櫂 直(かい ただし)が日本海軍の主計少佐として着任。日本に戦争を起こさせないため、文字通り命がけの戦いが始まります。軍という巨大機構を相手に信念と論理で挑んでいく櫂の活躍に胸が熱くなる戦争歴史エンターテイメント大作です。主要キャラの多くが実在した人物であり、彼らの置かれた立場と行動が戦争を引き寄せていくわけですが、その葛藤や内面の心理描写は漫画ならでは(顔芸もすごい!)。

史実の裏側を描くストーリーは創作でありながら「本当にこんな事があったのでは?」と想像がやまない傑作!

※完結済み

『アルキメデスの大戦』を試し読みする

国境のエミーリャ

分割統治され共産化した日本-読むとその可能性に身震いする

『国境のエミーリャ』(池田邦彦、津久田重吾/小学館)

もし日本がポツダム宣言を受け入れず本土決戦を行っていたら?『国境のエミーリャ』はあり得たかもしれない歴史の「もしも」を描いた作品です。敗戦した日本は連合国によって分割占領され、東日本は「日本人民共和国」としてソ連の統治下に。東トウキョウの食堂で給仕として働く杉浦エミーリャは実は「脱出請負人」として西側へと人々を逃がす裏の顔を持っている・・・レトロな絵柄と時代背景が絶妙にマッチし、冬の共産国の冷たい空気の質感までもがリアルに伝わってきます。

日本が分割統治される架空戦後ものとして『5分後の世界』(村上龍)がまず頭に浮かびますが、漫画としては本作がその筆頭になる可能性大です。

『国境のエミーリャ』を試し読みする

幼女戦記

現代サラリーマンの視点から体験する熾烈なヨーロッパ戦線

『幼女戦記』(原作:カルロ・ゼン、キャラクター原案:篠月しのぶ、漫画:東條チカ/KADOKAWA)

幼女戦記』は異世界転生ものでありながら、硬派な本格架空戦記です。日本の社畜サラリーマンが20世紀初頭のヨーロッパに似た魔法世界に幼女として転生するところから物語はスタート。魔法が「再現可能な奇跡」として動力や火力として技術利用される異世界。恵まれた魔力と現代ビジネスマンとしての超効率的な価値観が見事にハマり、主人公は帝国軍の出世街道を驀進していきます。いま私たちが企業活動で使う経営戦略や用語は戦争で体系化された戦略論をモデルにしていますが、そのエキスパートであるビジネス社畜パーソンが100年前の軍人になったらめちゃくちゃ活躍してしまうという皮肉。過去の狂気の世界と現在は地続きである事に気づかされます。

軍服を着た幼女が空を飛んで戦うという異常事態に敬遠する向きも多いと思いますが、そんな人にこそ是非読んで欲しい!作品全体を貫く危うさと疾走感にしびれます。

『幼女戦記』を試し読みする

平和の国の島崎へ

元戦闘工作員は小さな平和を守るために手を汚して戦い続ける

『平和の国の島崎へ』(原作・濱田轟天、漫画・瀬下猛/講談社)

平和の国の島崎へ』は幼い頃に国際テロ組織に拉致された主人公・島崎が、元戦闘工作員としてテロ組織と戦うアクション譚です。組織から脱出し祖国日本で平和に暮らそうとする島崎に次々と襲いかかる刺客。街の人を守りながら敵をいかに払いのけるか、が目下の状況です。「組織を抜けた暗殺者が追手と戦う漫画」で、主人公の取る行動原理に「不殺」があります。『ザ・ファブル』しかり『るろうに剣心』しかり、正義に目覚めたかつてのダークヒーローは人を殺めないのです。が、島崎は容赦なく敵の命を奪う。平和から遠く離れた戦場で過ごしてきた彼は優先順位に従って瞬時に判断して行動する。それがかっこ良くもあり、また哀しくもあるのです。

今のところ個対個の近接戦が見どころですが、国際的なスケールで物語が展開していく匂いもあります。島崎の担う重すぎる業がどのように昇華されるのか?あるいはされないのか?いずれその意味が回収されるであろうタイトルも含めて期待大の作品です。

『平和の国の島崎へ』を試し読みする

満州アヘンスクワッド

アヘンに汚染された大日本帝国統治下の満州-おぞましいもの見たさにページをめくる手が止まらない

『満州アヘンスクワッド』(門馬司原作・鹿子画/講談社)

昭和12年(1937年)、身体は弱いものの博学で心優しい日方勇は満州国に派兵。ともにやってきた家族と貧しくも仲良く暮らしていましたが、母がペストを患い大金が必要になったことからアヘン密売に手を染めるようになります。植物学の知識を生かし異様な高純度のアヘンを生成できる勇は秘密結社・青幇(チンバオ)の頭領の娘である麗華(リーファ)と手を組み、裏社会での成り上がりを目指します。満州国のアヘンは政府が専売する国家事業。同時に裏社会では密売ビジネスが横行していました。かくして勇は関東軍と青幇を敵に回し危険な賭けに出ていくことに。実在した組織や人物も数多く登場し、史実とフィクションが交差する展開はテンポも良くグイグイと読ませます。また、阿片窟のツンと鼻をつく悪臭までも表現してしまう細密な描き込みもこの作品の主役のひとつでしょう。

満州アヘンスクワッド』は犯罪者集団が裏社会で成功を目指すクライムサスペンスであり、戦禍の貧しさに大切なものを奪われた者の復讐譚とも言えます。地獄を悪事で突破しようする勇のスクワッドはどこに着地するのか?満州国の解体は歴史として確定しているわけですが、史実をどのように取り込んでいくのかも含め、これからも目が離せません。

『満州アヘンスクワッド』を試し読みする

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いつもありがとうございます!LOMICOを日々全力で編集しています。

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