「ビギンズナイト」の“真実”―あの夜を補完する展開&前日譚が熱すぎる 『風都探偵』

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※一部ネタバレあり

この9月から令和仮面ライダー2作目となる『仮面ライダーセイバー』の放送がスタートしたが、まだまだ平成仮面ライダーの魅力はあせない。

なかでも『仮面ライダーW(ダブル)』の正統続編として、左翔太郎と弟子・フィリップ(二人で変身することで仮面ライダーWになる)の新たな活躍を描くコミック『風都探偵』は、随所に“らしさ”が散りばめられている。今回は単行本第6集の熱さを語りたい。

著:石ノ森章太郎, 著:三条陸, 著:佐藤まさき
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仮面ライダーWに欠かせないエピソードが時系列順に整理&要素追加で胸アツ度アップ

同巻にはWの“始まりの夜”が語られるエピソード「ビギンズナイト」編を収録。ちなみに、ビギンズナイトは平成ライダー10周年記念映画プロジェクト内の1作品『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』内の1シーンとして劇場公開されている。

劇場版では翔太郎の師匠・鳴海荘吉を吉川晃司が演じ、ハードボイルドを地で行くような渋さが光っていた。ただ映画では主人公である翔太郎が見た光景を思い出すように描かれており、所々の物語が断片的に見えてしまうのは致し方ない部分だった。その点、マンガ版は欠けたピースを違和感なく当てはめていく脚本が見事だ。

劇場版は作品の構成上、時系列がバラバラだったが、マンガ版は時系列順に整理。さらに翔太郎がいかにして荘吉の助手となったかについて、志願と拒否を繰り返していたこと、高校時代に荒れてしまったこと、助手として認められたことなど、さまざまな要素を補完することで厚みと深みを持たせている。

特に子ども時代の翔太郎が、自分が暮らす街「風都」のことを「この街はみんなのものだっ!」(6集P35)と啖呵を切り、それを耳にした荘吉が翔太郎の名を尋ねてから仮面ライダースカルに変身するシーン。「さあ…おまえの罪を……数えろ。」(6集P41)という、後に仮面ライダーWも使うこととなる決め台詞がグッとくる。さりげなく登場する刃さん(後に翔太郎と協力関係となる風都警察署の刑事)も見逃せない。

まさに“目からうろこ”の世界観を補強する演出が◎

またスカルに変身するための「ロストドライバー」のロストという言葉の意味合いも、劇場版のものからアレンジを効かせることで、そうだったのかと納得。しかも大々的にではなく、セリフ内のルビで見せてくるあたりが心憎い。

また、フィリップと共に変身する相棒には荘吉が想定されていたことが明かされるのだが、だからこそ荘吉にフィリップ救出をさせようとしたのだという、スマートかつスムーズな肉付けは“裏設定”好きにはたまらない。サイクロンスカル、ちょっと見てみたかった。

スマートといえば、どうして荘吉が撃たれたときにはスカルに変身していなかったのかについても、その理由を理路整然と補完。原因となったタブーに起きた現象を含め、変なご都合主義を真っ向から否定する演出は好感が持てる。

パズルが組み上がっていくような爽快さ!ファンだけでなく本編未見の人にもおすすめ

もちろんテレビや映画で描かれたビギンズナイトも素晴らしい。それぞれの名ゼリフや名シーンはマンガ版でもしっかりと受け継がれていて、それだけでも胸アツ。そこにテレビや映画では描かれていない“空白”の部分を作り込むことで新たな視点、意味合いを持たせたことに驚かされる。

このピースをはめていくような緻密さと爽快さは本編とも通じる。やはり脚本ほかテレビシリーズのスタッフが多く携わっているのは大きいと言える。

続編ということで『W』ファンには今さら言うことではないかもしれないが、もし未読という人がいれば、ビギンズナイトの新たな一面を目撃してほしい。荘吉や翔太郎、フィリップらとの“再会”に胸躍ってしまうことだろう。本編を見たことがない人でも、第6集で描かれるビギンズナイト編を読めば、世界観を楽しめるはず。風都の“風”を感じてみてほしい。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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