※一部ネタバレあり
主人公の花垣武道(タケミチ)が、中学時代に付き合った彼女・橘日向(ヒナタ)の死亡ニュースを目にするところから始まり、その数ページ後、駅のホームに転落してしまう……。
そんな衝撃的な幕開けで始まる『東京卍リベンジャーズ』は、平たく言えばヤンキーマンガなのだが、そこにタイムリープという要素をプラス。アングラな世界観やヤンキー特有の熱さ、さらにサスペンスタッチの展開まで楽しめ、王道のヤンキーものとは一線を画す。
時間の概念が謎を多面的に魅せる!オチまでの流れも抜群
本作はタイムリープものなので、現在と過去、2つの時間軸でドラマが進行していくが、その仕掛け含めストーリー構成が実に秀逸だ。
例えば主人公のタケミチのタイムリープ能力。実際にタケミチが時間移動し、協力者である橘直人(ナオト)との握手がタイムリープの“トリガー”になることや、「12年前の同じ日」に戻ること、現在と過去では同じだけの時間が流れることなどが解明される。
しかも単に説明するのではなく、そこにヒナタや佐野万次郎(マイキー)との出合いエピソードを絡め、自然に読者に納得させる手際のよさだ。
大きさだけでなく深みも感じさせる、インパクトある演出
さらに冒頭でタケミチを線路に突き落とした犯人が、第8話(第2巻収録)でいきなり“自白”を始めたのには驚いた。主人公に関する大きな謎であろうと思われたことを一瞬にして回収。しかもその人物が、タケミチが過去に戻れるのではと疑う発言をするなど、想像の斜め上をいく展開とテンポは実に痛快だ。
その直後の衝撃もすさまじく、タケミチの「みんな助けたいんだ」(第2巻P62)という言葉に胸が熱い……。こうしたタケミチはじめ、各キャラクターの人物像もまた、本作を魅力的に彩る要素の一つだろう。
しかも、過去での行動が現在に影響するのはもちろん、結果を変えようと過去で行動することが予期せぬ事態を招いてしまう。そんなタイムリープものならではの物語も、かなりドラマチックで飽きさせない。第4巻の、見事ヒナタ救出に成功したのもつかの間……という脚本は切なすぎるが、この物語がどう帰結するのか、大いに興味をかき立てられる。
主人公目線で一喜一憂しながら楽しめる。ヤンキーものだと敬遠しないでほしい
このように、ヤンキーものでありながらSFサスペンスの要素を兼ね備えた本作。読者はタケミチの視点でストーリーを見るので、過去と現在のどちらに行ったときも「何がどうなった!?」という感覚をタケミチと共有できるのもいい。
例えば第2話でタイムリープした際は、いきなり衆人環視の中でケンカをけしかけられるなど、体感型の構成がスリリングで面白い。
ヒナタが何度も狙われる理由や、最大のミッションに関係する人物の一人、マイキーこと佐野万次郎の人物像の違いなど、タイムリープを駆使した伏線が至るところに散りばめられている。
変えた先に何が待っているのか。変えることで生まれる新たな謎の数々もある。そして、それらを回収するときは鮮やかに魅せてくれる。不良マンガと敬遠せず、手に取ってみてほしい。