『無能なナナ』”無能”ではない超S級キャラが怖すぎる残虐・過酷な殺戮劇

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無能なナナ
『無能なナナ』るーすぼーい原作・古屋庵作画/スクウェア・エニックス

作品タイトルの通り“無能な”主人公・ナナと、100%相反する“有能な”能力者”たちとの殺戮バトルをシュールに描く『無能なナナ』。可憐そのものな超絶S級美少女キャラクター・柊ナナが、実は……という読者への裏切りから、物語はスタートする。

目次

ネガティブ&タブー要素が満載で読み手を選ぶ作品

この『無能なナナ』という作品は、裏切り・騙しあい・嘘など、通常はタブー視されそうなネガティブ要素に満ち、その結果がすべて残虐な殺人へと繋がっていく。

思わず目をそむけたくなるようなギミックの連続に、もう読みたくない、読めば読むほど気分が悪くなる……などと感じる方も少なくなく、かなりの問題作ともいえそうだ。

無能能力者でありながらとある目的のために残虐な殺人を繰り返す主人公・ナナは、人当たりがよく、優しく素敵で、ちょっと天然なところも憎めない、完璧な人間性を持つ美少女として描かれる。ここまで真正面からギャップを強調してくる作品も珍しく、それがまた、作品の大きな軸ともなっている。

こうした“ネガ”“逆”“ギャップ”といった要素に抵抗感がない、むしろ価値を見出させる方なら、かなり面白く読み進められるはず。が、同時に、読み手を選ぶ作品でもあるわけで……。

著:るーすぼーい, 著:古屋庵
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「面白い」より「怖い」と思えたなら正解?

ちなみに、作品タイトルの“無能な”を文字通り受け取ると、物語に入っていく基本姿勢がズレてしまう。その時点で既に、読者を裏切り、騙しているといってしまえば、それまでなのだけれど。

ここでいう“無能な”は、“(特別な)能力を持たない”という意味。つまり、フツーの人間。ヒロインのナナは、当たり前に読者の近くにいるかもしれない、フツーの女の子なのだ。

離島で暮らす(フツーの人間にはない)異能力者集団の学校に放り込まれた“唯一の無能力者”ナナが、何を考え、何を目的に、次々と同級生を殺害していくのか。まずはそこから、物語の謎が始まっていく。

学園内でのナナは、前述したように可憐でちょっと天然な超美少女キャラとして日々を過ごす。が、折々に垣間見せる頭の回転は、異様なほど速い。IQ:150や200といわれても納得しそうな状況判断や先読み力、的確な行動能力に長けた様は、普段の姿からは想像できない冷酷さ・残虐さとも重なり、読む者に強烈な印象を植え付ける。

そんなナナから感じられるギャップは、イコール“怖さ”でもある。読み始めて「面白い」より「怖いな」と思えたなら、正しく作品に入り込めている証だろう。

ヒロインの過去に秘められた壮絶な人間ドラマ

ナナの素顔がわかってくると、物語にいっそう深みを感じられるはず。読み進むにつれ、このギャップにも慣れていき美少女による殺戮劇というインパクトは薄れ始める。だが同時に、新たな興味が芽生え始め……。この優れたシリーズ構成も、作品の魅力といえそうだ。冷静になれば、いつの間にか残虐な殺戮劇に慣れてしまった、自分自身への怖さを実感するかもしれない……。

多くの読者が、とある時点で作品を評価し、さらに読み進めるかどうかを判断するだろう。敢えて「何巻で」とは触れないが、その人ごとに、判断基準となるであろうイベントがいくつか単行本中には用意されている。

しかし……。「あ。もうこの作品は駄目だ苦手だ」と断念するような出来事が、実はそれもまた、フェイクや裏切りだったりするから怖い。

その先に見えてくるのは、主人公ナナの秘められた過去。柊ナナという人間がいかにしてつくられたのか、思わず目をそむけたくなるような壮絶な過去が語られる。それを知ると、物語を見る目が180度変わってしまうのだ。

物語序盤を彩るサブヒロイン的な同級生・犬飼ミチルとの他愛もない日々、ともすれば読み飛ばしがちなパートにも、実はナナの秘められた素顔が隠されている。彼女の過去を意識して二周目を読み返せば、物語の見え方が変わってくるに違いない。

と同時に、ナナの過去を利用し、彼女を残虐な殺戮マシーンへと仕上げた黒幕の存在も浮かび上がる。実はそこからが物語の本番ともいえるのだ。コミックの序盤で判断せず、少なくとも5〜6巻までは読み続けることをお勧めしたい。

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監督:石平信司, 出演:大久保瑠美, 下野 紘, 中村悠一, 中原麻衣, 増田俊樹
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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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