現代に在る忍者をリアリティをもって描いた、ユニークな異色作——『アンダーニンジャ』

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『アンダーニンジャ』(7)
『アンダーニンジャ』(7)(花沢健吾/講談社)

※ややネタバレあり

目次

日本人の浪漫ともいえる忍者が実存する世界線にハマる

忍術を用いて活動を行い、諸外国においても高い人気を誇る中世日本の諜報活動員「忍者」。世を忍び暗躍する彼らの存在は、我々日本人にとってまさに浪漫である。多くの人々を魅了する、そんな忍者が現世になお存在していたら……。

『アンダーニンジャ』は夢あふれる“もしも”の世界が楽しめる作品だ。類のない独創的な世界観に圧倒されること間違いなし。

世の中、目に見えるものが全てではない。無関係だからこそ気付けないだけであって、今もどこかに忍者はいるのかもしれない。非現実的でありながら、本作にはそう思わせるだけの不思議な説得力がある。

中世〜近世とは異なり科学技術が発展し、豊かな生活環境が造出された現代において、忍者はいかにして“忍務(任務)”を遂行するのか。忍術や武器はどのように進化し、どんな組織を作っているのか。想像するだけで心が躍る、さまざまなファンタジーに対するある種の答えがあるのである。まさに浪漫の塊!

舞台は、現代。忍者が活動を続ける日本。

太平洋戦争終結後、GHQによって全ての忍者組織が解体され、消滅した。しかし、戦後も忍者は秘密裏に活動しており、その数は20万人といわれる。

主人公・雲隠九郎は伝説とされる雲隠一族で、末端である“下忍”の一人。ニート同然の生活をしていたが、ある時講談高校に潜入する忍務を受ける。転入までの間、事件を起こす忍者志望の外国人の処理も命じられた。

外国人処理の“忍務”を遂行した九郎は、“下忍”の仲間と共にいよいよ潜入を開始。その“忍務”は、九郎の属する組織「忍(NIN)」と敵対し、厚生労働省の「援護工作二課」と繋がりがあるとされ、国家崩壊を目論む組織「UN(アンダーニンジャ)」について探ることだった。2つの組織の戦いの幕が切って下ろされる。

まだ謎多き九郎、雲隠一族、「忍」、「UN」の正体とは——。

著:花沢健吾
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“どこにでもいてどこにもいない”、日常に溶け込む現代の忍者

往年の忍者の活躍や成長を描いた他作品とは異なり、現代社会に生きる忍者の日常を描いているという点が大変興味深い。

本作における忍者は忍び装束を身に付けることなく、世間に溶け込む至って普通の服装をしている。忍者はどこにでもいるが、誰も気付けない。日本刀はそのままだが、手裏剣を含む多彩な武器は高度な技術によって進化を遂げている。“現代を生きる忍者”として理に適っているように思える。

ただ、“忍語”の使用や“五色米”を使った暗号など、歴史史料に残る本格的な忍術も登場するため、リアリティはしっかりとある。不可思議な世界であるのに、どこか現実味があるのだから面白い。日々通う学校や会社で出会う人、交差点や道ですれ違う人の中に、忍者はいるのかもしれないと思わせてくれる。

九郎の住まうアパートの住民や九郎に関わる人々は誰もが人間臭く、その日常はとても平和だ。昼からビールを飲み、夜の街で働く若い女性、就職が決まったばかりの中年男性、下着泥棒を目論む高校生、落武者風の髪型の衰えた小説家……。彼らの生活および言葉はとてものどかで、たまに哀愁を帯びる。だからこそリアルで、親しみを感じる。

奇怪な設定や上質なストーリーもさることながら、どこにでもいそうな登場人物とそんな彼らの日常描写こそが秀逸なのである。

忍者たちは変わらない日常の中で暗躍する。一般人にはこれといった実害はなく、いつもと同じ明日が来る。だから静かに始まった争いにも気付かない。忍者同士の争いはこれからどう顕現し、一般人にどのような被害をもたらすのか。物語はまだまだ、ここから。今後の展開に期待したい。

忍者の日常が浮かび上がる、不思議とリアルな忍者漫画

『アンダーニンジャ』は、花沢健吾氏による、主人公の忍者・雲隠九郎の日々を描いたアクション漫画である。

「週刊ヤングマガジン」(講談社)にて2018年より連載中、既刊6巻、2022年3月4日に7巻が発売。2021年9月には、ヤングマガジン編集部公式twitterにてテレビアニメ化が発表された。

細部まで丁寧に描き込まれた背景や日常風景、影までしっかり再現された写実的な人物描写は実に素晴らしく、平凡なシーンでも目が離せない。また、忍者の動きにはひっそりした躍動感がある。決して派手ではないが、静かで素早いアクションシーンに忍者らしさがにじんでおり、とても良い。特に、​​アイテム「摩利支天」を身にまとうことで、忍者が透明化するシーンは必見だ。

展開に停滞はないが、登場人物や設定にはまだ多くの謎がある。一見人並みな主人公の実態も気になるところだ。徐々に明かされるであろうこれらの謎を思うと、とにかく続きが待ち遠しい。

「忍者はいるよ!」と声を大にして言える“もしも”の世界を体験しよう。

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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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