現実では罪になる願いを抱く人は、漫画と妄想で楽しく叶えよう!
現代はネット社会である。SNSを通せば、誰もが気軽に匿名で発言できる。多様性が広く認められ始め、差別にもずいぶん厳しくなった。
発言がたやすくなった反面、何気ない一言で炎上してしまうことも少なくない。自由な発言には、炎上に対するある程度の覚悟が必要である。現実世界だけでなく、仮想世界においても人の目を気にする人は多くいることだろう。
特殊な思考や性癖を持つ人々にとっては生き辛い世の中かもしれない。そんな生き辛さを抱える人にこそ、頭を空っぽにして読んでほしい作品がある。『男子高校生とふれあう方法』は、DKO(男子高校生おんな)と呼ばれる、何としても男子高校生と触れ合いたいと願う女性の姿を描いたギャグ漫画だ。
実際にこのような女性がいれば、すぐに警察に通報されてしまうことだろう。だが、これはフィクションである。不謹慎などと言う言葉は忘れ、男子高校生と触れ合うために全力を尽くす女性の姿を楽しんでもらいたい。何もかも馬鹿らしくなってクスリと笑え、本作を読んでいる間はあらゆるストレスから解放されるはずだ。
主人公は、DKO(男子高校生女)と呼ばれる謎の女。男子高校生と触れ合うためだけに尽力し、奇妙奇天烈な行動を繰り返す。異常だけれど、読めばほんのり温かい。DKOは妖怪か、都市伝説か……。
ギャグセンスに満ちた4コマ漫画も収録されている。
「男子高校生と触れ合いたい」だけという、DKOの一貫性は天晴
現実ではやりたいことを好きに実行するのは難しい。中にはDKOのように、よからぬことを妄想する人もいるだろう。そんな人の多くは、それが悪であり、罪であることをよく理解している。だからこそ、現実で願いを叶えることはしない。常識人の彼らにとって、漫画は時に欲求を満たす手段になる。冗談の通じる常識人こそ、創作は癒しの手段足りえる。
男子高校生と触れ合うため、時にサッカーボールを模した髪型で草むらに潜み、時にペッパーくんに成り代わり、時に甲子園の土に埋まるDKO。その異次元の日常風景への溶け込み方は、シュールを通り越してコントだ。
行動は時に優しく、やり遂げた彼女の表情は常に晴れ晴れとしている。独自性の高い画は美しく、ときめく女性や震え上がる男子高校生の表情も秀逸だ。ギャグセンスも高く、何と言っても絶妙な発想が素晴らしい。リアリティなどどこかへ投げ捨て、何も考えずに刺激的なDKOの日常を体験してほしい。笑えるのはもちろん、言葉では言い表せない不思議な気持ちになること請け合い。
DKOが男子高校生の行動をよく理解していることから、研究熱心もしくは大変なベテランであることが想像できるのも面白い。男子高校生であればルックスや知性を厭わないところもまた良い。行動には移さずとも、DKO的視点で世界を眺めてみるのも楽しいかもしれない。
笑いを生む発想力に脱帽! ただ笑える時間を過ごそう
『男子高校生とふれあう方法』は、地球のお魚ぽんちゃん氏による、男子高校生と触れ合うために奮闘する女性の姿をコミカルに描いたギャグ漫画である。Twitterで人気を集め、2017〜19年に漫画雑誌「漫画アクション」にて連載、完結済み。続刊に『男子高校生とふれあう方法 もっと!』(双葉社)、『男子高校生とふれあう方法 フォーエバー』(双葉社)がある。
箸休めにふさわしい、気負いなく読める個性溢れる作品。ホラー要素さえ感じる作者の発想力には度肝を抜かれる。もしも男子高校生の乗る自転車や使うギターになれたなら、座るイスの内部に入れたなら……。馬鹿馬鹿しくはあるが、そんなことを考えながら過ごす毎日は何だか楽しそうではある。“推し”がいる人は、登場する男子高校生を全て“推し”に変換してみても楽しめるかもしれない。
毎日がつまらないと感じる人にとって、妄想は生きる活力になる。ただ「つまらない」と思って時間を過ごすよりは、内容はどうあれ好きなことや願いを妄想してみる方が良いはずだ。妄想は正義。本作を読みながら妄想を膨らませ、溜まりに溜まった鬱憤を晴らそう。