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“ひとり旅”の魅力を肩ひじ張らずに伝える紀行漫画『ぼっち旅~人見知りマンガ家のときめき絶景スケッチ~』

『ぼっち旅 ~人見知りマンガ家のときめき絶景スケッチ~』(鳶田ハジメ/フレックスコミックス)

人見知りの“ぼっち漫画家”が、北から南まで日本各地を旅して癒される紀行漫画『ぼっち旅  ~人見知りマンガ家のときめき絶景スケッチ~』。気負いがないスタイルで“旅の魅力”を再発見させてくれる視点や、基本画力の高さなど、企画系作品に欠けがちなポイントがしっかりしている点も魅力です。

自分で決めた行動だから成功も失敗もいい経験に

「『ひとり旅』――ひとりきりででどう過ごせばいいか分からないとか 寂しくないの? と聞かれることがありますが――最高です」

「なぜなら一切 人に気を使わなくていいから」

そう、そうなんです。そんな言葉から始まる『ぼっち旅 ~人見知りマンガ家のときめき絶景スケッチ~』では、作者の想いが、全国各地の旅に載せて綴られます。作者いわく「自分  対 旅」のテーマとして。

作者の言葉を借りれば、日常を離れた場所や時間の中で、新たな自分を発見したり、見つめ直したりできるところが、ひとり旅のいいところ。一方で、そうしたコンセプトを大上段に構え、説教臭くなることは一切なく。むしろ、ドジっ子なエピソードに「しょーもなー」と笑顔で読み進められる、肩ひじ張らないフレンドリーさが魅力だったりも。

どこかトボけたキャラの持ち主(=作者)が、時に失敗しながら旅を続ける面白さが、そこにはあります。親しみやすく、どこか応援したくなるような。「全部自分で決めた行動なので、成功も失敗もいい経験になる」という作者の言葉が、そのまま作風にもなっているわけです。

ひとり旅には一歩踏み出す勇気も必要?

そんな作者は、中学時代に闇落ちするなど、20歳代半ばまでは超インドア人間だったとか。アクティブな旅とは無縁だった作者を、闇落ちから救い出してくれたのがひとり旅……というエピソードも、興味深いものがあります。

作者がひとり旅を始めるまでの葛藤も、丁寧に、でも重くなり過ぎない軽妙なタッチで描かれます。“グループ旅”しか経験がないフツーの人にとって、ひとり旅とはこれほどハードルが高いものだったのですね……。

逆にいえば、そうした過程までしっかり描かれることで、ひとり旅が未体験な人にもバイブル的な作品となるのでは。読めば「旅に出たい」と思うことは確かなので、あとは一歩踏み出す、ほんのちょっとの勇気。そこで、軽~く背中を押してくれる作品なのかもしれません。

考えてみれば、ひとり旅派の自分も、いざ出かけようとすると何か言い訳を見つけ、出発を延期する(あるいは旅自体を中止してしまう)ことが少なくありません。単に面倒くさがりなだけともいえますが(苦笑)、やはり旅立ちには、ちょっとした勇気が必要なのです。

頑張って一歩踏み出した作者は、まずは近場からと、千葉県の房総(鴨川)へと旅に出ます。が、それは混迷の始まりで、逆に自分を見失ってしまう結果に……。誰にも頼らないひとり旅は、そうしたリスクも兼ね備えているわけで。まさに、旅とは人生の縮図なのですね。

旅好きも納得な“正しい旅漫画”

見失った自分を取り戻すため、作者は再び旅に出ます。行き先は、北海道。最北の地を巡った作者は、稚内市にあるノシャップ岬で美しすぎる夕陽に目を奪われ、言葉を失います。ノシャップ岬は、夕陽の美しさで知られます。あの夕陽は、誰もが黙って見つめてしまうことでしょう。同様に言葉を失った経験がある自分には、作者の想いが痛いほどよくわかります……。

(劇中の)作者が見せる“言葉を失った”表情は、その後も各地の旅で見受けられます。さまざまな角度から表現されるコマ割りには、作者の確かな画力と表現力も感じられるわけで。

ちょっとデフォルメされたタッチも親しみやすい、スケッチ画のような旅情景&風景。服装からバッグやスマホに至るまで、さまざまな“ギア”類の丁寧な作画。鉄道やバスなど乗り物好きが見ても頷ける、交通手段の表現。いずれも確かな画力に裏打ちされたもので、現地の空気感が直に伝わってくる演出も秀逸です。

また、旅の大まかな費用がメモされている点にも好感が。“貧乏旅”を演出する企画モノや、費用を考えない“理想旅”ばかり描くメディアとは異なる、実際に旅をする人向けの解説書としても有用ですよ。

物語では純粋なひとり旅に加え、旅先で随時集合・解散を繰り返す“気ままで互いを邪魔しない”ふたり旅や、現地でのツアー参加の様子なども描かれます。そうした旅でも新たな出会いが生まれ、旅の魅力が広がり……。頑なな“ひとり旅概念”ではなく、臨機応変で自由かつ気ままな旅の楽しさを伝えてくれる。その意味でも、本作品は旅好きにとっての“正しい旅漫画”なのではないでしょうか。

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