良くも悪くもクセが強い“のんびりトコトコ”な旅バイク漫画『げんつき』

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げんつき
『げんつき』アキヨシカズタカ/KADOKAWA

女子高の原付部に所属するJKたちが、51cc〜125ccの小型バイク・原付二種に乗り、身近な光景を自分たちなりの“旅”へと昇華させていく物語『げんつき』。クセも強くマニアックな作品ながら、コロナ禍の影響や、昨今の原付二種ブームにより、こうした旅バイク作品が改めて見直されている点も見逃せない。

著:アキヨシ カズタカ
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目次

風を感じさせない稀有なバイク漫画!?

まず、最初に。この作品を“バイク漫画”の範疇で考えると、少なからず後悔するのでご注意を。

いわゆる“バイク漫画”のような、スピードを出して疾走し、「俺は風になるんだ!」的な描写は一切ありません。「風と一体になって……」とか、「風を切って走る!」などといった概念もナシ。要は、“風”を感じさせない稀有なバイク漫画だとも?

なので、爆走・疾走ではない、のんびりトコトコ走る=“げんつきの旅”を理解している方、好きな方でなければ、最後まで読み続けられないかもしれません。

ちなみに作者・アキヨシカズタカ氏は、日本のバイク史を築いてきたホンダ・スーパーカブのライバル車、ヤマハ・メイト(1965〜2008年)のオーナー。レストアした旧型メイトを愛車に、自ら各地をお散歩ツーリングする日常が、そのまま漫画化された作品だともいえそうです。

この『げんつき』に登場する舞台も、大半は氏が在住していた神奈川県西部・相模原市を中心とした地域。同エリアに馴染みが深い方は、それだけでも親近感を抱くことでしょう。(連載終了後、氏は故郷の大分県に移住しています)

特にいい話でもなく……何も起こらないけれど楽しい“げんつき”旅

物語の主人公は、相模原女子高(架空)で原付部に所属するJK2人組。放課後になると125ccの“げんつき”に跨り、ちょっと遠目のご近所へ小旅行を繰り広げる彼女たちが、ひなびた温泉や不思議な地名、気づなかった歴史スポットなど、近場すぎて知らなかった土地の魅力に触れていく物語です。

などと聞けば、ちょっと“いい話”を期待するかもしれませんが、それはそれで肩透かしを食らう可能性も。特に“いい話”でもなく、“いい場所”でもないような物語が、淡々と進行していくわけで。

「こんな何もない(何も起こらない)プチ旅が楽しいJKなんて……いるの?」と思えば、その時点でアウト。読者を引き付けたり、最後まで楽しませようなどというサービス精神は、ほぼないといっていい?(苦笑) ある意味、読み手を選ぶ作品かもしれません。

ただ、作品に描かれる“のんびり波長”が肌に合う方なら、かなり楽しめるはず。類似作品も見当たらないので、できればWeb上の立ち読みなどで雰囲気を知ってから、読まれることをお勧めします。

すぐに壊れそうな儚い世界観を描く独自の作風

強いクセ・アクは作画にも表れていて、全体に線が細い、ともすれば安直に感じられるかもしれないキャラクターデザインが、ダメな方はダメでしょう。また、現代のコミックには珍しいほど、トーンの使用率が少ないことも特徴に。「これはスクリーントーンを貼り忘れた、作画途上の原画?」かと思ってしまうほど。読み手によっては画力不足とも判断されかねない、白く・薄い描画なのです。

いっぽう、こうした作画には、日常の光景を非日常な旅世界へと映し変える効果も。一般的な描き方では濃厚すぎて、壊れてしまいかねないほど儚い世界観が、氏独自のタッチ・画風だからこそ生き生きと描き出される。そんな一面に気づけば、作品全体への見方が180度変わってくるかもしれません。

ただ、物語全般にゆる〜く漂う“百合感”には疑問が……。意図が読み取れない百合要素に、正直、違和感を覚える一面も。このあたりは、自分の読み込み度が浅いだけかもしれませんが……。

いずれにせよ、自分の力で、自分なりの、自分だけの“小さな旅”を見つけてみたい…などと思われている方には、良くも悪くも恰好のスパイスとなることでしょう。

あまりに独特な世界観なので、ここで紹介するのもどうかと思った次第ですが、敢えて「好きな方には…」とお勧めしておきます。例えば某公共放送の番組『小さな旅』が嫌いでない方なら、何となく心の琴線に触れてくれる…かも?

著:アキヨシ カズタカ
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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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