気になっていた本を発見! だが……まだその時ではない――“新古書ファイター”の日常とは
比較的新しい本が多く流れ、均一棚へのシステム的な値下げも頻繁に行われる――それが大手チェーン「ブックエフ」を代表とする、新しいスタイルの古書店「新古書店」である。花粉症対策のサングラスがトレードマークの真吾は、そんな新古書店に足繫く通いお得な本を買うことに執念を燃やす“新古書ファイター”だ。100円棚の散策に「せどり」との攻防、目をつけていた本を買われる絶望……はたして、楽しく可笑しい古本探しの日常とは。
“きっかけ”や“助け”になる「新古書店」――古本探しにおける“あるある”
近年もっともその店名を印象づけたものといえば、やはりかの天才子役による「本ねぇじゃん」のセリフが話題となった、あのTVCMになるのだろうか。新古書店といえばまず名前が挙がる、1990年創業の「ブックオフ」だ。本やマンガに親しむ身であれば(見方や付き合い方にはさまざまあろうが)“きっかけ”や“助け”として利用したことがある、という声は少なくないはず。『新古書ファイター真吾』は、そんな「ブックオフ」ならぬ「ブックエフ」をはじめとした新古書店での、古本探しにおける“あるある”が共感を誘うマンガだ。
新古書店といえば、入店後すぐに足を向けやすい、もっとも目を引く棚にはアニメ化や実写化などのメディアミックスを果たした本、刊行されて間もない話題の本あたりが並びがち。しかし“ならでは”の醍醐味は、100円棚をはじめとする均一棚にある、と書いても異論は出ないはず。当然ながら、“新古書ファイター”真吾が主戦場とするのもこの100円棚だ。
新古書店で目当てになりがちな“ちょっと気になっていた本”について、真吾の目線を通して描かれる「100円棚に移動するのを待つ」「“せどり”の存在で棚が見づらい」「値札剝がしまでが大事」「スルーして次に見たら買われている」「できる限り状態の良いものを探して買う」あたりはまさに頻出の“あるある”だろう。個人的には、「それなりの中古価格で買った本を、後から100円棚で発見し絶望する」あたりに特に共感し、笑ってしまった。そのほかの「古本教訓」にも、“新古書ファイター”には身に覚えのあるものばかりが並ぶ。
この本を“あるある”と読めるのは決して悪くない――新古書店との付き合い方
(件の「ブックオフ」ではないものの)新古書店チェーン、新刊書店チェーンと経て出版社でも勤めた経験がある身としては、新古書店については「本やマンガはできる限り新刊書店で買うのを前提としたうえで、選択肢のひとつとして上手く利用していければ」くらいの距離感で落ち着いている。とはいえ、新古書店のああいった流通・陳列、空間だからこそ生まれる“きっかけ”や“助け”には大いに世話になってきただけに、新古書店ならではの「本との出会い」や「読書文化」もあると考える。見方・付き合い方にはさまざまある新古書店だが、この本を“あるある”と読めるのは決して悪くない。そう思わせる一作だ。