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世界がちょっと輝いて、どこまでも長閑で優しい気持ちになれる。ニューヒーローの平凡な物語——『町田くんの世界』

町田くんの世界
『町田くんの世界』(安藤ゆき/集英社)

※ややネタバレあり

内面の美しさから人々に愛される町田くんの、心温まる毎日

“人は見た目”と言われることが多々あるが、それは正しくもあり、間違いでもある。見た目とはなにも顔の造形の美しさだけを指すものではなく、身なりや着こなしから滲む清潔感を含む。もちろん清潔感は非常に重要だ。

だが、世の中には“人たらし”と称される、自然と多くの人々に愛される人間がいる。その思考や気配り、聞き上手などの性質によってあっという間に人々を魅了してしまうのである。なろうと思ってなれるものではないから、そういった特性を持つ人は実に羨ましいことである。一体どんな環境で育ち、どんな考え方をすればそのような人間になれるのか。“愛される人間”とは、そうなるには、それらの答えを見つけることができる、実にハッピーな漫画がある。

『町田くんの世界』は、勉強も運動も駄目、なのに周囲の人々から愛される平凡な高校生・町田一(はじめ)の日常を描いた、優しい気持ちで満たされる少女漫画。

主人公はどれをとっても凡庸で、とりわけ事件が起きることもない。それでも、読み進めるうちにじわじわと心が温まり、幸せな読後感を味わうことができる。

町田一は、平均的な容姿で、勉強も運動もできない。しかし、本人こそ気付いていないが、よく周りを見て、気付き、人を愛し愛される天然の“人たらし”だった。そんな町田くんの、人並みだけどどこか温かい毎日のお話。

町田くんは日々生活する中で、自らの言動によってクラスメートで人間嫌いの猪原や、猪原に恋する西野の心を溶かしていく。

キラリ輝く、「人が好き」というピュアな想いが表れた町田くんの言動

弟が生まれたり、優しくしたことで隣のクラスの高嶋に好かれたり、初恋である幼稚園教員の結婚写真の相手を務めたり、ものもらいになって世界の見方が変わったり……と、町田くんはちょっぴり刺激的な日々を送っている。

「人が好き」とはどういうことか、その全てが町田くんの言動に表現されている。よく人の話を聞き、受け容れ、アドバイスを送る。そこには愛があり、自然と相手の荒んだ心を包み込んでしまう。

人の心を動かすのは特別な言葉ではなく、相手に心を配ることで溢れ出す想いだ。真正面から向き合ってくれる人には誰もが心を開いてしまうものである。町田くんの日常には、素敵な人間になるためのヒントが満ちている。

町田くんは、猪原と仲良くなるうち彼女に好かれている事実を知る。いつも他人の恋愛に干渉したり、人や自分の気持ちに無頓着なモデルで同級生の氷室を変えたり、中学時代の同級生でかつて人気者だった青池に自信を取り戻させたり、魔女と噂される近所の老女に元気を与えたり、教育実習生の三輪に自信を与えたり……と、「人が好き」という想いのままに行動を起こしていた町田くんだが、彼自身が次第に“愛する”ということや“恋”というものを知っていくのだ。

「自分にはいいところがない」

と感じている町田くんは、猪原に恋することを恐れていた。それでも、触れ合う度に

「猪原に好きになってもらいたい」

「心がほしい」

と考えるようになる。町田くんが勘案の末ついに想いを伝えたことで2人は両想いとなり、晴れて恋人となった。そうして町田くんの日々は続く――。

どこか煌めきのある優しい世界観、ほんのり刺激のあるストーリー、流れをよく表したイラスト、ページを満たす温かなセリフの数々。既存の少女漫画とは一味違う、愛の溢れるユーモラスな秀作だ。

町田くんの人間愛に触れ、内面を磨く価値を知り、人々を愛し、また愛される人間になるための足がかりにしてみてほしい。

読むだけで心穏やかになり、荒れた心さえ凪いでしまう特効薬漫画

『町田くんの世界』は、一見どこにでもいる普通の男子高生だけれど、何者にも代え難い「人が好き」という特性を持った町田くんの日常を描いた学園漫画である。安藤ゆき氏により、「別冊マーガレット」にて2015〜18年まで連載された。2019年には、石井裕也監督による実写映画化を果たした。

既存のラブコメとは異なる、読むだけでほっこりする魅惑の物語。外見や能力ではなく、内面の素晴らしさが際立った男子高生の毎日。人を愛する分だけ、周りからも愛されるのだろうと実感する。町田くんを真似ずとも、彼のような心持ちで生きてみれば、いつか自分も“人たらし”に近付けるかもしれない。「人が好き」だからこそ、優しいだけでなく時に厳しくもある町田くんの言葉は、きっと読者の皆さんの心にも響くはず。

愛と優しさに満ちた町田くんの世界を体感して、穏やかな心を手に入れよう。

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