『コーポ・ア・コーポ』に学ぶ、訳アリ同士ゆる~く連帯しながらしぶとく生きる術

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『コーポ・ア・コーポ』(岩浪れんじ/ジーオーティー)

昭和レトロな雰囲気を醸し出す大阪の安アパート「コーポ」に住む、なんともけったいな住人たちの日々の暮らしを、それぞれの視点からオムニバス形式で描いた『コーポ・ア・コーポ』。「いろいろあるけど、まぁええか」としぶとく生きる、彼らの生活をのぞき見しているかのような気分になれるコミックだ。2023年11月17日(金)より、馬場ふみか主演で実写映画が公開されることもあり、ひと足早く本作の魅力を紹介したい。

目次

舞台は、訳アリ住人たちが暮らす四畳半風呂無しアパート「コーポ」

主な登場人物は、年齢も性別もまちまちで訳アリだが、どこか憎めない「コーポ」の住人たち。金髪にスカジャン姿がトレードマークの20代女性・辰巳ユリ(202号室)と、バッチリ決めたスーツ姿で女を口説いては貢がせる、ヒモ稼業の30代男性・中条紘(101号室)。建設現場で日雇い労働者として働き、女にモテるが、カッとなるとすぐ手が出る20代男性・石田鉄平(201号室)、2階の和室をカーテンで仕切っただけの、“即席ストリップ小屋”の支配人を気取る、60代男性・宮地友三(103号室)。「わかばとキャスター交換しよう~」と、顔を合わせるたび住人にタバコの交換を持ちかける「タバコのおばちゃん」こと、40代女性・恵美子(102号室)と、誰が飼い主か判別がつかない、座布団のように丸々とした猫……。

ある日、コーポで自殺を図った中年男性・山口(204号室)を発見した宮地が、「山口さん、死んだで」と、204号室のふたつ隣の部屋に暮らすユリのもとへと知らせに来て、「えっ。ホンマ」と言いながら、ユリが慌てて部屋を飛び出し、首吊り状態の山口を呆然と見上げる。一見、「シリアスなサスペンス漫画か?」と思わされるような緊迫した場面から幕を開ける本作だが、そんな大事件にもかかわらず、住人たちはさほど動じることもなく、協力して遺体を降ろして警察を呼び、収集癖のあった山口の「遺品」とも言える白物家電を仲良く分け合っている。その夜、石田は「山口さんからの借金の依頼を断らなれば、自殺しなかったかも」と悔やみ、皆から励まされるが、どうやら山口の依頼を断ったのは、石田だけではなかった様子で……。

著:岩浪れんじ
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誰もが自分の人生の主人公だが、他人の人生においては脇役にすぎない

トイレや水場も共同で、プライバシーなど無いに等しいが、廊下や階段で会えば誰からともなく挨拶を交わし、ゆる~く連帯しながら生きている。そんな「コーポ」を舞台に垣間見えるそれぞれの人生の悲喜こもごもが、なぜだかよくわからないが妙に眩しく映るのは、きっと筆者だけではないはずだ。「居住空間の構造上、関わらずにはいられない」という煩わしさはあるものの、そこには多様性に満ちた自由な空間が広がっているともいえなくもない。

住人同士は自分の方から口にしない限り、互いの過去など知る由もないが、章ごとに徐々に明らかになっていく謎多き彼らの“人生劇場”に触れられるのも、読者だけに許された特権だ。

人は誰しも自分の人生の主人公からは死ぬまで降りられないが、逆に言えば、自分以外の人生においては、たとえ家族であろうが、恋人であろうが、どこまで行っても単なる脇役の一人にすぎない。だったら、必要以上に周りに気兼ねすることなく、思うままに生きるべし。そんな、当たり前のことだが、つい忘れてしまいがちなことを、この『コーポ・ア・コーポ』は教えてくれる。先の見えない世の中で、悩みながらも、「まぁ、ええか」としぶとく生きるコーポの住人たちの日々を覗くうち、幸せの定義についても、改めて見つめ直したくなる。

今読むべき!人気漫画の実写映画化『コーポ・ア・コーポ』予告編
著:岩浪れんじ
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この記事を書いた人

インタビュアー・ライター。主にエンタメ分野を中心に、著名人のインタビューやコラムを多数手がける。多感な時期に1990年代のサブカルチャーにドップリ浸り、いまだその余韻を引きずっている。

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