他人事の事件に当事者意識が生まれる。復讐に正義はあるか—— 『朝食会 RISE OF BREAKFAST CLUB』

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朝食会 RISE OF BREAKFAST CLUB
『朝食会 RISE OF BREAKFAST CLUB』(渡邊ダイスケ、小林拓己/少年画報社)

※ややネタバレあり

目次

日々起こるフィクションじみた事件が“自分事”になる

日々流れるいくつものニュースは、結局のところ“他人事”だ。

被害者の気持ちを想像して同情することはできても、本当の意味でその気持ちを理解することはできない。自らが被害者にならない限り、無関係の人々にとってはやはりフィクションなのである。

だからと言って無関心ではいけない。この世に憎むべき悪は存在する。明日には自分が被害者になるかもしれない。被害に遭わないためにも、僅かでも犯罪を減らすためにも、我々は毎日のニュースを受け止め、考えるべきなのだ。

要約されたニュースの裏側を垣間見、被害者の想いを考えさせられる優れた作品がある。まずは『朝食会 RISE OF BREAKFAST CLUB』を読んで、考えてみてほしい。

主人公の女子高生・榎加世子は、8歳の頃に拉致監禁・強姦の被害に遭い、家族との関係にはひびが入り、心は壊れていた。

ある時、担任教師の尾藤春也に復讐代行の現場に立ち会わされ、復讐支援団体「朝食会」に勧誘される。入会の条件は、何らかの事件の被害者かその家族であること。一度は断った加世子だが、詐欺師グループによる犯罪被害に遭ったこともあり入会を決める。

加世子が「朝食会」としての仕事をこなす中、友人の御子柴沙映が彼氏の桐生および友人によって強姦、お腹の子どもを殺害され、自殺してしまう。尾藤は個人的な復讐を決めるも、逃した詐欺師グループの魔の手が迫っていた——。

著:渡邊ダイスケ, 著:小林拓己
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丁寧な描写によって現実性を持った事件に向き合い、考える

本作で発生する事件は、現実で起きた事件と酷似したものばかりだ。世間では、数日にわたって騒がれていた事件でも、いつの間にか忘れ去られてしまう。にもかかわらず、報道が続けばSNS上で心無い人々に「飽きた」「うんざり」などと言われ、被害者が非難を受けることさえある。被害者にとって事件に終わりはない。事件は決して見世物ではない。心無い人にならないために、考えることは大切だ。次はあなたの番かもしれないのだから。

大罪を犯しても罰を逃れる者はいる。

復讐の結末は負の連鎖だ、何も生まない。口で言うのは簡単だが、「犯罪者を罰したい」「罪は償うべきだ」と考える者は多いだろう。事件は他人事でも、つまるところ人々は“勧善懲悪”が好きなのだ。だからこそ復讐を扱った作品は数多く、一定の支持を受けているのであろう。

本作の残酷な描写にはリアリティがあり、加害者の手口や被害者の心情も丁寧に描かれている。そのため、右から左に流れたはずのニュースが現実性を持って顕現するのだ。また、被害者の揺れ動く表情の描写も素晴らしい。復讐代行の場で、加害者が悶え苦しむ様子を見て高揚した顔になった被害者。被害者はもう、加害者と同じ側に堕ちてしまったのだろう。

復讐は悪だと断言したいが、加害者の愚行を見ていると反吐が出る。復讐は致し方ないとすら思えてしまう。だが反対に、メディアに出て発言する被害者やその家族の尊さに気付くことができる。絶望と戦い、悪に染まらず、心無い言葉にもめげず、それでも立ち続ける彼らは実に偉大だ。 本作に触れれば、他人事であったはずの事件に現実味が出るはずだ。多くの人が考えることで、いつか全ての事件が教訓化することを祈る。

息遣いまで単体でもすんなり読める、大人気コミックのスピンオフ作品

『朝食会 RISE OF BREAKFAST CLUB』は、累計発行部数が460万部を超える渡邊ダイスケの大人気漫画シリーズ『善悪の屑』、『外道の歌』(ともに少年画報社)のスピンオフ作品。同作に登場する復讐支援団体「朝食会」の東京支部支部長・榎加世子の過去を、小林拓己氏が描く。少年画報社によるマンガアプリ「マンガDX+」にて2020年より連載中、既刊3巻。最新刊となる3巻は2021年12月13日に発売された。

スピンオフ作品ではあるが、シリーズ作品未読でも十分に楽しめる。

『外道の歌』では大人になった加世子が登場するため、この後彼女がどのような人間になったのか気になる人は、本作を読んでからシリーズ作品を読むことをおすすめする。

復讐代行の物語は数あれど、「朝食会」の入会条件に「被害者かその家族」とある設定は説得力があって実に良い。果たして彼らにとって復讐は正義か、悪か。リアルな犯罪描写から目を逸らさず、向き合い、世界のどこかで、日本のどこかで今まさに起きていることとして捉え、自分なりに考えてみてほしい。

当事者にならない保証などどこにもないのだから、いつかあるかもしれない未来として考えてみよう。

著:渡邊ダイスケ, 著:小林拓己
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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