詐欺師をだます詐欺師が挑む“令和の最新詐欺”――世界観はそのままにアップデートされた手法で知的に躍動!『クロサギ再起動 -18歳新成人詐欺犯罪編-』

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クロサギ再起動
『クロサギ再起動 -18歳新成人詐欺犯罪編-』(原案・夏原武、漫画・黒丸/小学館)
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2度目のテレビドラマ化でも話題の作品が“復活”!

詐欺師だけを狙う詐欺師。そんなワクワクするようなアイデアの斬新さに魅せられた『クロサギ』。当初の『クロサギ』から『新クロサギ』、そして『新クロサギ 完結編』と連なるシリーズ(いずれも原案・夏原武、漫画・黒丸/小学館)が完結したのは2013年で、連載開始から19年、完結からも9年経過していることに改めて驚かされる。山下智久主演で2006年に実写ドラマ化、2008年に実写映画化もされた大ヒット作だ。

主人公にまつわる過去やしがらみなど、さまざまな詐欺と対峙する中で伏線が回収されていき、物語は幕を閉じたのだが、今年アイドルグループ「King & Prince」の平野紫耀主演で再びドラマ化。それに伴い、原作マンガも『クロサギ再起動 -18歳新成人詐欺犯罪編-』として復活を遂げた。

時間軸的なことからなのか、外伝という扱いにはなっているが、主人公は変わらず黒崎。周囲を固めるキャラクターも、シリーズファンにはなじみ深いメンバーが登場し、扱うテーマも黒崎の手腕もキレ味は健在。むしろ円熟味を増し、さらなる高みに到達しているともいえるだろう。

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懲悪に徹する詐欺師と彼を追う刑事、異なる視点で見えてくるものは……

本作の主人公・黒崎の職業は詐欺師。といっても、彼が狙うのは人を騙し、金銭を巻き上げる“シロサギ”や、異性を餌とし、心と体を弄ぶ “アカサギ”のみ。詐欺師を喰らう詐欺師である彼は“クロサギ”と呼ばれている。

黒崎が詐欺師となったのには理由がある。かつて、彼の父親が詐欺師にはめられ無理心中を起こし、唯一生き残った黒崎は世の中の詐欺師を喰い尽くすために自らも詐欺師に。そんな彼が詐欺師の情報を入手する相手・桂木とは因縁があり……というのが、物語の軸として存在する。

先に言っておくが、詐欺は犯罪であるし、やられたらやり返すという思想についても賛否あるはず。それでも黒崎が詐欺師を相手に被害者がだまし取られた金をだまし取り返すという行為に、ある種の痛快さや爽快さを覚えるのは、何とも言えない閉塞感が漂い、先行きの見えづらい中で複雑さだけが増しているかのように感じられる現代社会に対し、黒崎の存在が、どこかアンチテーゼ的な意味合いを放っているからかもしれない。

そして、黒崎は狙った獲物に対しては一切手抜かりなく、金をだまし取るだけでなく社会的にも罰することも目的としているため、ダークヒーローのような印象も。極端な表現をするなら、懲悪しか描かれていないのも実にすがすがしい。それでいて、作風がダークさやヘビーさに偏りすぎていないのもいい。

そんな作品の空気感のバランサーとして、ヒロインで検事を目指している学生・吉川氷柱や黒崎を追う神志名警部補の役割はかなり大きい。特に神志名は、その過去から警察官の道を選んだ“もう一人の主人公(黒崎)”とも読み取れるような描かれ方をされているキャラクター。警察側、いわゆる社会的な“正義”の側から詐欺師を追求することにこだわっている視点は、ついつい黒崎の活躍ぶりに目を奪われてしまう中でも、いろいろな意味で物語に奥行きと深みを感じさせてくれる。

法改正で誕生した新成人を扱ったテーマは痛快さだけでなく学びも

今回新たに描かれているのは“新成人”を狙った投資詐欺。同じような詐欺は以前からあったが、今作で特筆すべきは2022年から新成人となった18歳や19歳が被害者になっている点だ。これまでは未成年ということで法に守られている部分も大きかったが、成人扱いとなれば話は別。そこに今あるだろう危険を取り入れているのは、まさに『クロサギ』という作品にふさわしい。

さらにSNSに動画サイト、暗号資産など、詐欺にまつわる道具や手法に関しても、令和時代に合わせてアップデート。そんな“旬”を持ち込みつつも、当時と変わらないたたずまいのキャラクターたちのアンサンブルが絶妙で、ドラマから入った人はもちろんのこと、シリーズファンとしては新作でありながら連載初期の雰囲気が味わえるのもたまらない。

作中、「シロサギ(騙す側)が100%悪い」と語る被害者に「100%同情なんかしない」と言ってのける黒崎はニヒルでリアリストだが、終盤に氷柱のことを思い描きながら語るセリフからもわかるように、心の奥底にはきっと……と思われてくるのも心憎い。

それにしても新作を読み終えて痛感するのは、次々と新手の詐欺が生まれ、どうしたって詐欺がなくならないということ。本質は変わらないのだろうが、手を替え品を替え、巧妙に誘い込んでくる。自分は大丈夫と思っていても被害に遭ってしまう可能性はゼロではないはず。エンターテイメントとして楽しみつつ、詐欺予防対策の一環として知識を得るひとつの手段になるのも素晴らしい。まだまだ新たなエピソードを読みたくなる。

ちなみに、今作が気に入ったら、2022年の現行法に沿って加筆修正された傑作集『クロサギ・セレクション ―詐欺から学ぶ現代社会の基礎知識―』(原案・夏原武、漫画・黒丸/小学館)もオススメしておきたい。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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