心優しき“人間台風”男が“人の心=潤い”を求めて生きるSFガン・アクション『トライガン』

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トライガン
『トライガン』(内藤泰弘/少年画報社)

近未来の砂漠惑星を舞台に、“人間台風”(ヒューマノイドタイフーン)と恐れられた心優しき賞金首ガンマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピードが繰り広げるSFガン・アクション『トライガン』(TRIGUN)。25年ぶりの新作TVアニメ『TRIGUN STAMPEDE』(2023年1月よりテレビ東京系列ほかで放送)でも蘇った不朽の名作を、改めて見つめてみましょう。

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90年代作品らしい粗削りさも魅力に

タイトルの『トライガン』(TRIGUN)については諸説あるものの、主人公のヴァッシュ・ザ・スタンピードが「3つの銃を持つ男」と呼ばれたことから、「Tri」(3つの)+「Gun」(銃)の造語とする説が公式情報になっています。

ちなみに3つの銃とは、ヴァッシュが愛用するリボルバー、左腕(義手)に仕込んだ隠し銃、物語のクライマックスで登場する惑星破壊兵器「A・ARM」(エインジェル・アーム)のこと。いずれも、“伝説的な賞金首ガンマン”、 ヴァッシュ・ザ・スタンピードを象徴する銃です。

いっぽうファンの間では、「三人(ヴァッシュ 、ウルフウッド、リヴィオ)の銃を持つ男の物語」との解釈も広がっていました。

ウルフウッドはヴァッシュとW主人公をなす巡回牧師で、背中に背負う巨大十字架を模した重兵器「パニッシャー」を操る男。ロケットランチャーを彷彿させるパニッシャーの破壊力はすさまじく、そんな重兵器を背負って旅するなど、人間業とは思えなかったりも。

リヴィオは、顔の半分を鬼の面で覆った“最強の殺し屋”。上下左右前後に同時射撃できる二連式機関銃「二重牙」(ダブルファング)を両腕に装着した、もはや人間とは思えない男で……。

こうした“ガンマン”たちが次々と登場し、ド派手なガン・アクション・サバイバルを繰り広げる物語……が、初期『トライガン』の骨格に。無茶苦茶ともいえる設定と粗削り&パワフルな作画・コマ割りは、良くも悪くも90年代らしいテイスト。そこに魅力を感じられるかどうかで、本作品への評価は相反するかもしれません。

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“人間台風”ヴァッシュ・ザ・スタンピードとは

物語の舞台は地球から遠く離れた、砂漠が広がる熱砂の惑星。文明が崩壊したかに思えた世界で、奇跡的に残ったシップ(宇宙船)の独立生産機能により、七つの町が誕生する。

が、第3都市のジュライが一夜にして壊滅し、瓦礫の山には謎めいた金髪男、ヴァッシュ・ザ・スタンピードがたたずんでいた……。周囲を破壊し尽くす男“人間台風”(ヒューマノイドタイフーン)と恐れられた彼は、天文学的な賞金がかけられた御尋ね者に……。

という基本設定からは、連載時期が重なる『BLACK LAGOON(ブラック・ラグーン)』(広江礼威/小学館)など、90年代から2000年代前半に一世を風靡したクライムアクションをイメージされるかもしれません。銃の造詣にこだわったガン・アクションにも、相通じるものがあります。

ただ、そこにコミカルな要素を取り入れることで、本作は独自の味わいを深めていくわけで。

初期のヴァッシュはフザけた風貌&おとぼけキャラから、「こいつが本当に人間台風?」と思わせます。単なるヤンチャ野郎にも見えますが、旅の仲間となったヒロイン・メリルの目を通し、彼の寂しさ・孤独さ・優しさ・人間味などが巧みに描き出されていきます。さらにアウトローなウルフウッドが加わることで、秘められた内面も見え隠れし始め……。

彼らが“旅する”目的も、やがて物語の核として見えてきます。新たな要素を加味しつつ謎めいた物語が進展し、キャラクターの造詣が深まっていく。こうした冒険RPG&ロードムービー風な構成の巧みさも、本作の魅力でしょう。

“往年の名作映画にも相通じる“乾いた”世界観

アメコミ(アメリカンコミック)の影響を強く受けた作品とも評される『トライガン』ですが、作風や味わいをハリウッド映画の名作に置き換えてみても面白いかと。

初期設定は『俺たちに明日はない』(1968年)、その後の出会いや、物語に進展をもたらす旅の光景は『明日に向かって撃て!』(1970年)『ミッドナイト・ラン』(1988年)『ペーパームーン』(1974年)『バクダッド・カフェ』(1989年)……といった具合に。

街ひとつを壊滅させられるほどのヒューマノイドタイフーンながら、「撃たずに」「誰も殺さずに」を信念に生きてきたヴァッシュ。「弾丸一発でピザトーストを4枚も食べられるのに、撃つなんてもったいない」と笑う姿からは、『明日に向かって撃て!』の強盗ブッチ・キャシディ&サンダンス・キッドが思い浮かんだりも。さらに、長閑めいた物語が急変するクライマックスに向けては、『マッドマックス』(1979年)のような世紀末アウトロー風味も強まり……。

また、次々と現れる刺客や賞金稼ぎたちの姿には、『レザボア・ドッグス』(1993年)や『パルプ・フィクション』(1994年)などの退廃的な味わいも感じられるでしょう。

これら60~90年代の良き時代に製作された作品は、乾ききった世界観だからこそ見えてくる潤い=“人の心”が、深みあるスパイスとして見る者の心を揺さぶります。90年代後半~2000年代前半の連載期と時代背景が重なる本作の舞台・熱砂惑星も、そうした感情を高ぶらせる設定なのでしょうか。

コミカルな要素も目立つ初期『トライガン』に比べ、各キャラの背景やドラマが深彫りされる続編『トライガン・マキシマム』(内藤泰弘/少年画報社)では、乾きと潤いの対比がいっそう強く見受けられるでしょう。両作品の関係性は意識せず、初期『トライガン』から読み通されることをお勧めします。

ちなみに、25年ぶりにTVアニメ化された『TRIGUN STAMPEDE』(2023年1月から放送)は、ヴァッシュの内面性を重視した、やや異なる作風となっています。ストーリーのカギ(=謎)となる、ヴァッシュが抱えるトラウマが物語冒頭から描かれ短時間で見やすくしあがっていますが、ある意味でネタバレに……。本作の長編ロードムービー的な盛り上がりを堪能したいなら、1998年にTV放送された『TRIGUN』や劇場版『TRIGUN Badlands Rumble』(2010年)を先に見られた方が、当時の読者が感じていた魅力は肌で感じやすいかもしれません。

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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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