戦隊ものの“お約束”は概念が異なる異世界でも通用するのか!? 魅惑的なテーマに意欲的に挑む快作――『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』

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戦隊レッド 異世界で冒険者になる
『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』(中吉虎吉/スクウェア・エニックス)
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相容れなそうな戦隊と異世界を融合させると……?

ドラマに「月9」と呼ばれる枠があるように、ヒーローものには「ニチアサ」がある。ニチアサとは、主にテレビ朝日系列で日曜朝に放送される特撮ドラマ(スーパー戦隊シリーズ&仮面ライダーシリーズ)やアニメ(プリキュアシリーズ)の枠を指すのだが、そんなニチアサのヒーローが異世界に転生したら……といった、ある意味で特撮好きの“妄想”を魅せてくれているのが『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』だ。『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)にて連載中で、既刊3巻。

現在放送中のシリーズ46作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は、おとぎ話「桃太郎」がモチーフで、戦隊史上初の男性ピンク戦士誕生も話題だが、モチーフや色の組み合わせなどさまざまなバリエーションの戦隊が存在。基本的には戦隊メンバー全員が“主役”なのは間違いないだろうが、作品上、レッドが中心的な役割を担う。

本作でも、悪の組織との最終決戦で相打ちになったことをきっかけに異世界転生した浅垣灯悟(キズナレッド)が主人公。異世界の困っている人々を変身して救いながら、元の世界に戻る方法を探っていくストーリーが繰り広げられる。

異世界ものといえば、例えば『ドラゴンクエスト』(スクウェア・エニックス)シリーズや『ファイナルファンタジー』(スクウェア・エニックス)シリーズなどに代表されるRPG(ロールプレイングゲーム)のような世界が主流。つまり魔法やレベル、ランクなどの概念が存在する世界線では、スーパー戦隊や仮面ライダーは一体どれほど実力を発揮できるのだろうか?

異世界にとって戦隊の定番要素は不思議の連続

素朴ながらワクワクするような疑問の数々をいくつか検証してみたい。第1話では、魔法使いのイドラ・アーヴォルンから「どんなジョブのどんなスキルであんな姿になったの?」「変身後の爆発には一体どんな意味があったの?」「その人語を発する腕輪は」といったように、矢継ぎ早に戦隊ものには欠かせない基本とも言える要素について質問が飛ぶシーンがある。

たしかにRPG的な世界観では、“ジョブチェンジ”・“転職”などと呼ばれる要素によりキャラクターの能力や外見が変化することはあっても、いきなり何の前触れもなしに変化することはまずない。さらに変身デバイスや変身バンクも、カッコよさやアグレッシブさがあるうえに特撮ドラマを観ているときは気にならないが、その要素が存在しないRPGのような世界の住人にとっては「?」の連続。レッドもイドラも互いに真剣に会話しているため、そのすれ違いぶりは面白い。

そしてステータス表示が独特という“イジり”も○。そもそも「レベル」という概念がないうえに、攻撃力とまとめられるところをパンチ力・キック力と表示したり、戦いには必要ないであろう身長・体重が記載されていたりと、特殊すぎるフォーマットに。戦士や魔法使いなどとの能力比較は難しいが、戦隊だからというひと言で納得できてしまいそうになるのは不思議だ。

戦隊と異世界の掛け合わせが無限大の可能性を生む

極めつけはロボットの存在。フィールドにいるモンスターは一撃で瞬殺だろうし、下手したら中ボスも軽くいなしてしまうかもしれず、一般的なRPGのような世界では一見“反則”のようにも思え、パワーバランスを崩しかねない。ただ登場の仕方については「召喚」という概念が相当するだろうし、戦隊ものでも異世界でも最初から登場はしない(もしくはさせない)という描き方が共通しており、結果として良い具合になっているのはご愛敬だろう。

ほかにも戦隊メンバー全員が力を合わせて使用する必殺武器や、レベルとは無縁なパワーアップ、さらに“闇落ち”を彷彿させるような展開など、戦隊ものの“お約束”をこれでもかと異世界ルールに詰め込んだ描写の数々は興味深く、引きつけられる。作中でレッド本人も言及しているが、戦隊は普段から敵組織の複数の戦闘員と戦っているため、モンスターの群れとのバトルもレッドにとっては“通常運転”。さまざまな要素の妙なマッチぶりが心をくすぐってくれる。

コメディー路線なノリで見せつつも、シリアスなタッチを交えたストーリーラインも抜かりなく、両面から楽しめるのはGood。巻末にあるちょっとした“スピンオフ”のようなミニエピソードも含め、テンポ感ある進行も抜群だ。キャラクターたちも個性派が多く、敵味方問わず、今後どのような関わりを持っていくのか。興味は尽きない。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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