『バーサス』――『ワンパンマン』のONEが生み出す異世界ものは「天敵」がキーワード ……予想を裏切り続ける展開にワクワク

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『バーサス』(原作・ONE、漫画・あずま京太郎、構成・bose/講談社)

※ややネタバレあり

目次

異世界ものを多彩なギミックで料理したアイデアに感銘

異世界や転生、召喚、タイムワープにタイムリープをはじめ、ファンタジーに登場する機会の多い要素を、最近ではライトノベルやマンガに限らず、アニメやドラマ、映画に至るまで数多くのエンタメ作品で見かけることが多くなった。ジャンルとしてしっかり根付く過程で、さまざまなパターンやアイデアが試されてきたが、今回紹介する『バーサス』には、まだそんな発想やバリエーションがあったのかと驚かされた。

舞台は、大魔王率いる47体の魔王が支配する世界。魔王軍に対抗するため資源と時間と技術の粋を結集して鍛え上げられた超人集団、47人の勇者が戦いに赴こうとする場面から開幕する。

あらすじだけを読むと、人類の希望を背負う精鋭たちが魔王軍に対していくつかの試練を乗り越えながら熱戦を繰り広げていくストーリーを想像するかもしれない。第1話序盤のキャラクターの描き方やセリフ回しも期待感にあふれ、どのようなドラマを見せてくれるのか自然とワクワクが湧き上がってくる。

しかし、ページをめくると、そこには目も当てられないような予想外の出来事が。魔王たちに完敗し続ける知らせが続々と届く中、第11勇者・ハロゥは勇気と希望を胸に魔王へと立ち向かっていく。まさに感動的なシーンなのだが、それすらもあっさりと覆してしまう展開に衝撃を受けつつも、あれよあれよと引き込まれていく熱量が圧倒的だ。

著:ONE, 著:あずま京太郎, 著:bose
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たたみかけるように押し寄せる衝撃の連続に驚嘆

本作は、『ワンパンマン』(集英社)『モブサイコ100』(小学館)などで知られるONEが原作を手がける作品。ONE自身、約10年ぶりの完全新作で、『テンカイチ 日本最強武芸者決定戦』(講談社)などのあずま京太郎が作画、boseが構成を担当している。世界観を魅力的に彩る画力の高さは、間違いなく作品の完成度を引き上げているだろう。

第1話から希望と絶望の間で揺さぶられ続けることになるのだが、まだまだファンタジーの王道路線の雰囲気は消えてはいない。……と思っていると、要素こそ正統派だが、応用方法と見せ方が群を抜いていた。

魔王に敗れ瀕死の危機から脱したハロゥは、兄で魔導士のゼイビィと再会し、「召喚」により世界を救う計画があったことを明かされた。しかも召喚は彼らが住む星全体におよぶ魔方陣で行われ、現実世界とは異なる別時空から世界丸ごと召喚するという大技なのだ。

異世界転生とチートというのは相性が良く、召喚された別世界の人類は魔王軍をあっという間に蹴散らしてくれる。今作のファンタジーはそっち系の路線かと納得しかけたところで、さらなる仕掛け。召喚された異世界の住人たちも実は……という流れには思わず笑いもこぼれてしまうが、第1話だけで心がわしづかまれたのだけは間違いない。

スピーディー&トリッキーな進行で引っ張るパワーに魅了される

第1話に多くのギミックを詰め込み、ストーリーとしても二転三転、そして喜怒哀楽すべてを盛り込んだ展開は購読意欲をビシバシ刺激してくれる。第1話の終わり方も引きがあり、次のエピソードを読まないといられない中毒性も見え隠れする。やはり引きは重要だ。

ここで注目しておきたいのが、第1話冒頭のシーン。ここで「天敵」について語られており、実は今のところ本作における重要なキーワードの一つを形成している。天敵に関してはあえて説明を省くが、その意味を考えると異世界の住人が魔王軍から救ってくれた描写の意味も自ずとわかってくるはず。

そしてさらなる予想外の出来事が発生するのだが、そのヒントもまた「異世界」と「天敵」にあるのだから興味深い。どこまでも読者の予想の斜め上を行き、オーソドックスな材料を組み合わせて体験したことないような世界で魅せる。肉弾戦であれ頭脳戦であれどちらの可能性も秘めながら、もしかしたら今ある要素をすべてぶっ飛ばす何かが飛び出す期待感もゼロではない。スピード感と手数の多さで攻めまくる作風は、今後に期待を持たせてくれる。既刊1巻のみの今のうちに、ぜひ読んでみてほしい。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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