『ろんぐらいだぁす!』自転車ビギナーでも楽しめる“自転車で旅する物語”

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ろんぐらいだぁす!1巻 新装版
『ろんぐらいだぁす!』三宅大志(著)/KADOKAWA

ふとしたきっかけで自転車と出会った女子大生が、サイクリングの楽しさや厳しさを体感しながら成長していく物語『ろんぐらいだぁす!』。コロナウィルス禍で需要急増な自転車が題材なだけに、新たにサイクリストとなった自転車初心者向け入門書としても、お勧めできる作品だ。

目次

スポ根ではない“ゆるふわ”系の正統派・自転車マンガ

自転車マンガといえば、多くの方が『弱虫ペダル』を思い浮かべるに違いない。

原作コミックからアニメ、実写映画、舞台、テレビドラマ、ゲーム化と絶大な人気を集める同作だが、その題材は自転車競技(ロードレース)。一昔前の“スポ根”モノをも彷彿させるスポーツ漫画と『ろんぐらいだぁす!』は、似て非なるもの……と考えたほうがいいかもしれない。

自転車を題材に成功したマンガには、『弱虫ペダル』をはじめ、『ツール』『シャカリキ!』などロードレース競技を扱った作品が多い。日常生活と一線を画するレースは、物語の起伏を作り込みやすいという側面もあるのだろう。

いっぽうで、日常生活の延長線上に自転車を置く作品は意外なほど少ない。と同時に、『ろんぐらいだぁす!』『南鎌倉高校女子自転車部』『東京自転車少女。』など、主人公が女子になる傾向も強い。大雑把に分ければ、男子が主人公=ロードレース競技、女子が主人公=日常ゆるふわ自転車ライフといえなくもない?

自転車の初心者向け作品なら、やはり後者に。中でも『ろんぐらいだぁす!』は、ゆるふわ要素を巧みに織り込みつつ、そこに偏重しすぎない正統派自転車マンガな一面も兼ね備える。年齢・性別を問わず、幅広い読者層にアピール可能な自転車マンガ…ともいえそうだ。

自転車乗りの“あるある”ストーリーは楽しく読めるノウハウ集?

物語の主人公は、何かやりたいことがあるわけでもなく、かといって他人と異なる取り柄もない、ごくフツーの女子大生。大学に入ったばかりのある日、街中で可愛い折り畳み自転車(ミニベロ)に乗る女子を見かけた彼女は、「私も乗ってみたい!」と貯金をはたき、ミニベロを購入。偶然にも自転車好きだった幼なじみとともに、大喜びでサイクリングに出かけるのだが……。

そんな彼女を待ち受けていたのは、激しい運動で低血糖状態に陥り、身体が動かなくなってしまうハンガーノック症状。これを機に、彼女は自転車乗りの“あるある”を次々と体験することに……「自転車って、こんなにお金がかかるの!?」など、誰もが驚かされる“あるある”の連続には、自転車入門書的なノウハウの宝庫だとも。

やがてミニベロの限界を知り、ロードバイクに乗り換えた彼女は、大学の自転車好き女子とチームを結成。自転車乗りの聖地・しまなみ海道(広島県尾道市〜愛媛県今治市)や乗鞍岳・畳平など、遠距離サイクリング=ロングライドにハマっていく。そしてさらに、数百キロにも及ぶ日本横断の旅を決意し……

ここまでの展開には、「あれよあれよ」といった印象も。何にでもチャレンジしてみたい、自分の限界を試したい年齢の主人公は、まさに怖いもの知らず。素直で明るく、純粋&ひたむきな想いや行動に引きずり込まれ、惹かれていく読者も多いに違いない。

知恵と工夫と足だけで進むロングライドの先には……あの名作も!?

長距離を走り終えての甘いモノご褒美など、思わず目を細めてしまうような“ゆるふわ”女子大生ライフも、男女を問わず納得の可愛らしさ。当初こそ“ゆるふわ”イメージに違和感を覚えるかもしれないが、物語が進むにつれ解消されていくはずだ。

そのポイントは、主人公の成長とともにリアルさを増す、旅先での風景や体験、そして出会い。作品タイトルにもなっている“ロングライド”の魅力に、いつしか誰もが「自転車で旅をしてみたい」と思わされるだろう。

目的地を目指して、知恵と工夫と自分の足だけで進む旅。次は日本縦断? いや、日本一周?

となれば、自転車マンガの金字塔『サイクル野郎』も意識せずにはいられない。日本一周・自転車旅の壮大な物語を、再び…… そうした想いが、不思議と重荷でないようにも感じられる『ろんぐらいだぁす!』。それもまた、本作が持つ懐の広さなのかもしれない。

また、ソロ旅が好きな方なら、自転車ド素人なギャルが鹿児島から北海道へ日本縦断に挑む『旅ぎゃる!日本じゅーだんチャリきこー』などと併読しても面白そうだ。

ちなみに、本作は長期休載後、《月刊ComicREX》(一迅社)から《月刊ブシロード》(ブシロードメディア)に連載を移籍。タイトルが『ろんぐらいだぁすとーりーず!』に改題されている。改めて第1巻から《新装版》として刊行される単行本コミック(発行:ブシロードメディア/発売:KADOKAWA)は、既刊の一迅社版と同じ内容なのでご注意を。

出演:東山奈央, 出演:五十嵐裕美, 出演:大久保瑠美, 出演:黒澤ゆりか, 出演:日笠陽子, 監督:吉原達矢
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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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