美学を貫く行動がカッコいい主人公・七瀬に学ぶ、自分自身の“基準”の決め方――『新宿セブン』

新宿セブン
『新宿セブン』観月昴原作・奥道則作画/日本文芸社
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超一流の目利きが人や物の“真贋”を見極める「鑑定」がテーマ

人気グループ「KAT-TUN」の上田竜也が連ドラ初主演を果たしたドラマの原作でもある本作。新宿・歌舞伎町を舞台に、アウトローな質屋を営む主人公・七瀬が、わけありな人々が持ち込むさまざまな物を鑑定しつつ騒動を繰り広げるという物語だ。

絶対的な鑑定眼を持ち正確無比な能力であらゆる物の真贋を見極めるかたわら、アウトローと評されていることからもわかるように腕っぷしも“超一流”。鑑定絡みで巻き起こる事態や関係してくる危険な相手でも、時と場合によっては腕力でねじ伏せることもしばしば……。

ちょっと野蛮な印象を抱くかもしれないが、あくまでも力技は最終手段。しかも誰彼構わずふるうわけではなく、相手をしっかりと見極めた上でのこと。外見も含めてちょっと粗暴なイメージの七瀬だが、本作の醍醐味は彼の筋の通った“人間性”にこそある。

「弱きを助け強きを挫く」ながら一筋縄ではいかない展開&ギャップある姿で魅了

繁華街にある質屋ということで、七瀬の店を訪れる客はは性別や性格、経歴に職業すべてが千差万別。基本的には1話完結で持ち込まれたアイテムを鑑定し、さらには持ち込んだ人物のその後もきっちりと面倒を見てくれる。

七瀬が力を貸す相手はさまざまで、基本的には弱い立場や本当に困っている人を助けるために動く。人情味ある優しい一面を見せつつ、弱みにつけ込んでくるような相手や嘘で塗り固めたような人物には容赦しない。例えばヤクザ相手の場合、バラされたくないネタを盾に毎月利息を要求するという、単なる正義の味方にとどまらない行動も。

現代社会ではコンプライアンスというワードに代表されるように、清く正しく生きることが求められる場面が多いが、七瀬はその逆をいく生き方。仮に法律を破る結果になったとしても、自分の中で決めている価値観や基準と照らし合わせて行動する。そこに躊躇や逡巡はなく、己が信じる道を真っ直ぐに進む。言葉にすると簡単だが実行するのはハードルが高い。

しかも普段は酒や女に弱くひょうひょうとした佇まいでいながら、一度ギアが入ると人が変わったかのように静かな熱を発し事に当たるスゴ腕……と、少々ベタな設定だがヒーローものに通じる部分もあり読んでいて痛快だ。

老若男女問わず、筋の通った生き方がまぶしくも胸アツ

七瀬の考え方を知る手がかりとなるのが、第1話で登場する「俺の眼はモノの真贋だけじゃねぇ」「ヒトの真贋も見抜けてな」というセリフ。小気味よくてカッコいいのはもちろん、この言葉には自分の仕事や行動、七瀬の場合は鑑定、それに嘘を混ぜないという矜持を命懸けで守るスタンスがにじみ出ている。

さらにアウトローとはいえドラッグをはじめ犯罪には自ら手を染めない(時に、事件解決のためスレスレの行為をするが、そこには彼なりの筋があるようだ)。その清廉潔白さの徹底ぶりに、荒っぽい解決法でも不思議と愛きょうを感じてしまう。厳しさと優しさを兼ね備えた男気あふれる姿は、まさに頼れるアニキ。現実に近くにいたら……と思わず想像してしまう。

“相棒”として登場する、七瀬の質屋で働く健太との相乗効果がまたいい。健太はあくまでも常識人で七瀬に振り回されてばかりなのだが、狂言回しがいることでより七瀬の人物像が引き立つ。2人が出会うエピソードも味わい深く、ジンと染みてくる。

七瀬というキャラクターが作品を支える大きな幹であるのは間違いないが、鑑定士という職業柄、さまざまなうんちくや雑学も盛り込まれているのも悪くない。またニュースなどで目にしたような出来事をモチーフにしたエピソードも数多く、そこに七瀬がどう切り込むかも見どころ。七瀬の爽快な立ち回りにきっとスカッとするはずだ。

七瀬のように文武どちらも……なんてことは現実問題難しいし、いくら自分が正しくとも法に触れてしまえば元も子もない。ただ自分自身の美学のようなものを持つことは、“らしく”生きていく上では大切な要素の一つとも。できることなら「己に正直であれ」と思うことくらいから始めてみるのもいいかもしれない。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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