熱いキャラクター&ストーリーが実はドラマだったらという発想に拍手
「エッジが効いている」という表現を見かけることがよくあるが、そのとらえ方はさまざま。それでもエッジが効いていると聞くと、いわゆる王道とはちょっと違うような面白さみたいなものを期待してしまう。実は今回紹介する『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』が、個人的にはまさに“エッジ”が効きまくっていると感じられる作品だ。
タイトルにもあるとおり、レジェンド級の人気マンガである『北斗の拳』のスピンオフ。最近では、往年の人気作品の名を冠した続編や番外編が数多く登場している中、今作は思いがけない方向から攻めてきた。今作では「『北斗の拳』の世界がドラマ撮影だったら」という“if”設定で、あの名シーンや名言を再現しつつ、その“裏側”を見せて楽しませてくれるのだ。
何が“本当”で何が“演出”かわからなくなるテイストが◎
ドラマや映画などマンガを原作とした実写化が、定番ジャンルとなって久しい。そう思うと、本作の設定もあながち夢や妄想ではないと感じられるのだが、そうはいっても作中で原作となるのは『北斗の拳』。文明と秩序が失われ、常に争いが絶えない日常の中、暴力に支配された世紀末が舞台という、実写化するにはなかなかのハードルの高さがある。
ハードルの高さで言うなら、実写化につきものなのが演じるキャスト陣。幸いというか、今作においてビジュアル面での心配はなし。“ホンモノ”と“うりふたつ”の外見の俳優・女優が各キャラクターを演じている。まあ「マンガだから」と言ってしまえばそれまでなのだが、例えば主人公のケンシロウだが、あのたぐいまれな体躯を再現するには実に涙ぐましい演出が施されているなど、随所にドラマ撮影テイストが盛り込まれており、思わずクスッとさせられる。
そしてバトルシーン。ケンシロウが数多くの強敵たちと死闘を繰り広げていくのも『北斗の拳』の醍醐味の一つ。そこにも多彩な演出が施されており、見るからに“ホンモノ”さながらのアクションが展開していく。ただ、ひとたび「カット」の声がかかれば、そこはドラマ撮影という設定が効果を発揮。それまで激しく激突していた者同士が、和やかに言葉を交わす姿が見られるのがたまらない。すべてがエンタメなのだが、虚実入り混じった感覚が何とも言えない。
ドラマ撮影の裏側をのぞくテイストを堪能したい
ちょっとというか、もはやだいぶと言えるほど『北斗の拳』をあれやこれや、あっちへこっちへと“イジり”倒している本作。“原作”で読んだ、あの名シーンやあの熱い死闘の数々も、すべて“フィクション”。むしろマンガ原作のマンガ内ドラマなのだから当たり前なのだが、ドラマというからには、魅力的なキャスト陣にも注目したい。
本作でもリン役の女優が○○など、原作のキャラクターからは想像できないような立ち居振る舞い、性格の俳優陣がずらり。いかにして名シーンが作り上げられていくのか。ドラマ撮影の裏側をのぞいているような雰囲気も悪くなく。いろいろなギミックで世界観に一気に引き込まれていく心地よさがある。
そしてその“面白さ”を支えているのは、やはり原作の完成度。『北斗の拳』を少しでも知っている人なら、きっと楽しめるはず。いまだ“見たことない”『北斗の拳』を味わってみてほしい。