入園、入学、入社!! 始まりの春、私の場合は―― “入所”でした!
「罪状 大麻取締法違反 所持 累犯 刑期 1年」。“お野菜をゲットしたらポリスにキャッチされた”ため、刑務所に“入所”した春乃うららはある日、独居房から雑居房へと転房することに。そこにいたのは業務上横領罪で刑期2年半の夏川ひまり、傷害罪で刑期2年の秋月柚木、罪状不明だが刑期8年の冬白華という3名。「楽しく……とはいかないと思うけど、罪を償ってシャバに戻れるまでよろしく!」。こうして春乃たちの“ごくちゅう”生活が幕を開ける。
まさかの「きらら系」×「刑務所モノ」 一筋縄ではいかない“ゆるふわ獄中コメディ”
『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』(荒木飛呂彦/集英社)に『監獄学園』(平本アキラ/講談社)、『ナンバカ』(双又翔/双葉社)、『デッドマン・ワンダーランド』(片岡人生、近藤一馬/KADOKAWA)などなど……。アニメ化された作品も数多い、独特のシチュエーションから物語が生まれる「刑務所モノ」のマンガだが、まさか、いわゆる「きらら系」的な“女の子同士のゆるふわな日常”の舞台にする作品が出てくるとは。いきなりキワどい導入を心配しつつも笑ってしまう、“ゆるふわ獄中コメディ”を謳う『ごくちゅう!』だ。
とはいえ舞台が舞台なので、その“ゆるふわ”も一筋縄にいかない。実際に「きらら系」も手掛ける著者の描写には、そこが刑務所であることを忘れて癒されるが、一方で豆知識を記した「ごくちゅーメモ」や刑務官の見回りには背筋を正され、そして笑ってしまう。一見すると愛されキャラの春乃も、その言動には大麻所持の累犯者らしいアレっぷりが見え隠れ。同時進行する「きらら系」と「刑務所モノ」のあるあるが謎の中毒性を生むのだ。
役立つときが来てほしくない……とことんリアルな刑務所事情がわかる“アブない萌え日常マンガ”
大麻に関する著書もあり裏社会事情に通じた人物と、実際に女子刑務所に服役していた人物が「取材協力」で噛んでいることもあり、作中の刑務所描写はとことんリアル。「きらら系」ではお楽しみになりがちな“お風呂回”における、浴室から出る際の受刑者たちのとある行動は、可愛い絵柄を貫通してその衛生事情が垣間見え、特に生々しい……。解説コラムでも役立つときが来てほしくない知識を補強してくれる、アブない萌え日常マンガだ。