好きな人は同じ人……一方通行なラブが苛む純情、育む友情『霧尾ファンクラブ』

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『霧尾ファンクラブ』(地球のお魚ぽんちゃん/実業之日本社)
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推しのおならが爆音だったら「嬉しすぎるだろ」――“同担”だからできること

“好きな人がかぶるとか 完全にやっちまってますよね でも ふたりだから できることもあるんです――”。

女子高生の三好藍美と染谷波には、共通の気になる人がいる。いつも一緒のふたりの話題は、その想い人……同じクラスの“霧尾くん”のことばかり。だが、ふたりと霧尾くんはあくまでもクラスメイトというだけ。妄想は膨らむ一方だが、ラブまでの道のりにゴールは見えない。はたして、友でありライバルでもあるふたりの恋の行方とは。

著:地球のお魚ぽんちゃん
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空回りする純情、乱れ飛ぶWボケ……謎多き想い人“霧尾くん”がもたらすもの

「好きです。付き合ってください」「ミキちゃん、すごく嬉しい。実は俺もずっと――」。とある女子生徒から告白され、それに応じるイケメンを、何とも言えない表情で遠巻きに見つめる藍美と波……。「誰だよ」「誰だよは失礼でしょ」。ふたりにとって、今にもキスしそうなできたてのカップルは「場所とタイミング最悪」なだけ。ふたりの目当てはカップルの頭上、ひょんなことから木の枝に引っかけてしまった、霧尾くんの忘れ物の学ランなのだ。

そんな始まり方の『霧尾ファンクラブ』は、友であり恋のライバルでもある藍美と波が、ローテンションにシュールな推し(=霧尾くん)語りを繰り広げていく“一方通行ラブコメディ”だ。作中で最初に示される、彼女たちによる霧尾くんに関するトークテーマはまさかの「おならの音量」。当然ながら、ふたりとも笑いを取りにいっているわけではない。そこから話が“おならを聞ける関係性”におよぶのだから、そのガチ推しぶりが表れている。

面白いのは、その想い人たる霧尾くんが、後ろ姿や口元しか描かれないことだろう。読者はイマイチ人物像が分からないふたりの推しを、ほとばしる妄想トークから思い描くことになる。色々と“ぶっこむ”のは、一見すると一匹狼タイプの藍美だけかと思いきや、穏やか愛されキャラに見える波も、その切れ味は負けず劣らず。一方通行な愛ゆえに空回りする純情、乱れ飛ぶWボケを、さらに一方通行で観測しつつニヤつくのが読者の役割となる。

ローテンションな会話から生まれるシュールな笑い――真意が気になるセリフも

著者・地球のお魚ぽんちゃんは、ネタ系Webメディア「オモコロ」にもマンガ連載を持っていると書けばその“路線”が伝わるだろうか。最近の作品から挙げるなら、同じくローテンションな会話劇がシュールな笑いを生む『女の園の星』(和山やま/祥伝社)等が好きなマンガ読みはきっとツボのはず。第1巻は、ふたりから気になるセリフが出たところで幕切れとなるが、はたしてその真意とは。隠れた恋の矢印が見えても面白い、注目のラブコメだ。

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この記事を書いた人

アニメやマンガが得意な(つもりの)フリーライター。
大阪日本橋(ポンバシ)ネタやオカルトネタ等も守備範囲。
好きなマンガジャンルはサスペンス、人間ドラマ、歴史・戦争モノなどなど。
新作やメディアミックスの話題作を中心に追いかけてます。

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