コロナ禍で注目度が上昇中な、“折り畳み自転車”に特化した自転車漫画『おりたたぶ』。『ゆるキャン△』(あfろ/芳文社)など“ゆるかわ”系コミックとしての面白さに加え、折り畳み自転車の入門書としても気軽に読めるので、自転車に少しでも興味がある方は一読の価値あり?
雰囲気だけで折り畳み自転車に乗ると……後悔しがち!?
多少なりとも自転車に興味を持った方が、まず通る道。それが“折り畳み自転車”ではないでしょうか。
折り畳めば、駐輪場の心配もない。折り畳めば、列車やバスで遠方にも行けちゃう究極の“旅ツール”! などなど、様々な可能性が拡がる乗り物こそ、折り畳み自転車なのです。通販サイトなどを見ると、ママチャリ的なお値段で購入できる、安価な折り畳み自転車も数多く売られています。
これなら気軽に始められそう……と思われるかもしれませんが、折り畳み自転車は各所に高負荷がかかるため、安価なモノは壊れやすいです。正確に言えば、折り畳みを繰り返すと壊れます。折り畳まずに乗るなら、それなりに使えます。
いや、それじゃ意味ないでしょ……と思われそうですが、折り畳み自転車って、ちょっとカッコイイ雰囲気を漂わせていませんか? 颯爽と街中を走る姿が、どこか“わかってる感”を醸し出すような。おしゃれと我慢は常に等価交換なのです!
実際の折り畳み自転車には、様々な問題点があります。前述の耐久性、小径車輪ならではの乗りにくさ・疲れやすさなど、あらかじめ知っておくべきポイントは少なくないわけで。
そうした要素をスルーしたまま乗り始めると、すぐに飽きてしまったり、欠点ばかりが目立って乗らなくなる→手放す=無駄遣い、になりかねません。
そこでお勧めしたいのが、この『おりたたぶ』なのです。折り畳み自転車の入門書として、まさにうってつけ! 楽しく気軽に、折り畳み自転車について学べますから。
『ゆるキャン△』や『ろんぐらいだぁす!』に相通じる世界観
作品の主人公は、自転車が大好きな女のコ・鳴嶋ゆうみ。天真爛漫で前向き&何にでも興味津々な、ちょっとおっちょこちょいなキャラ。自転車に詳しい“こだわり派”滝沢奈緒と出会った彼女は、折り畳み自転車を通して、新たな世界を拡げていきます。
まさに『ゆるキャン△』を彷彿させる基本設定だけに、同作を好きな方ならハマる要素は十分!? 登場人物の描き込みも丁寧で、各キャラの個性が作品全体の魅力を高めた『ゆるキャン△』手法を、正しい方向性で継承しているとも。
いっぽう、自転車漫画としてのワクワク感、楽しさ、(ゆるかわ的な)可愛らしさは、『ろんぐらいだぁす!』(三宅大志/一迅社/ブシロード ※途中から出版社変更)に近いものがあります。
「自転車で走りながら見ている風景が、自分と違うんだ……」
ゆうみの楽しそうな姿から感じた、奈緒の想い。物語のベースとなる想いは、『ゆるキャン△』や『ろんぐらいだぁす!』の世界観にも相通じるものだったりします。
また、自転車漫画にありがちな「うんちくが強すぎて引く……」こともありません。自転車に関する押し出しの強さも、『ろんぐらいだぁす!』並み。適度な入門書レベルなので、折り畳み自転車のハウツーを楽しく自然に学べます。
リアルな世折り畳み自転車のディープな世界をわかりやすく
とはいえ、折り畳み自転車が持つディープな世界観、マニアックさも適度に盛り込まれるので(好きな方は)ご安心を。この“適度な”バランス感覚も、作者のセンスを感じさせるところ。
ちなみに、ヒロイン・ゆうみが乗る折り畳み自転車はDAHON Ⅲ。指南役の奈緒は、(ゆうみに「ええバイク」と言われる)A-bike に、Tartaruga Type SPORT GT とマニアックな選択。他にも、BROMPTON、STRiDA、CarryMeなど定番モデルが続々と登場します。
わかる人にはわかる設定なので、詳しい方なら……ほくそ笑む? 各メーカー・モデルの個性が物語に落とし込まれているので、折り畳み自転車に詳しくない人にも「へぇー、なるほど」感が満載かと。この“何となくわかる”感も、幅広く読まれるコミックとしては重要な要素に。
物語が進むにつれ、サイクリングの楽しさや、知らなかった場所でのグルメなど、旅漫画的な要素も登場します。キャラの描き込みや人間関係、感情の動きなどが丁寧に描かれることで、付加的な要素も違和感なく楽しめるとも。
ちょっと注意したいのは、この作品を読むと、たまらなく折り畳み自転車が欲しくなってしまうこと。けっこう高額なので、くれぐれも自制しましょう(苦笑)。