一気読み必至! 都市伝説から着想を得た、絆が試される哀しきサスペンスストーリー———『This Man その顔を見た者には死を』

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This Man その顔を見た者には死を
『This Man その顔を見た者には死を』(原作:花林ソラ/漫画:恵広史/講談社)

※ややネタバレあり

目次

ジェットコースターのようなストーリー展開がクセになる

「何か面白い作品が読みたい!」と思った時に最適な作品がある。

美麗な作画と魅力的なキャラクター、スピーディーな展開、疾走感のあるミステリアスなストーリー……と漫画の良さが詰まった「これぞ」という1冊。

『This Man その顔を見た者には死を』は、有名な都市伝説をモチーフにしたサイコ・サスペンス漫画である。

主人公は交番勤務で似顔絵捜査員の天野斗(あまの・はかる)。天野は、明里光代・星子親子の依頼を受け、激しい憎悪を放ちながら明里家の前に立っていた男の似顔絵を書くことに。完成したのは、世界的な都市伝説——各地で3,000人以上の人が夢で見たとされる“This Man”の顔だった。その夜光代はディスマンに殺され、星子は「ディスマンを見たものには死を」という言葉を聞く。警察内部にも敵がいることを知った斗は、星子を連れて逃げることに。その時SNS上では、人気ワンチューバー・KODAMAによる「星子を見つけたら500万」という動画が広まっていた。

星子を守るため、斗はかつて故郷で「人吉七人衆」(死亡した兄・剣を含む)と名付けた5人の親友を頼ることを決意。

その一人・陣内と2人を襲った若者らがディスマンに殺され、重要参考人として斗が指名手配されてしまう。 そして斗は親友の協力を得るうちに哀しい真相に辿り着く。果たして「人吉七人衆」内の裏切者は誰か、ディスマンの正体とは——。

主人公と真相に迫るうち、繋がれた絆の尊さが胸に刺さる

どこをとっても作画が秀でており、展開のテンポも実に良い。ストーリーは停滞することなく速やかに進み、読者を飽きさせない。

現実世界と酷似した動画サイトや投稿者が登場するため、すんなりと物語世界へ没入することが可能。リアリティのある世界で、次々起こる事件を主人公同様に経験しながら「もし自分なら」と想像を膨らませ、多角的に楽しむことができるのだ。さらに、どのコマも繊細で美しく、多彩な表情も巧みに表現されている。感情性OE(過度激動)という特徴を持つ星子、工場勤務でいかつい見た目の陣内など、異なる特性を持った登場人物たちもキャラ立ちしていて興味は尽きない。気付けばページを捲る手が進んでいる、といった具合だ。

難点がないわけでもない。有り体に言えば、ストーリーにはもう一捻りほしかった。

“This Man”というモチーフに少しでも意義があるべきだと思うのだ。とは言え、その解釈や目の付けどころには心惹かれる。明らかになる真相もやや詰めが甘い気はするが、展開にはしっかりと起伏があり、全ての登場人物が怪しく思えて疑心暗鬼にならざるを得ない場面もあり、さらに各人の感情も丁寧に描かれているため大いに読み応えがある。

本作から感じるのは、何より絆の尊さだ。

例え遠く離れても、時間があいても、結ばれた絆が切れることはない。自ら断ち切ることがなければ、目には見えないその繋がりは、永遠なのである。

それは両親や兄弟といった家族との絆、かつて同じ時を過ごした友人たちとの絆。本作に触れると、繋がれた絆が愛おしく思え、懐かしき日々と変わらぬ友人たちの素晴らしさや、家族が在ることの有り難みを痛感する。

肝心な時に頼れる人がいるのは凄いことだ。絆の重要性が身に沁みた読者の皆さん、些細でも繋がりはくれぐれも大切に。

美しい画に誘われ、不可思議な物語世界へダイブ!

『This Man その顔を見た者には死を』は、原作・花林ソラ氏、作画・恵広史氏による、都市伝説で語られる男が起こす連続殺人事件に巻き込まれた似顔絵捜査員が、真相に迫る姿を描いたサスペンス漫画。2018年より「週刊少年マガジン」にて連載され、ウェブコミック配信サイト「マガジンポケット」への移籍を経て2019年に完結、全5巻。

現実世界と似通った世界に入り、息つく暇もなく押し寄せる事件の波に流される。物語はトントンと進み、さまざまな謎が現れては真実が明らかになる。

軽薄さを感じるかもしれないが、漫画の醍醐味を味わいつつ一気読みができるので、「漫画が読みたい」と思った際にはぜひ手にしてほしい。

全てのキャラクターの造形が美しく、その動き、表情、どれも秀逸。ともかく全編通して作画がハイクオリティなので、淀みないストーリーと合わせて映像作品とは異なる漫画の良さを堪能してみて。

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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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