盗掘屋が見つけたとある廃旅客船。日誌に遺された“惨劇”の一部始終とは……?
「僕はこれから起こることをできる限り細かく記録しておこうと思う――僕が助からなかった時のために」。金品を狙う3人組の盗掘屋が、宇宙を彷徨う廃旅客船を発見した。船内に侵入した彼らは、航海日誌らしき手帳と乗船券を見つける。これによると、船の名は海神の竜の船首像と同じ「リバイアサン」。同船は植民星から地球へと向かう途中、突如として消息を絶ったらしい。盗掘屋たちは、日誌を読み進めつつ船内の捜索を続けていく……。
……その日誌の著者である男子中学生のイチノセは、修学旅行中に「リバイアサン」に乗っていた。彼は他人とつるまない女生徒・ニカイドウとの会話中、船の異変に遭遇。船は大破し、彼ら修学旅行生は教師とともに船の居住エリアに閉じ込められてしまった。その上、イチノセとニカイドウは教師のセンダとサポートロボットの会話を立ち聞きし、「船内の酸素は残り約50時間分しかない」「生き残るためのコールドスリープ装置は1基しか現存しない」という衝撃の事実を知ってしまう。
はたして、誰が生き残ったのか” ――語り手すら信用できないSFサバイバル群像劇
“はたして、誰が生き残ったのか”。……背筋をゾクゾクとさせる、冒頭のヒキの上手さに舌を巻くマンガ好きは少なくないだろう。フランス向けに描かれた作品が逆輸入された、SFサバイバル群像劇『リバイアサン』。物語のおおまかな構図は、「登場人物たちが生き残りをかけ、各々の思惑のもとに立ち回る」という、いわゆる“バトルロイヤルもの”。フランス発らしいバンド・デシネ調で精緻に描き込まれた画面が、独自の緊迫感をもたらす作品だ。
また、冒頭で描かれた盗掘屋たちの船内探索の様子がその後も適宜挟まれ、本筋とともに同時進行するのも本作の上手さだ。盗掘屋たちは、ミステリで言うところの「犯人は誰か?」、本作においては「生存者は誰か?」的構図を作るためだけの登場人物かと思いきや、彼らの動向に、過去の出来事であるイチノセたちの足跡が繋がっていく。読者は盗掘屋の視点で追っているだけに、読み方によっては語り手のイチノセすら怪しく思わせるのが本作の奥深さだろう。
日誌を書いた彼か、他人とつるまない彼女か、それとも。コールドスリープ装置の中にいるのは……?
「僕はこの時ようやく事の重大さを理解した。そしてこれからこの船で起こるであろうことも……」。第1話にあるイチノセのセリフだ。その「事の重大さ」を先導するのはニカイドウだけに、素直に読むと結末の鍵を握っていそうなのはやはり彼女か。だが、“信用できない語り手”だけに、イチノセを疑いながら読むのもまた一興だろう。第1巻の収録話以降から「本当の地獄」が幕を開ける本作。単行本で引き込まれたら、ぜひ連載を追いたい一作だ。