『GOSICK―ゴシック―』に見る直木賞作家の神髄と類い稀な美少女キャラ

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『GOSICK―ゴシック―』(原作:桜庭一樹、キャラクター原案:武田日向、作画:天乃咲哉/KADOKAWA)

『GOSICK―ゴシック―』は直木賞作家・桜庭一樹の同名原作小説を漫画化したミステリー作品(作画:天乃咲哉)で、「月刊ドラゴンエイジ」(KADOKAWA)にて2007年から2012年まで掲載されました。心に“知恵の泉”を持つ美少女探偵が数々の難事件に挑み、可愛らしくもスマートに解決していく物語はアニメ版も大ヒット。連載終了から10年以上を経た現在も、ファンの脳裏に残る名作となっています。

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“知恵の泉”で“混沌の欠片”を再構築する等身大ビスク・ドール

物語の舞台は、1924年のヨーロッパ。第一次世界大戦が終了したものの、第二次世界大戦へと突き進む世相が色濃く感じられる、不安定な時代。フランス、スイス、イタリアと国境を接するアルプスの山国・ソヴェール王国(架空)から、彼女らの物語は始まります。

この作品には、主人公がふたり登場します。

まずは、金髪碧眼で等身大のビスク・ドールと称されるほど美しく、妖精と見間違うほどの容姿を持つ少女、ヴィクトリカ・ド・ブロワ、14歳。心の中に湧く“知恵の泉”で“混沌(カオス)の欠片”(事件のヒント)を再構築し、難事件を淡々かつスマートに解決していく天才的な美少女です。

もう一人は、極東の島国(日本)から同盟国・ソヴェールに留学してきた久城一弥、14歳。帝国軍人一家で生まれ育った、生真面目で優しい好青年。留学先の名門校・聖マルグリット学園でヴィクトリカと出会い、彼女の唯一&初の友人として、ともに難事件解決に挑み始めるものの……。

物語の基本は、超マイペースで激ツンデレなヴィクトリカが、世話好きな久城を振り回すスタイル。好対照な凸凹コンビが織りなすドタバタ劇と、おどろおどろしく奇々怪々な殺人事件、その背景に渦巻く闇、戦争による不安定な世相などがあいまって、ミステリー&サスペンス感あふれる、カオスな物語が生み出されていきます。

ただ、ヴィクトリカの超絶美少女ぶりは誰の心も魅了するはずで、それがまた、良くも悪くもアンバランスで混沌とした世界観を生み出す要因に。まさに、カオスの欠片を再構築する、ヴィクトリカの掌で踊るような物語……ともいえそうです。

著:天乃 咲哉, 著:桜庭 一樹, 著:武田 日向
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闇が渦巻く難事件・怪事件の秀逸ミステリー

難事件・怪事件を紐解くミステリーとしても、本作は秀逸です。正直、各事件の初期段階では、何が何やら……どこがどう繋がるのか、さっぱりわからないでしょう。が、ヴィクトリカが謎めいた行動で久城を振り回すうち、鉄壁かと思えた事件のトリックに些細なほころびが見え始めます。

ヴィクトリカの脳内では、既にカオスの欠片が再構築され、事件が紐解かれているはず。ただ、彼女はそれを言語化しない、言語化できない、超不器用かつ面倒くさがりな困った性格なので……。そこで久城の行動がカギとなり、読者にも何かが見え始めるわけです。

文字で表現するとサディスティックな作風に思われそうですが、そこがまた本作の魅力でも。いつしか自分と久城が重なり、ヴィクトリカに振り回されながらも事件の核心へ近づく展開が快感と化し……。

こうした構成とバランス感覚には、原作者・桜庭一樹らしい巧みさも見え隠れします。ド派手なヴィクトリカのキャラを通すことで、カオスの欠片が様々な形に姿を変えていく様は、見事としかいいようがありません。

後の美少女ヒロイン系作品にも多大な影響が

物語が進むにつれ、ヴィクトリカの謎が過去に起因することも描かれます。旧大陸の失われし魔力を持つ、「灰色狼」の末裔でもある彼女は、父親からもオカルト兵器扱いされ、学園が事実上の軟禁城となる“囚われの姫”だったと……。

彼女の暗い過去と闇背景が“混沌の欠片”となる事件も起き、物語はさらなる深みへと進んでいきます。

と同時に、きれいなモノ、可愛いモノ、甘いモノ(ケーキやお菓子)が大好きな、14歳の少女らしい姿も垣間見せてくれるわけで。おどろどろしい怪事件が続く中、彼女の可憐さが一服の清涼剤となることは間違いありません。

やがて時代は、第二次世界大戦へ。離れ離れとなり、数奇な運命を辿ったふたりの運命は……そして感動の再会……。

エンタメ恋愛作品も顔負けな展開となるのですが、そちらは原作小説かアニメ版で。漫画版は全8巻。原作の物語の半分ほどで終わっており、消化不良な面は否めません。とはいえ、『GOSICK―ゴシック―』の世界観を手軽に味わえる、素敵な作品であることは確かでしょう。

ちなみに、作画の天乃咲哉は、後に『此花亭奇譚』(一迅社)~『このはな奇譚』(幻冬舎)を発表。アニメ・漫画版のキャラクター原案&原作小説のイラストを担った武田日向も、後の『異国迷路のクロワーゼ 』(KADOKAWA)がヒット。いずれも秀逸で可憐な美少女ヒロイン系作品として、今なおファンの熱い支持を得ています。武田氏が病で亡くなられたことは残念でなりませんが、『GOSICK―ゴシック―』を気に入られたなら、これらの作品も読まれてみることをお勧めします。

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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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