『ツーリンガール!』のように“ほんわか・ほっこり”なバイク漫画があってもいいじゃないか

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ツーリンガール!
『ツーリンガール!』(凪水そう/講談社)

ちょっと天然な不思議系バイク女子をヒロインに、ゆるふわなグルメ&温泉&アウトドア&バイクツーリング模様を描く『ツーリンガール!』。わかりやすい作風とはいえ、登場人物たちが描き出す価値観やライフスタイルに、「共感できるわ~」とハマる人が急増中なのだとか。

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ユルすぎて微笑むしかない物語が暖かく心地よい

ヒロイン・小梅は、兄からもらったビッグスクーター《シャンシャン号》(本人命名)で、温泉やグルメなど気ままなツーリングを楽しむ“ゆるふわ”OL。バイク漫画の中でも主人公がビッグスクーターを駆る作品は珍しく、都市部を舞台にしたリアルな日常系ドラマともいえそうだ。

その物語を敢えてキーワード化するなら、“ほんわか・ほっこり”。やたら温泉&入浴シーンが多いから“ほっこり”なわけではなく(笑)、ひたすらユルく、暖かく、そして心地よい。

このテの日常系&趣味作品では、“ほんわか・ほっこり”な雰囲気をイメージさせつつ、実は作者の主義主張が色濃く映し出された物語も少なくない。良くも悪くも独りよがりな、唯我独尊タイプの作品が多くなりがちだ。

でも、本作『ツーリンガール!』は一味も二味も違う。というか、あまりにユルすぎて、もう微笑むしかないじゃないか…と(苦笑)。不思議系ヒロインによって生み出された浮遊感が、何とも言えない魅力を醸し出していたりする。

著:凪水そう
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尾崎豊の世界など微塵も感じられないバイク漫画

とはいえ、それだけなら単行本1巻で飽きてしまうはず。でも、なぜか飽きない。その謎は、おそらくヒロインらしくない主人公キャラにある? 実は、彼女がほとんど登場しないエピソードも数多く、主人公は全エピソードの半分程度にしか登場しない。や、そんな作品はそうそうあるものじゃないって。

残り半分の物語は、主人公役を友人・知人・同僚など別キャラクターが務める(ヒロイン・小梅も数コマだけ登場)。ある意味、とんでもなく好き勝手な構成&作風ともいえるわけで。

だから飽きない。

決して深い物語や、シビアな人生劇場群像劇じゃない。辛い日常から離脱し、自身の世界に没入するためバイクを走らせる…なんてストイックな世界観とも、程遠い。バイク漫画=尾崎豊の世界的な概念など、これっぽっちも存在しない。

うん、そんなバイク漫画があってもいいじゃないか。

「なんかバイクっていいよね」と感じられる幸せ

もちろん、バイク好き・バイク乗りが共感できるメッセージには事欠かない。

「モーターサイクルとは不思議な乗り物だ」

「バイクのみならず、ヘルメット、ジャケット、全ての装備が高揚を呼ぶ」

「二輪には四輪とまた違った所有の感慨がある。ゆくぞ相棒!…って感じな」

「地下鉄で移動してたときにバラバラだった景色が、(バイクに乗って眺めると)思ってた以上にお隣同士で、繋がってる感じがして新鮮だった」

老紳士から中年男、イケメン男子、優等生女子など、様々なキャラが発する言葉は、バイク好き・バイク乗りの心を揺さぶるものばかり。バイク未経験な方には、「なんかバイクっていいかも」と思わせてくれるだろう。

彼ら(彼女ら)が跨る愛車は、スーパースポーツやアドベンチャー、ハーレーといった大型バイクから、クラシックな名車SR400やスーパーカブまで千差万別。ゆるふわな作風からは想像できないほど繊細・精密な車両描写に、バイク好きなら「おっ」と思うはず。エンジンの鼓動がリアルに伝わってくるような、まさに趣味の世界なわけで。

常識にとらわれない作風、やりたい放題なヒロインと温泉&グルメ、奥深いバイク描写。まったく噛み合わない、バラバラに思える構成要素が、なぜかひとつの作品を織りなす面白さ。このアンバランスな魅力は何だろうと思いつつ、また1話、さらに1話と読み進んでしまう不思議さ。それこそ、『ツーリンガール!』の本質…なのかも、ね。

著:凪水そう
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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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