四季折々の旬のコスパ最強のレシピとお酒が満載『金曜日のほろよい1000円ふたりメシ』

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金曜日のほろよい1000円ふたりメシ
『金曜日のほろよい1000円ふたりメシ』(おづまりこ/文藝春秋)

男子2人でルームシェアをするつばめとハルが何より楽しみにしているのは、「1000円でふたり分、三品のおつまみ」をお題に繰り広げる、毎週金曜日の夜の家呑み。山盛り餃子とレモンサワー、沖縄の郷土料理・ラフテーとオリオンビール、ポップコーンチキンとコークハイ、夏野菜の焼きびたしと梅干しサワー……などなど、四季折々の旬のコスパ最強のレシピとお酒が42品登場する。巻末には金額別索引や時間別索引も収録されている話題作だ。

著:おづまりこ
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やってみれば分かる「予算1000円で三品のおつまみを作る」ことの難しさ

登場人物は、築30年の2LDKのマンションを、大学時代からの友人同士でルームシェアしている24歳の会社員のハルと、駆け出しライターのつばめというたった2人だけ。ある日、料理上手なつばめが手際よく作ってくれたつまみに感動したハルは、「家呑みを毎週金曜日の恒例行事にしたい」と提案する。つまみの予算は1000円以内。買い出しと料理はつばめの担当で、ハルはつまみに合いそうなお酒を会社帰りにみつくろう。「おいしいおつまみ。お酒はほどほど。気心知れた友達と何気ないおしゃべり」。毎週末にこんな楽しみが待ち受けているとあらば、クライアントからの無茶な要求も、超タイトな締切も乗り切れそうだ。

実際に自分でやってみるとすぐに分かるのだが、「予算1000円で三品のおつまみを作る」のは簡単なことではなく、どんな食材でも活かすことができる料理の腕と、臨機応変に対応できる柔軟な発想の持ち主じゃないかぎり、あっという間に予算オーバーしてしまう。スーパーの野菜売り場や商店街の魚屋さん、お肉屋さんで目に留まったお買い得商品から連想ゲームのように逆算して献立を考えるからこそ、旬の食材が安く美味しくいただけるのだ。

遠足のオヤツに似た「シバリ」と「大人買い」の両立でより一層ワクワクできる

各章の見出しが「〇回目」ならぬ「〇杯目」であるところも気が利いている。台所で料理をしながらつばめがハルに献立をLINEして、それを見たハルが酒屋に立ち寄って、「あっさりめの洋食だから白ワイン?」「いや~でも、定番のビールも捨てがたい……」からの「あっ! ホワイトエール色々売ってる~!」「お酒代は払うから気になる銘柄買っちゃえ!」で、前からやってみたかったホワイトエールの飲み比べをする……という流れにも一気に心を掴まれた。遠足のオヤツの上限○○円以内と似た「シバリ」だけでなく、時には「大人買い」も出来るからこそ、より一層ワクワクしながら楽しめる感覚が味わえるのだ。

そうかと思えば、月末で金欠のハルが何とか知恵を絞って、悪戦苦闘する姿も微笑ましい。コーラだけを買ってきて家にあるウィスキーを割ってコークハイを作ったり、仕事で忙しいつばめに変わって、スーパーのお惣菜をアレンジして自分に出来る範囲でつまみを作ったり。酒とつまみの組み合わせにはかなりのセンスが問われるものだが、ハルのセレクトには目をみはるものがある。ウィスキー割りの日ばかりは「ほろよい」ならず、二人してぐでんぐでんに酔っぱらってしまうというのもご愛敬だ。

かつて料理上手な友人とルームシェアをしていた筆者は、ページを読み進めるたびに懐かしい日々がよみがえってきて、「あのとき作ってもらった料理、また食べたいなー」と思わずにはいられなかった。ちなみに筆者の思い出の一品は、その名も「(これ食べて)ちょっと待っててねサラダ」。ざく切りのキャベツに塩昆布をのせ、ごま油を回しかけただけの超シンプルなメニューだが、居酒屋のお通し以上のクオリティ。他にも絶品料理をたくさん食べさせてもらったはずなのに、パッと思い出すのはこのサラダだというのも、また興味深い。

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この記事を書いた人

インタビュアー・ライター。主にエンタメ分野を中心に、著名人のインタビューやコラムを多数手がける。多感な時期に1990年代のサブカルチャーにドップリ浸り、いまだその余韻を引きずっている。

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