プロ野球ファンなら誰でも知っている名捕手・古田敦也さん。その“フルタ”が、なんと“メガネ”に転生してしまった!? ちょっと何を言っているのかわからない、とんでもない野球漫画『古田敦也がメガネに転生した件』が爆誕したのです。
古田敦也のメガネに秘められた策士像を漫画化!?
元東京ヤクルトスワローズの古田敦也といえば、プロ野球ファンはもちろん、あまり野球に詳しくない方でも知っているレジェンドでしょう。憎めない表情と、トレードマークでもあるメガネとのコンビネーションが、親しみやすいキャラとしてテレビですっかり定着しています。
が、現役時代の古田選手を見てきた他ライバル球団ファンなら、あのメガネの裏に、類稀な策士の眼が秘められていることをご存知かと。他人を食ったような風体とプレースタイルに、「古田のヤロー!」と地団太踏んだ経験があるプロ野球ファンも多いのでは……!?
そんな最強のキーワード“古田敦也”&“メガネ”を、まんま漫画化してしまった恐るべき作品が、今回の『古田敦也がメガネに転生した件』なのです。
ツッコミどころ満載な野球漫画って……実は王道?
今や一ジャンルとして確立した感も強い異世界転生モノですが、そこで描かれる異世界は、大半がゲームから生まれた“異次元”世界だともいえます。
が、本作品の転生先は、現世と何ら変わらない日常世界。ただ、転生した姿がメガネだっただけのこと。
いや、“だけのこと”じゃないだろー、と突っ込んでもらってOK。基本設定からして、ツッコミどころ満載な作品ですから。
作品内に登場する古田敦也は、現役引退後の、まさに現在の古田敦也さん。その古田さんに突然、神の声が降りかかります。
「とある捕手を育てて欲しい。彼にはスター選手の素質がある」
「なんで俺が……」
「アナタが素晴らしい捕手だったから。拒否権はありません」
おい。(ツッコミ・その①)
そりゃ、異世界転生モノに拒否権がないことは既成の事実ですが……。(そうなの?)
「彼を一人前の捕手にするまで、アナタにはメガネになってもらいます」
おい!(ツッコミ・その②)
そう、古田敦也はメガネに変身してしまうのです。手足が生えた、ゆるキャラ的なモノではありません。ただのメガネ。フツーのメガネに。
そこで古田さんは……
「(メガネの姿で)どうやって育てんねん!!」
いや、そこかよ!(ツッコミ・その③)
もはや、何でもありな鬼設定。読み手は呆気にとられ、茫然と物語へ引きずり込まれるしかありません。でも、この“為す術がない”感覚が、けっこう快感だったり。
昨今の漫画は妙に親切すぎるというか、非常識だ! モラルに欠ける! などの批判を恐れ、予定調和的な設定・物語になりがち。昔の漫画はもっとパワフルで、滅茶苦茶なところも面白かった……!などと感じていた方にとって、『古田敦也がメガネに転生した件』はド直球の王道漫画だったりするわけです。
面白おかしく感動的な《古田敦也物語》が誕生?
メガネに転生したフルタが出会う井手くん(メガネ使用)は、無名校で「グズでノロマで捕手失格のゴミメガネ」扱いされる高校球児。ひょんなことから“自称・古田敦也の喋るメガネ”を手に入れた彼は、やたらおしゃべりな関西弁がちょっとウザいフルタのアドバイスで、みるみる名捕手へ成長していきます。
なんと安直な……。いや、それでいーんです。野球漫画に、小難しい設定や条件を求めてはいけません。野球という競技の面白さが、きちんと描かれていればOK!
本作品も、多くのファンが納得する野球の妙や面白さ、魅力を伝えてくれる作品でしょう。作者も、かなりの野球好きなのでは?
ちなみに、古田敦也さん自身も高校時代は無名で、一般受験で進学した大学で野球を続けるもドラフトにかからず、一般新卒採用で社会人へ。そこで結果を残し、3年後にようやくプロ入りを果たした苦労人です。
古田さんは「メガネの捕手は成功しない」定説を打ち破ったことでも知られますが、そうした無名選手の成り上がり劇場が、本作品のベースともいえそうです。見方を変えれば、面白おかしい“古田敦也物語”としても成立しているわけで。キワモノ作品扱いせず、実録的な野球漫画として読み進めれば、きっと楽しめるはずですよ。
ただ、本物の古田さん(笑)がメガネをかけ始めたのは、受験勉強で視力が落ちてしまった大学時代から。そこはちょっと違う設定なので、念のため。