『曽山一寿のでんぢゃらすじーさんだけじゃねぇ!!』にはあの『コロコロ』の看板ギャグ作品の裏側も……笑い、胸が熱くなるエッセイマンガ

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『曽山一寿のでんぢゃらすじーさんだけじゃねぇ!!』(曽山一寿/小学館)
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『コロコロ』“卒業”間際に現れた『じーさん』の衝撃……その作者・曽山一寿とは

「『コロコロ』を“卒業”して、『ジャンプ』を読み始めて……」。筆者と同年代、2023年時点で20代後半~30代前半のマンガ好きに雑誌からその遍歴を尋ねれば、特に男性だと100人中80人~90人くらいはこの過程を通るのではないだろうか。90年代後半から00年代前半にかけて小中学生として過ごしたなら、『ポケットモンスター』(穴久保幸作)の「月刊コロコロコミック」(小学館)から『遊☆戯☆王』(高橋和希)の「週刊少年ジャンプ」(集英社)への流れはある種のお決まりだった。

そんなアラサー前後のマンガ好きにとって、『コロコロ』で印象深かったに違いないはずの作品のひとつに、『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』(曽山一寿/小学館)がある。腹巻きにランニングシャツ姿で、頭頂部の逆立った数本と側頭部にだけ毛が残るハゲ頭、立派な口髭という外見の“じーさん”が、小学生の“孫”や孫が通う小学校の“校長”らを巻き込みハチャメチャな日常をおくる。下ネタはもちろん死亡ネタも頻出する、いわゆる不条理系のギャグマンガだ。

現在もなお『なんと! でんぢゃらすじーさん』(曽山一寿/小学館)として長期連載中の『じーさん』だが、読み切りを経て連載が始まったのは2001年。筆者と同年代なら、恐らく『コロコロ』を“卒業”する間際ぐらいの一時期に触れた「懐かしの衝撃作」だろう。一方で「『じーさん』の絵柄」自体は、ネットユーザーなら最近でも見た覚えがないだろうか。『曽山一寿のでんぢゃらすじーさんだけじゃねぇ!!』はたびたびバズを起こしている、『じーさん』作者の曽山一寿がSNSやブログで発信しているマンガ「そやまんが」を、書籍にまとめた一冊となる。

「サインくれ」の数だけサイン……“卒業”して分かる、『じーさん』の“変な作者”の凄さ

『コロコロ』掲載作ほか児童向けマンガの全般的な傾向のひとつに「作者と読者の距離が近い」ことが挙げられるかと思うが、曽山もそのひとり。単行本を開けば、各エピソードの合間の「そやまんが」で頻繁に登場してくれるのも大きかった。丸メガネをかけた自画像や、いかにも『じーさん』作者らしい人柄(「サインくれ」で埋め尽くされたファンレターに、書かれていた「サインくれ」の数だけサインを送って応えた逸話などは筆頭だ)を、小学生当時でも強く認識していた『じーさん』読者は少なくないだろう。

『曽山一寿のでんぢゃらすじーさんだけじゃねぇ!!』はそんな、“いかにも『じーさん』を描いてる変わった作者”として曽山の名を認識している(していた)、『じーさん』を“卒業”した読者にこそぜひ読んでほしい一作だ。「20代前半から『コロコロ』で児童向けギャグマンガの連載を続けている」凄さは、“卒業”したからこそ分かるもの。日常の話が中心の本作にはその節々に、人気児童向けマンガ家ならではの目線や感性を覗くことができる。

……と、堅苦しい書き方をしてしまったが、本作の魅力はとにもかくにも、大人になった身で読んでも「あの『じーさん』の絵柄のマンガ」が面白いところだろう。作中、曽山が「う○こちんちんギャグしかかけない」と自嘲する話があるが、それで子どもも大人も笑わせるのが、いかに難しいことか。曽山はかつて、インタビューで「うんこひとつとっても、面白いうんこと、面白くないうんこがあると思うんです(笑)」と語っているが、本作を読むとその意味するところがよく分かる。かつての『じーさん』読者はまず笑い、そしてその技に感心しながら楽しめるはずだ。

小学生の時に『じーさん』で笑った思い出……「ダメな理由」など胸が熱くなる話も

ギャグマンガ家らしく、日常ひとつ切り取っても笑わせてくれる話が多い本作だが、その一方で「好き勝手に」描いただけある、マンガ家としての苦心やその胸の内なども大きな見どころだ。どきりとするタイトルだが、第5章として収録された「でんぢゃらすじーさんがダメな理由」などは特に、『コロコロ』、そして『じーさん』を“卒業”したマンガ好きにはぜひ目を通してほしい。『じーさん』の「う○こちんちんギャグ」や死亡ネタで頭を空っぽにして笑わせてもらった思い出がある元小学生なら、胸が熱くなること請け合いだ。

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この記事を書いた人

アニメやマンガが得意な(つもりの)フリーライター。
大阪日本橋(ポンバシ)ネタやオカルトネタ等も守備範囲。
好きなマンガジャンルはサスペンス、人間ドラマ、歴史・戦争モノなどなど。
新作やメディアミックスの話題作を中心に追いかけてます。

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