“ひとりの”少年の大きな秘密と恐るべき目的……コミカルでシリアスな『ミギとダリ』

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『ミギとダリ』(佐野菜見/KADOKAWA)
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「慎重に事を進めよう。ひとりの人間として」双子の“二人一役”のはじまり

「子に恵まれなかった私達がひとりの少年の親になるなんてね」。1990年の神戸市北区、アメリカの郊外をモデルに造られたニュータウン・オリゴン村。そこに暮らす裕福で穏やかな老夫婦・園山夫妻のもとにある日、児童養護施設から“ひとりの”少年……秘鳥が養子としてやってきた。夫妻の大歓迎にとびきりの愛らしい笑顔で応えた秘鳥は、案内された自室は自分だけで飾りつけると申し出ると、まずはひときわ大きな箱の封を解いていく。

「片すぞ」「あぁ」。そこから現れたのは、なんと秘鳥に瓜二つの少年だった。秘鳥は実は、“ミギ”と“ダリ”という双子なのだ。部屋を見事な手際で整えた彼らは、そのままふたりで秘鳥を演じながら、食卓では養母が作りすぎた夕飯を綺麗に平らげ、食後は注文の多い養父の肩もみを華麗にこなした(なにせ、全てふたりがかりだ)。「慎重に事を進めよう。ひとりの人間として」。ふたりでひとりの人間を演じる彼ら、はたしてその秘密と目的とは。

著:佐野 菜見
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『坂本ですが?』著者のシュール&スタイリッシュな「笑い」に「シリアス」が加わると……?

書き込みの多い繊細かつ美麗な画面で、読者のツッコミが空を切るシュールかつスタイリッシュなギャグが飛び交う……。著者名を見ずとも、この独特の「笑い」にピンと来るマンガ好きは多いのでは。あの『坂本ですが?』(KADOKAWA)の佐野菜見による、ミステリアスな双子を描いたのが『ミギとダリ』だ。昨年末に最終巻7巻が発売され、TVアニメ化が進行中の本作は、作者らしい「笑い」に加えてそのタッチに似合う「シリアス」な展開も見どころとなる。

舞台となるオリゴン村は、まるで欧米のホームドラマのような雰囲気を醸す空間だ。園山夫妻ら住人たちも“いかにも”なクセ者揃い。ナチュラルに大袈裟な立ち振る舞いをしてしまう彼らの輪に、作者らしいシュール&スタイリッシュなギャグがこれまたばっちりハマる。しかし、第1巻の最終盤で明かされる、双子の秘密と目的を踏まえるとこれが一変。「HAHAHA」のSE(サウンドエフェクト)が幻聴で聞こえてきそうなこの村に、一気に不穏さも漂ってくるのだ。

どこまでも真剣、しかしギャグという「二人一役」の面白さ――その行き着く先には……

当人たちはどこまでも真剣、しかし読者からするとギャグでしかないミギとダリによる「二人一役」の数々。「なんでそうなる」というシュールなギャグにクスリとしつつ、ハラハラしながらその暗躍ぶりを追う楽しさがある。物語が進むにつれ、「家族」を知らなかった彼らが学び、成長していく姿も胸を揺さぶる。やがて「笑い」から「シリアス」へ比重が高まっていき、迎える結末とは。ぜひ、まさかのエンディングまでたどり着いてほしい。

著:佐野 菜見
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TVアニメ『ミギとダリ』メインPV 

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この記事を書いた人

アニメやマンガが得意な(つもりの)フリーライター。
大阪日本橋(ポンバシ)ネタやオカルトネタ等も守備範囲。
好きなマンガジャンルはサスペンス、人間ドラマ、歴史・戦争モノなどなど。
新作やメディアミックスの話題作を中心に追いかけてます。

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