『運命の女の子』――運命の歯車が動き出す出会い。誰かの人生を変える少女たちを描いた長編漫画作品集

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運命の女の子
『運命の女の子』(ヤマシタトモコ/講談社)
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人生を変える運命の出会い――その先にある未来とは

人はひとりで生まれ、ひとりで最期を迎えるにもかかわらず、決してひとりで生きていくことはできない。人生には大小問わず数多の出会いがある。中には、その後の人生を大きく変えるものもある。人生に大きな影響をもたらす“運命の人”。彼(女)が導く先は、幸か不幸か。出会った時には分からない。

読者の皆さんはもう“運命の人”に出会っただろうか。

『運命の女の子』は、他人の人生にさまざまな影響を与えた3人の女の子を描いた、長編読み切りを集めた作品集。他にはないオリジナリティー溢れるストーリーで、不思議な読後感が味わえる。

出会いを選ぶことは難しい。その出会いは「始まり」か「終わり」か。出会うべき人、出会ってはいけない人、その両者が登場するので、自分の人生と照らし合わせながら“運命の女の子”との出会いを体験してほしい。

3編の物語が収録されている本作。

大量殺人を犯した女子高校生と女性刑事が対峙するホラーサスペンス「無敵」、冴えない見た目の女の子に惚れたハイスペック高校生のほろ苦い初恋を描いた「きみはスター」、出生時に呪われる「出生時呪印制度」がある世界で唯一呪(スペル)のかからなかった少女と、彼女を愛する少年の冒険譚「不呪姫(のろわれずひめ)と檻の塔」。 まるで異なるストーリーだが、どれも出会いの尊さがよく分かる。良い意味でも悪い意味でも、出会いは人生を確実に変えるのだ。

著:ヤマシタトモコ
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美しい作画と強烈な個性を放つ物語。これぞヤマシタトモコワールド

斜め上をいく構成、ストーリーには思わず舌を巻く。ジャンルも設定も異なる3作だが、どれも実に奥深く、余韻が残る。

ただ、必ずしも起承転結があるわけではないので、理路整然としたストーリーを好む人には合わないかもしれない。

作画は美しく、小さな変化まで丁寧に描かれた表情はセリフよりも雄弁だ。シンプルながら効果的なコマ割りでスピーディーに読み進めることができ、情景描写が少ないながら容易にその世界観に入り込めてしまう。

事件当時と現在が入り乱れる「無敵」の構成は、切迫感があって素晴らしい。“出会ってはいけない人”の恐ろしさに満ちている。

サイコパスを見抜くことは難しい。通常の人間には、その思考はなかなか理解できないだろう。だが、世の中には底知れぬ恐ろしさを持つ人間も存在する。

筆者のお気に入りは 「きみはスター」。未成熟ならではの思考がよく表現されていて、初恋の苦味と甘酸っぱさが感じられる。共感性が高く、登場人物それぞれの抱える思いを、誰もがきっと理解できるはずだ。

「不呪姫(のろわれずひめ)と檻の塔」は、一風変わった設定のファンタジーラブストーリー。シンプルに、「運命を変える愛」に憧れてしまう。そんな美しいラブストーリーの中に、「誰かの犠牲の上に成り立つ幸福は決して続かない」という真理が巧みに描出されている点も秀逸だ。

出会いの奥深さが独特の世界観で描かれた本作。

さらっと読めて、一度に3タイプの優れた漫画が楽しめる。不思議と心に残るヤマシタトモコワールドに触れてみてほしい。

特徴的な作家性が随所に見られる異彩を放つ作品集

『運命の女の子』は、ヤマシタトモコ氏による、ジャンルの異なる3編が堪能できる作品集である。月刊の青年漫画雑誌「月刊アフタヌーン」「good!アフタヌーン」(いずれも講談社)にて2014年に掲載された3作品をまとめた単行本。

多彩な漫画雑誌で活躍し、多くの代表作を持つヤマシタトモコ氏の作品は、独創的なストーリーが魅力なので、他作品でハマってしまった人にもぜひ一読いただきたい。“ヤマシタ氏らしさ”が十分に味わえることだろう。

出会いは運命を変える。今人生に行き詰まっている人も、新たな出会いが現状を打破してくれるかもしれない。……出会う相手を間違えてはいけないが。

特徴的な絵柄は健在で、どの人物にも形容できない美しさがある。文字通り、人気漫画家の作品集として手に取るのも良いだろう。

著:ヤマシタトモコ
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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