『アフターゴッド』―「神とは何か」が見えてくる、一風変わった壮大で深奥なストーリー

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『アフターゴッド』(江野朱美/小学館)

※ややネタバレあり

目次

未知なる神を真っ向から描いた稀有なダーク作品

神とはいかなる存在か。その姿形はひとつではなく、その存在を証明できる者はいない。

証拠もないのに数多の人が信じる不可思議な存在。無神論者が多いとされる我々日本人でさえ、その存在を信じ、感じる瞬間がある。

神とはすなわち未知である。当然ながら人智を超えた“何か”であり、説明するに適した言葉はない。

そんな神と戦う人間たちを描いた『アフターゴッド』は、神々に侵攻された世界で神の撲滅を目指すダークファンタジー漫画だ。

倒すべき敵となるのはありがちな日本の八百万の神を登場させたものではなく、人々が「神」とする謎の巨大生命体=IPO(Idolatry Prohibited Organism、偶像崇拝禁止生命他)である点が大変興味深い。ただ漠然と神が在るわけではなく、「神とは何か」を捉えんとしている。既存作品とは異なる斬新な切り口と観点から神の存在に迫っている。神は見る者によって姿を変える。果たしてそれは本当に万能か、崇めるべき存在で在るのか。

ひたすらに好奇心をくすぐられるテーマは、(筆者を筆頭に)小難しい宗教論が好きな読者にはたまらない作品と言えるだろう。

舞台は、神とされる正体不明の巨大生命体の出現により、東日本のほとんどが全域危険区域に指定されている日本。

神の撲滅を目指す組織・対神科学研究所に属する時永倖行は、ある時友人を追って佐賀から上京した少女・神蔵和花と出会う。

神(IPO)の目を持つ和花は、研究所の職員となり、時永と同じアパートに住むことに。そこで、時永と仲の良い住人・帯川清と知り合う。

引越し後すぐの休日に他の職員らと京都へと向かう中、一行は危険区域にいるはずの蛇神に襲われてしまう。職員が次々に倒れ、ついに蛇神は正体を現す。果たしてIPOとは何か。人間に神を殺すことはできるのか…。

著:江野朱美
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重いテーマを芸術的に魅せる繊細かつ美しい作画に息を呑む

挑戦的なテーマはさることながら、美麗かつアーティスティックな作画、説明的でなくとも説得力のある構成、飽きさせないスピーディーな展開、躍動感のあるアクション描写、魅力的なキャラクター…どこを切りとっても素晴らしい。

若干の難解さはあるものの、その際立った描写力により、気付いた時には独自の世界観に引き込まれている。キャラクターごとに異なる衣装、神から目と口を隠すために身に付けるマスクなど、細部に至るまで個性的かつ美しい。

また、テンポ良く進むストーリーはシンプルながら奥が深い。

家庭環境に恵まれなかった和花の親友・しをんは、自ら神に会いに行った。無論それは死を意味する。死を魅力的なものにした神とそれを信仰する人間を恨む和花を、時永が根拠を以って諭すシーンがある。そのように、本作では淡々と進むセリフの中にも神の正体が隠されている。

IPOはカメラや鏡ごしには目視できない。「自分の目で見たものしか信じない」人は神の存在を認めない。即ち神とは、そういうものだ。

本作における神の解釈はなかなかに奥深く、それを読むだけでも面白い。

IPOと目が合うと体が硬直し、口に息を吹き込まれると水になる。原理も道理もなく、どこまでも無秩序。本作でも現実世界でも「神は全てを超越する存在」、これだけは確かである。

ストーリーはまだまだ途中。IPOが人間社会で暮らすと人間化する(かもしれない)という可能性が提示されますます状況は混迷を深めてきた段階だ。

万能なる存在に立ち向かう術はあるのか、神は何を以ってして神なのか、これからが楽しみで仕方ない(ただ、昨今の漫画作品の主流なのか、キャラクターの立った人物がいとも簡単に退場してしまうのは少し寂しい…。推すに推せない…)。

ウェブでは認識しにくい描き込みを単行本で味わう

『アフターゴッド』は、江野朱美氏による、神に侵攻された世界で神殺しに挑む人間を描いたダークアクション漫画である。

小学館によるウェブコミック配信サイト『裏サンデー』にて2021年より配信中、既刊3巻。最新刊となる4巻は、2023年3月17日発売予定。

Webコミックなので、PCやスマホを開くだけで最新話にすぐアクセスできる。Webコミック作品は、最近ヒット作が続いており時代の流れを感じるが、私は本作に関しては、是非紙の単行本をおすすめしたい。

書き込みが売りの作品なので、人によるかもしれないが、電子に比べより繊細かつ大胆な表現と構図を堪能でき、どっぷりと世界観にハマることができる。

どのキャラクターも個性的に描かれていて大変素敵だが、私は何より、キャラクターが身に着ける眼帯やマスクなどの小物に惹かれた。作画においてセンスの良さが輝いている。

とにかく今後に期待大の一作。

話題に上ることも増えた神(新興宗教)の存在。本作に触れ、自身の感性で「神とは何か」考えてみるのも良いだろう。

著:江野朱美
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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