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雛人形の“「頭師」を目指す男子高校生とコスプレ好きギャルによるラブコメには、“好き”に素直になりたくなる素敵さがいっぱい――『その着せ替え人形は恋をする』

『その着せ替え人形は恋をする』(福田晋一/スクウェア・エニックス)

エッジの効いた設定が興味をそそる作風

つい先日、最新巻となる8巻が発売され、2022年1月からテレビアニメが放送されることも発表された『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』。ちょっと刺激的なタイトルではあるが、趣味や憧れ、恋といった実にさまざまな“好き”が詰め込まれている傑作だ。その好きの中の大きな要素としてコスプレがあるというのが本作ならではの味付けとなっている。

本作は、雛人形の顔を作る「頭師」を目指している男子高校生・五条新菜(ごじょう・わかな)と、コスプレ好きのギャル・喜多川海夢(きたがわ・まりん)の2人を中心にストーリーが展開。趣味などの違いから周囲となじめない新菜、反対に常に友人たちの輪の中心にいる海夢という、まさに“正反対”の2人がふとした“接点”から関係性を深めていく。[頭師]にコスプレなど、一見すると飛び道具的な要素もあるが、全体的なノリとしては学園もの&ラブコメとしても楽しめる。

王道×今どきな描き方、そして名言の数々が心にしみる

自分が好きなことが同世代とは違いすぎるため、輪を乱してしまうのでは……という考えから友だちを作らない新菜。そんな彼が自分の“好き”を隠さず臆さず真っ正面から貫く海夢と出会い、「好きなものに男とか女とかって関係なくない?」「人の好きなものバカにすんなよってなるでしょ」「自分の気持ちは自分の為に言わなきゃダメだよ」など、とにかく心に刺さる言葉の数々を浴びせられる。これにより、次第に自分の気持ちと向き合えるようになっていく姿が、見ていてすがすがしい。

もしかしたら“今どき”なのかもしれないが、積極的な女子にワケあって消極的な男子という組み合わせに、さらに「頭師」とコスプレイヤーなる要素を掛け合わせるあたりが絶妙。年齢によっては言いづらい側面もあるのだろうが、やはり好きなものは好きと言いたいし、誰にコソコソするでもなく楽しみたいもの。そんな思いが、2人のやり取りを通じて深く熱く伝わってくる作風は、何かしらの趣味や推しを持つ人ならきっと響いてくるはずだ。

世界観とマッチした絵のタッチがストーリーを華やかに演出

ヒロインがコスプレをするという設定が生かされているのはストーリーだけではなく、絵のタッチともベストマッチ。キレイでありながらキュートさも漂わす画風は見事で、物語を彩ってくれている。脇役として登場するコスプレイヤーたちのビジュアルも素敵で可愛い。

ラブコメなので、ちょっとハイテンションなノリやシュールなコメディ要素なども散りばめられ、もしかしたら好みが分かれるかもしれないが、コスプレに関するあれこれや、何より好きなものに素直になる素晴らしさがどこまでも描かれているので、普遍的に人を引きつける要素が散りばめられている。いくつになってもその“ピュア”な気持ちは大事にしたいものだなと、素直に思わせてくれる。

自分が夢中になっているもの、熱中しているものなどが仮に近しい人と共有できなかったとしても、そんな自分を恥ずかしいと思うのはちょっと違う。きっと同じような思いをしている人は世の中には大勢いるはず。好きな気持ちには嘘はつけない。そんな“当たり前”なことが、つくづく大事だと改めて気づかせてくれる一作だ。

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