美少女型の汎用家電ロボットという、独身一人暮らし男子には夢のような未来家電が大活躍(!?)するドタバタコメディ『フルチャージ!! 家電ちゃん』。オーソドックスなセンスながら捧腹絶倒ギャグが連続する物語は、何かと閉塞感がある日々にこそ読みたい作品なのです。
ありそうでありえない夢のハーレム設定
ごく普通のアパートで暮らす、典型的な一人暮らし男子・ヒロト。ネット通販で洗濯機を注文した彼が、届けられた大荷物を開封すると……なんと中に美少女の死体が!?
ではなく、美少女型の汎用家電ロボットが入っていたのでした。
おいおい。
と、いきなりブッ飛んだ設定から始まる物語は、思わず吹き出す捧腹絶倒ギャグを連発しながら、ノンストップなジェットコースター展開へ。コミックス1巻から読み始めたなら、もう2~3巻でお腹いっぱいになるほど!?
ありそうでなかった美少女型の汎用家電:・アイは、怪しげな研究所で開発された最新型(?)ロボット。一般家庭で実地試験を行うはずが、誤ってヒロトの元に届けられてしまったという、これまたありそうでありえない夢のハーレム設定……なのですが、不思議と違和感がありません。
「何でもあり」な異世界転生系ハーレム物語と違い、日常ライフをベースにした架空・近未来設定では、物語導入部の違和感が成功のカギになります。違和感があっても、それが無理なく受け入れられるものなら、むしろ作品の魅力に繋がるわけで。
『おりたたぶ』でも発揮されていた独自センス
その点、本作は「たいへんよくできました」。実にスムーズな導入と物語展開からは、作者のセンスが感じられます。
作者・こんちき氏は、本サイトでも紹介済の別冊少年マガジンで連載していた『おりたたぶ』(講談社)など、他作品でも独自のセンスと才能を発揮しています。良くも悪くもマガジン的な要素を盛り込んでいた『おりたたぶ』と、いかにもジャンプ的な色合いの本作が同じ作者だとは、言われなければ気づかないかもしれません。
それほど少年誌連載に積極的ではないようですが、こうした描き分けからも、作者のセンスが十分に感じられるはず。『フルチャージ!! 家電ちゃん』『おりたたぶ』とも連載は終了していますが、今後の新連載が楽しみな作者として、チェックをお忘れなく!
同人系イラストレーター・ゲーム原画絵師としても活躍する作者だけに、基本的な画力は問題なく高レベル。ドタバタコメディでキャラの動きが爆速な本作でも、原画に破綻は見られません。ギャグ漫画だからこそ、画力の高さ=笑いに集中できる安心感が重要だともいえます。
近未来ロボットなのに……はちゃめちゃなアナログ感!?
ヒロインとなる美少女型の汎用家電・アイは、「より人らしく褒められる喜び」を感じるように作られた新時代型ロボット。おかげで、何かとやりすぎての失敗も多いわけで……。
超天然な世間知らずだけれど、相手に尽くす心と一生懸命さは人一倍で、真っ直ぐな美少女…は、男子向け作品の理想的ヒロイン像のど真ん中だったりも。
背中からコンセント型の電源ケーブルが伸び、その長さ以上に動こうとしてブチッ(コンセントが抜ける音)……となるのが玉に瑕。アイいわく、コンセントを抜く強制終了は身体に悪いとのこと。うん、パソコンも電源落とし強制終了は不具合の元だからね……って、おい。
「他の家電に負けたくない気持ちを原動力に自分で頑張る」能力も加味され、他の家電には異様なほど敵がい心(ライバル心?)を燃やしちゃいます。時に暴走し、バットで洗濯機をぶち壊したあげく「あれ、私、なんでバットを握ってるんですか?」。
反省して自身を洗濯機に改造してもらうなど、よくわからないアナログ感も親しみやすさ&楽しげな作風を醸し出します。近未来型ロボットの物語なのに、ちっともデジタル臭くない。こうしたアンバランス感が生み出す魅力は、先の『おりたたぶ』とも相通じるものがあるのでは。
そんな憎めない&健気なアイと、ヒロトの不思議なドタバタ新生活は、果たして……!? お試し(実地試験)期間が終了を迎え、アイの買取or回収の決断を迫られたヒロトは……!? 最後までテンポよく読み進められるはずですが、新たに登場した高性能の家庭支援型ロボット・ケイ、量産型ロボット・フミといった追加キャラの物語も、もう少し読みたかったかも……。