どこまでが伏線なのか……。「魔法汚染」に蝕まれた世界でくり広げられる冒険活劇は、仕掛けの妙と考察心をくすぐる要素が盛りだくさん――『最果てのソルテ』

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最果てのソルテ
『最果てのソルテ』(水上悟志/マッグガーデン)
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異世界やループ、魔法といった要素を“小道具”に描く「ハイ・ファンタジー」

マンガには数多くのジャンルが存在するが、好きな部類に入るもののひとつがファンタジー。これまでにもさまざまな作品を読んできたが、現在読み始める前に想像していたよりも、強く引きつけられているのが『最果てのソルテ』だ。本作は異世界を舞台にした「ハイ・ファンタジー」で、対になる言葉として現実世界を舞台に非現実的な要素を盛り込んだ「ロー・ファンタジー」がある。

面白い作品を読むうえでジャンルは関係ないが、そのあたりも頭に入れつつ読んだ方が、味わいがより深まるかもしれない。というのも、本作は走り出しから情報量がとにかく多く、それでいて軽快なタッチとテンポ感でストーリーが進行。そのため、そこかしこに仕掛けられた“伏線”の数々をともすると見逃してしまいそうになるからだ。もちろん、それぐらいのめり込める物語なのだが、せっかくなので考察を楽しみながら読むのが、本作における極上の楽しみ方だと思う。

そもそも『最果てのソルテ』は、かつて起きた大きな戦争により、「魔法汚染」に蝕まれてしまった世界を舞台に、「何でも知ってる大人になりたい」と願う主人公・ソルテが冒険の旅へ……というストーリー。異世界ものの王道であり、そこにはループもあれば魔法もあり、とにかくファンタジックな設定が目白押しだ。

ところが本作の各要素はあくまでも“脚色”や“演出”に必要なエッセンスであり、物語の核は読者から見えているようで見えていないように感じられるところにあるのだ。すべてのファンタジー要素は本作に不可欠なことは間違いないだろうし、グッとくる魅力があるのも疑いようがない。だがすごみは、やはり別のところにあると思う。

著:水上悟志
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小さなものから大きなものまで、各所に散りばめられた伏線がドラマを彩る

壮大な世界観と緻密に練り上げられた伏線でグイグイと引き込んでくれる本格派のファンタジーと呼べる本作。伏線が多い作品と聞いて敬遠してしまう人もいるかもしれないが、その点は安心してほしい。

本作は、大人になったソルテと思われる人物が、自身の過去を思い出語りする形式でスタートするが、「小さなセレン」「死にたがりのフィロ」「物知りブラック」、そして「幸運なソルテ」という、パーティー(登場人物)4人のカットインと共に描かれる冒頭からして、すでに仕掛けはスタンバイ。

なぜそう呼ばれているのかは次第に明かされていくのだが、世界観やキャラクターなどの必要な設定に関する膨大な情報量を、見事に交通整理しつつ興味を持続させる形で提示してくるネームは、まさに抜群で読み応え満点といえる。

さらに、あるキャラクターは“ループもの”でいうところの「2周目」なのだが、何気ないセリフの中にそっと出てくるものの、ストーリーの小気味よさをそぐことはなく、ソルテと同じ目線で謎に迫っていける体感はまさにワクワクしてしまう。

巻末収録の特別読切まで……徹底した仕掛けぶりとテンポ感あるストーリーに興奮

しかも単行本派にとっては、各巻末の“引き”もまたお見事で、とにかく続きを早く読みたくなってしまう爆発力がある。特に2巻ラストで描かれたブラックの過去に関する描写により、また新たな謎が存在したことが判明。極めつけは2巻収録の特別読切『異世界エッセイ』だ。

巻末収録のちょっとした息抜きマンガかと思いきや、その内容やラストまで読んだ時、きっとあなたも1話目から読み直したくなるはず。こんなところにまで仕掛けを忍ばされているとは、まさに伏線や考察が好きな人からすると、ストーリーを一度堪能した後、ギミック探しでもう1周という読み方を試してみたくなる衝動に駆られるのでは。

魅力的なキャラクターに、次々と放り込まれてくる多様な味付けは、まさに濃度が濃すぎてクラクラしてしまいそうになるが、読者にそう感じさせず純粋に楽しんで読めるのは、主人公のソルテの芯の強さと真っ直ぐさもひと役買っているのかもしれない。

“伏線もの”は完結してから一気読みしたくなるものだが、進行中のストーリーを追いかけながら独自の考察をくり広げるのもまた格別。謎や伏線、そして考察が好みという人は、是非ぜひとも『最果てのソルテ』の世界へと足を踏み入れてみてほしい。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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