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元マタギの狩猟勘がバーチャル世界で光る! まさかの“マタギ×eスポーツ”――『マタギガンナー』

『マタギガンナー』(原作・藤本正二、作画・Juan Albarran/講談社)

引退した老マタギ、新たな銃は“FPSゲームのコントローラー”

妻に先立たれ、北国の田舎で一人暮らしをする元マタギの老人・山野仁成はある日、不当投棄された家電から見慣れない一台を自宅へと持ち帰った。ビデオデッキのケーブルで起動できたそれは、なんとゲーム機。中には海外で流行中のFPSゲーム(「First Person Shooter」、一人称視点のシューティングゲーム)のディスクも挿入されたままだった。“ビデオデッキのトラブル”で呼んだ電器店員に扱えるのか訝しまれつつもプレイ環境を整えてもらった山野は、そのまま何の気なしにゲームをプレイし始める。

手探りで本名そのままのプレイヤー名を設定し、「日本男児らしい顔つきに」と納得のいくキャラクターをこしらえた山野だったが、当然ながらFPSゲームそのものも、プレイヤー間のコミュニケーションで飛び交う英語も何も分からない。しかし、「撃たれないように逃げる」「応戦する」「足音で敵を察知する」といった、マタギで培った勘や経験をそのまま活かせることに気付き始めると、状況が一変。2年後、ちょんまげにふんどし一丁の「山野仁成」は、ゲーム内で謎の凄腕スナイパーとして一目置かれる存在となっていた……。

北国の狩猟者・マタギの狩り場が“FPSゲーム”!? 異色の発想を落とし込む説得力

マタギを生業とするキャラクターの中で、最近の筆頭を挙げるとするならば、やはり『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)の主要キャラクターのひとり・谷垣源次郎だろうか。古いところなら、『釣りキチ三平』(講談社)で知られる矢口高雄の『マタギ』の主人公はそのものずばりだ。マンガでもたびたびその生きざまが描かれる北国の狩猟者・マタギだが、FPSゲーム内で“ガンナー”として無双させるのは、ありそうでなかった発想だと思わず膝を打った。“マタギ×eスポーツ”の『マタギガンナー』だ。

暇を持て余した元マタギの老人が、死と隣り合わせの狩人として培ってきた勘や経験を活かし、FPSゲームで無双することに……という筋書きだけだと異色だが、それが浮く印象がないのは設定を落とし込む丁寧な描かれ方ゆえ。いかにも“堅物で気難しそうなおじいちゃん”の山野が、元マタギらしい柔軟な状況判断ぶりでゲームの勘どころを押さえ、気付けば季節が二回りするほど没頭することで強者に……という冒頭の展開が説得力を生む。英語が分からないためにゲーム内で無口なことが、寡黙な素の山野に通じる設定も上手い。

また題材が題材だけに、銃撃などのアクション描写も大きな見どころ。作画を手掛けるJuan Albarranはスペイン出身で、『Justice League』や『Suicide Squad』に携わった経験を持つというから目を引く(作中ゲームに登場するモブキャラなどに、その経歴が垣間見える)。一方、全体としては掲載誌の「モーニング」(講談社)作品としてまったく違和感がないのは、『この世界は不完全すぎる』(講談社)の左藤真通のもとでアシスタントをしていたことが本作のきっかけ、と知れば納得のもの。制作陣も異色の作品なのだ。

主人公は“凄腕プレイヤー”ではなく、あくまでも“元マタギ”――ゲームと現実が交差する今後の展開は……?

あえてジャンルを分類するとしたら“eスポーツもの”になるだろうが、主人公の山野は“凄腕プレイヤー”ではなくあくまでも“元マタギ”だ(第1巻には、彼のマタギとしての「実戦」も描かれる)。細かな事前知識がなくとも、“ゲームプレイヤー”視点に没入しなくとも楽しめるのは、増えつつある“eスポーツもの”の中でもゲーム文化に距離のある主人公を立てた本作ならではの持ち味だろう。第1巻ではそんな山野にさっそく、ゲームと現実が交差する展開も。渋さの光る“eスポーツもの”、新たな狩り場での老マタギの生きざまに期待だ。

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