魔法や魔法少女が「システム化」された世界観にときめき
皆さんはヒーロー・英雄というものを、どのような存在に感じているだろうか。「世界を救う」「人類を救う」的な存在。たしかに、それらは間違いなくヒーローだろう。ただし、いずれにしてもヒーローは特別な存在であり、ほかの人にはマネできないような特殊の能力を有しているのがスタンダードだ。
ところが、そんなヒーローを社会の経済活動の中にあるひとつの職業として扱うと……。本作はまさにそのパターンをベースにした作風なのだが、職業として扱われているのが「魔法少女」というのがまた何ともいえない。
では、魔法少女が一般社会の職業になる世界観とは、どのような感じなのだろうか。
魔法が登場する作品の定番としては、魔法を使用するキャラクターの力量や才能、はたまたアイテム効果などに応じて、発動する魔法の種類や威力が変化するものが多く見受けられる。ところが本作では、魔法少女、引いては魔法を「システム化」したものとして描いているのだ。
定番と絶妙な味付けで魅せる魔法バトル
魔法そのものがシステム化されている本作では、プログラムやデバイスを用いて相手に応じた魔法を選択して発動。そのアイテムを使った“必殺技”は、まるで「仮面ライダー」シリーズや「スーパー戦隊」シリーズを彷彿させるような描き方に見えて面白い。さらに撃ち出せる魔法の数を弾薬としてカウントするなど、豊富な設定があるのもいい。
本作では、第1話の冒頭からそのあたりの魅力を全開でアピールしてくる。敵(本作では「怪異」と表現)とのバトルシーンから幕開けを迎えるのだが、「近距離魔法」「テンプレ5展開」ほか心くすぐるセリフの数々に加え、「業務実行」のひと言で発動する魔法攻撃が最高。「圧縮納品」に至るまで、絶妙なワードセンスが世界観をガツンと提示してくれるだけでなく、読者の心をグワッとわしづかんでくる。
もちろん魔法少女ものには大事な要素の一つとも言える「変身」も健在。ただし、それが“社員証”に相当し、コスチュームや魔法そのものも開発することが可能になっている。魔法と科学が良いあんばいに融合しているのだ。
魔法少女×お仕事ものが映し出す、変身願望と自己実現
本作の主人公は、急きょ魔法少女の手伝いをすることになった、就活中の大学生・桜木カナ。ある企業の面接会場で怪異と遭遇し、出動してきた魔法少女に協力することになる。カナは記憶力に優れており、魔法に関する機器の使用経験がなくても、以前に一度調べた経験があるだけで、マニュアルを覚えているほど。
後に新たな“能力”(といってもファンタジーより職業ものの方が合いそうな内容だが)も明かされるのだが、記憶力などの個性がストーリーをどう彩っていくかも楽しみのひとつに。誤解と偏見を恐れずに言うなら、人それぞれ好みはあれど、カナのツインテールは魔法少女ものに欠かせない要素といえるのではないだろうか。
魔法少女派遣業を行うベンチャー企業「株式会社マジルミエ」には、カナが出会った魔法少女・越谷仁美などが在籍。なかでも社長の二子山は「魔法少女絶対主義者」であり、効率や利益よりも社員がやりたいことを第一に考えるというキャラクターで、思わず入社したくなる。
もちろん「マジルミエ」の同業他社も存在し、その方面の展開も見逃せないところ。魔法少女ものの変身願望と、職業ものの自己実現。この2要素を掛け合わせた本作は、魔法少女ものの新たなカタチであり、お仕事ものとしても読めるのは◎。今回は作品のベースとなる部分を中心に紹介したが、まだまだ魅力的な点は数多くあるので、いずれまた別のテーマで取り上げたい。