『植物病理学は明日の君を願う』―農作物の病と闘う“ヒーロー”植物病理学者がカッコいい! 異色テーマの作品はリアルな描写&ミステリー調ストーリーで魅せる

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『植物病理学は明日の君を願う』(竹良実/小学館)
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植物病理学が知的好奇心を刺激

今の時代、何がどうヒットし人気が爆発するかの予測は、なかなかに難しい。だからこそ、新たに誕生する作品にも可能な限り目を向けておきたい。今回ピックアップする『植物病理学は明日の君を願う』も、今後の展開が大いに期待できるニューカマーな一作だ。

本作の題材は植物病理学。病害虫が引き起こす植物の病と闘う科学者たちの姿をサスペンス仕立てで描く。植物病理学がテーマというのも珍しいが、異色作となっている。

本作では、世の中に存在する植物病が農作物の1/3を収奪しているという言及があり、驚かされる。つまり、農作物が植物病に感染し衰退すると人類が危機にさらされる可能性があり、そんな事態を招かないように植物病理学者が奮闘する。ヒロイックな描かれ方をしているのが興味深くもカッコいい。

著:竹良実
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現実に発生しているのではと思わせるリアリティ

物語は、大学准教授で植物病理学者の主人公・叶木(かのうぎ)が、静岡県のある村でミカンの樹が謎の大量死が発生した、診断依頼を受け新米秘書の千両久磨子(せんりょう・くまこ)とともに現地へ向かうところから幕を開ける。

同エピソードでは、一部の国や地域でしか発生していない植物病が遠隔地の静岡県でも起きた要因を探っていく。動物でも外来種の影響が話題になることもあるように、植物病も人が媒介している可能性は否めない。本作でも、そのあたりに着目。さらに謎をスパイス的に調合し、植物病にかかった要因にとどまらず、発生させた“根本”まで解明。クライム・ミステリー感あふれる演出は見応えがある。

しかも現実の研究者による監修も行われているため、ストーリー展開のベースはもちろんのこと、科学的な部分や学術的な内容にもリアリティがある。実際にあってもおかしくなさそうな出来事であり、説得力が感じられるのも悪くない。

人間味豊かなキャラクターとハードボイルドな空気感が絶妙

冒頭でも評したとおり、叶木はヒーロー的な役割を担う。ただし、彼がやっていることは、原因を探り科学の力と地道な研究で解決に導くという、地に足がついた地道で堅実的なものであるのは好印象だ。

そこにエンターテインメントとしてスリリングさやギミックを持ち込むことで読者を引きつけていく。華やかでレトロさもある絵のタッチと、どこかハードボイルドな作風があいまって、作品を盛り上げてくれる。エピソードのちょっと切なさ漂う読後感も味わい深く印象的で◎。叶木は研究が最優先で人に対して少し辛辣な一面があるように、登場人物たちが完璧すぎず、人間らしさあふれているのも奥行きとアクセントが感じられて良い。

各エピソードもさることながら、縦軸の謎も随所に匂わせ、知っているようで知らない植物病理学を絡めた物語は、まったくもって先読みできず、どう転がっていくのか素直に楽しみ。ぜひ、本作の濃密さを堪能してみてほしい。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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